最初は「あれ、またTMKが破産だわい」と思ったのですが。
特定目的会社芦屋シニアレジデンス 破産開始決定 / 負債総額 約99億4400万円
不動産所有の特定目的会社。不動産開発会社である(株)ゼクスが企画開発した介護付有料老人ホーム「チャーミング・スクウェア芦屋」の施設不動産(総数578室)を取得し、直接の運営は外部企業に委託していた。ただ、不動産取得前から課題であった施設入居率の低さは最近においても一向に改善せず、投資に関わる費用が重荷となり経営は安定性を欠いていた。入居者からも今後のサービスの安定、経営の堅実性に対しての懸念が囁かれる中、事業の再構築を意図した債権者から破産を申し立てられ、当措置に至った。
なお、「チャーミング・スクウェア芦屋」は別途運営法人とスポンサーによって今後も運営は継続される。
ゼクスの介護ビジネスのその後は何回か取り上げたことがあります。
馬事公苑の高級施設はグッドウィルともめたあと結局東急不動産が買って、グランクレール馬事公苑というシニアレジデンスになってます(経緯は過去のエントリをご参照)。
そしてその他はジェイ・ウィル・パートナーズが引き継いでいました。
たまたま今月「ジェイ・ウィル・パートナーズ」で検索してくる人が増えたこともあり「ババ抜き」などという失礼なタイトルが当たってしまったのかと思ったのですが、調べてみると、この物件はジェイ・ウィル・パートナーズは買わなかったようです。
チャーミングスクウェア芦屋売却、土地含め115億円で富士薬品に・・・ゼクス
さらに兵庫県芦屋市の「チャーミング・スクウェア芦屋」については、9月30日に設立される運営会社(法人名は施設名と同じ)ごと、医薬品の製造や配置販売事業、ドラッグストア運営で知られる富士薬品(埼玉県さいたま市)へと譲渡することを発表した。譲渡予定日は、会社分割と同じ9月30日。なお、富士薬品は特定目的会社芦屋シニアレジデンスを100%出資で設立し、土地および建物を115億円(税込)で取得した。決済は9月3日に完了している。
富士薬品は1930年創業の老舗。平成20年3月期の売上は1367億4200万円。一般家庭を対象にした配置薬事業で全国350万件を顧客として抱えるほか、ドラグストア「セイムス」を展開している。また、ここ数年はM&Aにも積極的に取り組んでいる。
「チャーミング・スクウェア芦屋」は昨年3月1日に開設した総戸数578室の大型シニア住宅。ただし、山の上に行けば行くほど高級住宅地になっている芦屋市で海岸沿いに建設したことで地元の富裕層が入居に対して消極的になったことやゼクスの認知度が関西ではそれほど高くなかったことから入居状況については苦戦が伝えられていた。
となると代わりにババをつかんだのは富士薬品という会社だったようです。
ただ、「事業の再構築を意図した債権者から破産を申し立てられ」「運営法人とスポンサーによって今後も運営は継続される」とあるので富士薬品は債権者で他にエクイティ出資者がいたのかもしれません。
でも、富士薬品が投資家を必要とする感じもなさそうですし、もともと富士薬品はTMKで買うつもりもなかったのでこれを機に本体で取得して立て直そうとしているのではないかと推測。
ところで、ケアつきマンションはランニングコストがかかるうえに預託金を高くするにも限度があるので、初期投資をできるだけ抑えないと一般的に採算は苦しいようです。
なので、遊休化した社宅などを安く買い取って改装したり、経営が立ち行かなくなった施設を引き受けて運営の効率化によって収益を上げる、または施設は地主などに持ってもらって自分は運営に特化するというようなパターンが多いようです。
今回は既存の施設を買収して参入、というところまではよかったのですが、115億という価格が高すぎたのでしょう。
ただこのビジネス、現状では自社の遊休地の利用とか、既存の経営資源の流用ができるとか、はたまた新規事業としてとりあえずやってみる、というような「特殊解」の事業者が多いようです。ただ、そろそろ収支構造の「一般解」を確立しないと、何が「ババ」かもわからないので新規参入が増えず、結果公的施設への依存が続いて施設不足は解消しない(または税金が際限なく投入される)ままになってしまいます。
なので、富士薬品も本業はしっかりしているようなので、ぜひ再建をがんばってほしいものです。
ところで弁護士に転じ、一時債務整理のTVCMを流していた浜田卓二郎センセイが本件の申立て代理人になってます。
さすが地元埼玉には強いというところでしょうか。