「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

弟を殺されたH氏

2006年03月25日 15時51分09秒 | 死刑制度と癒し
 
 H氏自身の言葉を紹介してみましょう。

「殺されたから殺す。

 第三者なら大方が、この単純な因果応報の理屈に賛成するでしょう。

 ところが、被害者の身内であった私たちにとっては、まさにここのところが納得がいかないんですよ。

 私たち家族にとってはどう考えても、非道なことをした犯人より弟の命のほうが尊い。

 その弟が殺されたから、加害者の命を奪ってハイ、おしまいというんじゃあ、なんだか、あまりに安易で、命の等価交換にかすぎないと思うんですよ。

 これでは弟と加害者と同じ価値しかないことになる。

 それでは我慢できないんですよ。」

 加害者を許したわけではない。

 いや彼の犯行を憎むからこそ、死刑執行を望まないのだ。

 生きて、とことん生きて、それこそ血を吐く思いで償ってほしい。

(「されど我、処刑を望まず」福田ますみ[現代書店]より)

(続く)
 
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