16世紀のイングランド、 ヘンリー8世には 王妃との間に男児ができず、
世継ぎをもうけることが 最大の関心事になっていました。
新興貴族ブーリン家の長女・ アン (ナタリー・ポートマン) が、
王の側室に 差し出されます。
しかし ヘンリー8世が見そめたのは、
アンの妹のメアリー (スカーレット・ヨハンソン)。
アンは妹に 結婚も側室という立場も取られ、 嫉妬と復讐心に 駆られます。
そして 凄まじい策略で、 アンは 王の寵愛を奪い、
さらに 王妃までをも追放して、 自分がその座に 座るのです。
ナタリー・ポートマンは、
「スターウォーズ」 アミダラ姫の 清楚で凛とした 役柄から、
打って変わって 我の強いアンの 役どころです。
意志が強く 才気あふれながらも、 狡猾で非情、
目的のためなら 妹を裏切り、 悲境におとしめることを 何とも思わない。
国家の存続よりも 自分の野心を 選ぶ女性を、 壮烈に演じています。
一方メアリーは 純真で心優しく、 ヘンリー8世を愛していましたが、
本当は 田舎の穏やかな生活を 望む女性でした。
これまで 歴史に顔を出したことは ありませんでしたが、
映画は歴史というより、 女性たちの生きざまを 描いています。
アンは 女の子を一人 産みますが、
その後は 身ごもった子を 流産してしまいます。
それを王に知られたら 愛を失ってしまうと 恐れおののき、
取り乱したアンは、 流れた子の代わりに 実弟との間で 子供を妊娠しようと……。
恐ろしい……。
最後の一歩で 踏みとどまったものの、 アンは 不貞と近親相姦の罪で 極刑に。
そのときメアリーは 自分の身の危険も省みず、 アンの助命を 嘆願したのでした。
対照的な二人の姉妹。
メアリーは 歴史の表舞台には 残らなかったとはいえ、
最後は望み通り、 田園での平和な家族生活を 手に入れたのです。
何が勝ち組、 負け組と言えるでしょう?
世継ぎを巡って 骨肉の争いが繰り広げられ、
多くの悲劇が 生じてしまいましたが、結局 男児は誕生しませんでした。
ところが、 ヘンリー8世の跡を継いだのは アンの一人娘、
のちのエリザベス1世。
その後 45年間にわたり、
「ゴールデンエイジ」 と呼ばれた 国家統治に君臨するのです。
壮観な歴史の皮肉を 見せつけられた気がしました。
それにしても 英国王室のスキャンダルは、
何百年も前からの “伝統” だったのでしょうか。