「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「青い花火」 (3)

2008年03月27日 21時34分04秒 | 映画
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/53448581.html からの続き)

 10年前には 先取りしたテーマだったのではないでしょうか。

(心子と僕が 付き合い始める 前の年ですね。 (^^;))

 アダルトチルドレン,虐待,イジメ,引きこもり,自傷行為,

 そして、自分が自分であることの アイデンティティ、

 色々な問題が 含まれています。

 生きづらさを感じている人間が、自分と相対することによって、

 自分を回復していく 再生のドラマ。

 演出も凝っていて、心証に訴えかけてきました。

 NHKは時々、こういう珠玉のドラマを 放送してくれます。

 原作は鎌田敏夫で、放送文化基金賞本賞、演出賞 (若泉久朗)、

 女優演技賞 (桃井かおり,松尾れい子) の3部門を受賞。

 松尾れい子は、当時 ポスト広末涼子と言われたそうですが、

 何といっても その “目力” が 強烈な印象を与えました。

 ぶっきらぼうな物言いは、演出なのか 演技の未熟さなのか。

 大熱演で 異彩を放っていましたが、その後 あまり活動を耳にせず、

 どうしているのか 気にかかるところです。

 この作品は 前半を見ることができなかったにも拘らず、

 強く引きつけられ、記憶に残る 作品になりました。

 前半も見られたら、彼女たちの心の世界が

 もっとよく 感じられたであろうことが残念です。

 彼女らは ボーダーとまでは言えないと思いますが、

 親の虐待に遭ったり、親の期待に 応えようとしすぎたりした結果、

 自分自身の生き方を見失ってしまった アダルトチルドレンでしょう。

 彩佳は己の意志で そこから抜け出るため、

 その若さゆえ 手段は拙劣だったかも知れませんが、

 懸命に 自分の足で踏み出そうと もがいています。

 そんな彩佳の目には、人との交わりを拒んで 自分を閉ざして生きている、

 玲子が許せなかったのでしょう。

 それは 自分自身に対する、怒りや苛立ちだったように見えます。

 玲子は彩佳に触発され、彩佳も 自分をぶつける相手があったからこそ、

 お互い 立ち上がっていけたのかもしれません。

 回復への道は 一人で歩んでいくことはできず、支え合う存在は やはり大切です。

 タイトルの 「青い花火」 ですが、彩佳が 玲子と花火をしようと言い、

 二人で花火を持って 高架下を走るシーンに 因んでいます。

 玲子はそこに、彩佳の生の力を 感じるのです。

 或いは タイトルは、

 二人の人間の まだ未熟な 「青さ」 に 掛けているのかもしれません。

 青いながらも、無我夢中で瞬こうとしている、

 秘められた息吹を 表している気がします。