エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

春霖の

2013年03月26日 | ポエム
昨日は、朝からしっとりとしたあなたの肌のような潤った一日であった。
春の雨は、嫌いではない。

あなたと口づけたとき感じる吐息。
あなたを愛撫した時に感じる滑らかさ。
あなたの生の証を奪い尽くした時に感じる充足感。

あなたは天女であって至高であった。
正しく昨日は春霖であった。

春霖を感じながら、ぼくはカンツォーネの一曲を裏声で歌った。
「忘れな草」である。

  忘れないで
  すぎたあの頃を
  夢のような
  二人の思い出

といった歌詞である。
イタリア語で歌うと、耳触りの良いメロディーであって切ない胸が疼くのである。







「春霖の濡れざるもなく優しかり」



「鉢植えの小踊りしたる忘な草」







昨日は、春霖の一日であった。
誰の上にも、しっとりとした雨が降っていたのだろうと思う。

すると忘れられないあなたの上にも降り注いだのだろうか。
そうであってほしい。




         荒 野人