今から20年前、チャウシェスク政権下のルーマニア。
労働力確保のために 妊娠中絶が禁止されている中、
女学生のオティリアが、ルームメイト・ガビツァの 中絶のために
奔走する姿を描きます。
タイトルは、妊娠期間を表しているということです。
監督は新鋭 クリスチャン・ムンギウ。
2007年 カンヌ国際映画祭で、パルムドール賞を 受賞した秀作です。
劇的な演出や 音楽までも一切排し、
カット割りのない 長回しの手持ちカメラで、オティリアたちの 動きを追います。
彼らの生々しい息づかいが 緊張感を伝え、
リアリティ溢れる映像が 映し出されていくのです。
ガビツァは頼りなく、むしろ自分勝手で、いい加減な嘘を ついたりもします。
ホテルの一室で 闇医者に堕胎手術を 依頼するのですが、
ガビツァの不手際のために オティリアは、著しい犠牲を払うことになります。
オティリアは 友達のためというよりも、
暗鬱な空気の中で 何かに抵抗するように、突き進んでいきます。
それは 束縛された社会の 支配に対して、
一人の女性として 生きる姿勢を貫徹する 行為なのかもしれません。
静かで 息詰まる展開が 最後まで見る者を引きつけ、
ルーマニアの新しい力を 見せてくれました。