「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「接吻」

2008年03月10日 21時14分36秒 | 映画
 
 一家惨殺事件を起こして、マスコミに 自分が犯人だと

 名乗り出た 坂口 (豊川悦司)。

 その逮捕現場を テレビの生中継で見た OL・京子 (小池栄子)。

 その瞬間 京子は、坂口と自分は 同じだと直感します。

 京子は常日頃、周囲からの疎外感を感じており、

 坂口に猛烈な共感を感じて 惹かれていくのです。

 京子は 坂口のことを徹底的に調べ、裁判を傍聴し、

 弁護士の長谷川 (中村トオル) を通じて 坂口に差し入れをしたりします。

 坂口は 法廷でも弁護士の接見でも、終始 無言を貫き通しますが、

 京子は坂口のことなら 全て分かると言います。

 狂気と隣り合わせの愛情に 身を委ねる京子。

 京子と坂口は 手紙を交わし、ついに獄中結婚をし、

 そして 驚愕のラストシーンを迎えるのです。

 万田邦敏監督から 出演を依頼された小池栄子は、当初 断ったそうです。

 何回脚本を読んでも、京子の言動が理解できず、好きになれないからと。

 しかし プロデューサーに説得され、また脚本を 10回くらい読み直して、

 少しずつ 京子に惹かれるものも 感じていったということです。

 それでも、ラストの京子の行動の意味が どうしても分からず、

 万田監督に聞いても  「意味って言うか……」 としか 言ってくれなかったと。

 そして、人間は 常に意味のある行動だけをするものではない、

 と思い至って 臨んだのだといいます。

 
 試写会上映後、会場で 万田監督との質疑応答がありました。

 試写会で 出演者の舞台挨拶が あることはありますが、

 約40分も時間をとって、監督と会場が じっくり語り合う機会は 普通ありません。

 万田監督は、頭が禿げて しょぼくれた、にこにこしてる おじさんという感じでした。

 僕は 例のラストシーンの意味を 尋ねてみました。

 監督は、意味は 京子がこれから考えていく,全て意味が あるものでなくてもいい、

 などと言いながら、こうして自分は 質問に答えて 納得してもらおうとしていると、

 自己矛盾を 吐露していた次第です。

 「作る」 という作業は 「意識的な」 作業です。

 現実の人間の 無意識な言動とは 根本的に異なります。

 脚本家や監督は、スタッフに質問された場合、

 全て 「言葉で」 説明できなければいけない と言われています。

 “理由” を求める僕としては やはり釈然としませんが、

 監督は憎めない人であり、強烈な印象に 残る作品でした。