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一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

偶然とカオス

2005-02-21 | 乱読日記
前の記事の続きです
科学の世界も、ゲーデルの不確定性原理(証明不能な命題があることが証明されてしまった)や観測問題(光の速度で動くものの位置を観測で特定することはできない)とかから、ニュートン力学の「これが絶対正しい!」の世界から確率論とかカオス、フラクタル、エントロピーなどの世界に入って行った

ということを素人にもわかりやすく、かつ面白く書いているのが「偶然とカオス」
ただ、残念ながらamazonでは在庫切れ。

ロス・アラモス研究所に集まった天才たちのキャラクターなども生き生きと描かれている。

印象に残ったのは、エントロピー理論についてのくだり。

たとえば100度の熱湯と10度の冷水を同量まぜると、55度になることの説明として、分子の配置は理論的には、1箇所に100度の塊が出来るという配置もありうるのだけれど、分子の運動はランダムなので(ひょっとすると一瞬はそういう分布になっていることもあるかもしれないが)結局は確率的に一番ありうる(運動の激しい分子とゆるやかな分子がまんべんなく入り混じる)配置でいる確率が高い。その状態が55度となるというわけ。

このようにエントロピー増大の法則というのは、「素粒子の配置は確率的に高い状態になっていく」ということだ、と説明してから、
ビッグバンは、その直後からはエントロピー増大の法則で説明できるが、ビッグバン自体は説明できない、という。

つまり、宇宙の一番最初に「一番ありえない状態」がなぜもたらされたのか、ということだ。
著者は、それは宗教の問題になってしまう、とちょっと達観して(少しアイロニカルに)言っている。

理論物理学者でありながらこういうスタンスをとれる著者のものの考え方は好きだ。


偶然とカオス

岩波書店

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