あの座頭市を、なんと 綾瀬はるかが演じるという 異色作です。
市は、盲目の三味線引きの 旅芸人・ 瞽女 (ごぜ) という設定です。
瞽女一座から破門され、離れ瞽女となった 天涯孤独の市。
人との関わりを断って 心を閉ざし、人を探して さすらっています。
(盲目の 居合斬りの達人という その男は、 市の父親なのか? )
「なに斬るか 分かんないよ、 見えないんだからさ」
そんなキャッチコピー、
仕込み杖の逆手一文字で 男たちを斬り捨てる 綾瀬はるかは、 滅法かっこいい。
リサ・ジェラルドの 切々たる音楽で展開する、
市の悲運な過去の 回想シーンは、 「砂の器」 を思わせ 涙腺を刺激します。
従来の 男の座頭市には 見られなかった、市の悲しい内面が 描かれています。
愛されたことがなく、愛することも知らずに 生きてきた市。
彼女のセリフには、まるで ボーダーの人を象徴するような 言葉がありました。
「 目の見えない人間には、 境目が分からない。
今が昼なのか、夜なのか。
いま歩いている 道の境目が いつなくなるのか。
いい人と悪い人の 境目なんて、 どこにある?
生きてるのか 死んでるのかさえ、 私には はっきり見えない……!
………別に、生きていたいとも 思いませんけどね……」
何故 この作品に 「境目」 という 言葉が使われたのか、
不思議で 因縁を感じます。
これは 綾瀬はるか自身も、最も印象に残っている セリフだそうです。
そんな市が 旅の途中で出会った、
刀を抜けない剣士・ 藤平十馬 (大沢たかお) や、 その他の男たち。
彼らと関わり、賊党と渡り合うなかから、
市は次第に 人との触れ合いを求めていきます。
「 境目が、見えてきた気がする……」
そう言って市は、心のぬくもりを 取り戻していくのでした。
監督は 「ピンポン」 の曽利文彦、
脚本は ドラマ 「ラストフレンズ」 の浅野妙子です。