6億円強奪事件の展開を見ると、実行犯と絵図を描いた奴が違うという構造、実行犯レベルで刑事訴追の遮断ができている、とか、現場で手を汚さない連中が優先配当を受けるという意味では、ストラクチャード・ファイナンスに似ているかもしれない(現場の最劣後の部分の取り分が少なすぎるという意味でもw)
6億円強奪:植木容疑者「金奪った」 関与認める供述
渡辺容疑者が現金の運搬役だったとみられるが、2人は事件直前まで面識がなかったとみられ、暴力団関係者を含むグループが引き合わせた可能性が高い。
浮かび上がってくるのが
- 暴力団関係者(仮にXとする)が警備会社の手薄な状況を知って計画をたてる
- 実行犯としてお互いに面識のない2人(AとB)をスカウト
- Xは計画をAとBに伝授するとともに前金と必要な機材(偽のナンバープレート、連絡用の携帯電話等)を提供。
- ABが犯行を実行。
- ABは強奪した現金をXに渡し、報酬を足のつかない現金で受け取る(またはしばらくした後に残金を払う約束)
というような構図。
さらに
- XがABに「もしつかまっても俺のことをバラしたら、刑務所内や出所後にひどい目に遭わせるぞ」というような脅しをする
- 「出所後に残りの報酬に金利をつけて渡してやる」
などと約束しているという可能性も高い 。
そうすると、ABとしてもXについて証言すれば(本人や家族の)身に危険が及ぶ可能性があるので、ここは刑に服して(空手形になるかもしれないが)出所後の見返りを期待するインセンティブが生じる。
その結果、Xはあまりリスクを負わずに強奪資金を他に入れることが出来る。
暴力団関係者への締め付けが強くなっている中で、今後この手の犯罪は増えるように思える。
これらに対抗するには、ABにXとのつながりを証言するインセンティブを与えるような仕組みを考える必要があるのではないか。
具体的には、黒幕Xの情報を提供することで実行犯ABの罪を軽減できるような司法取引と、ABがXからの仕返しを避けて安全に過ごせるような証人保護プログラムが有効だと思う。
もっとも私はこれらについて映画や小説の中でしか知らないので、たとえば司法取引については検察による有罪証言への誘導や偽証のリスクなどのデメリットもありそうだし、日本のような狭い国の中で証人保護プログラムが有効か、という問題もあるだろう。
ただ、高度化する犯罪者の手口に対抗するなんらかの道具立ては検討する必要があるように思う。