ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

プロミシング・ヤング・ウーマン

2021-07-22 14:46:42 | は行

ひとつの正義のしめし方。

応援する!

 

「プロミシング・ヤング・ウーマン」74点★★★★

 

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真夜中のクラブ。

酔っ払った男たちの目が

ソファーでだらしなく酔い潰れる

キャシー(キャリー・マリガン)に注がれていた。

 

「お前、いってこいよ」

一人の男性がタクシーで、キャシーを送り届けることに。

彼はフラフラに酔っているキャシーを自宅に連れ込み、

ベッドに押し倒す。

が、そのとき

キャシーがカッと目を見開いた――!

 

キャシーは実家暮らしの29歳。

昼間はカフェでだるーく働く彼女は

夜な夜なバーに出かけては

「酔った女には何をしても許される」と思っている男たちに

鉄槌を下していた。

 

なぜ、彼女はそんなことをしているのか?

そして、

物語は意外な方向へ――?!

 

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キャリー・マリガン主演、マーゴット・ロビーが製作、

女優でもあるエメラルド・フェネルの

長編監督デビュー作。

 

女性たちのパワーが集結した快作です。

 

ピンク色のファンシーと

過激っぽくみえる印象で、ピンとこない方もいるかもと思うけど

これは、意外に意外なことになるので

ぜひ観ていただきたいなぁ。

 

ひとつの正義のしめし方、手痛いお仕置きって感じなのです。

 

ネタバレはしないように

ちょっと内容を説明してみる。

 

主人公キャシー(キャリー・マリガン)は

夜な夜なバーで酔ったフリして、わざわざ「お持ち帰り」され

そこで彼らに鉄槌を下す、ということをしている。

 

何の目的で?は、この時点ではよくわからず

加えて、普段の彼女は

カフェで働きつつも

すべてにダル~くて、つまらなそうで

あまり感情移入できないんですよね。

 

やっていることも、かなりモラルすれすれ(笑)

 

でも、だんだん彼女が

なぜそんなふうになったか、が明かされていく。

 

彼女は7年前、医大に通う

有望な若い女性(=プロミシング・ヤング・ウーマン)だったんですね。

しかし、ある事件がきっかけで大学を辞めてしまった。

 

夜な夜なの危険なミッションも

そのへんに理由があるのかな、と明かされていく。

 

しかし、このへんは、まだまだ一層め。

この話の地層は、まだまだ10はあります(笑)

 

そんなある日、キャシーはカフェにやってきた

大学時代の知り合い・ライアン(ボー・バーナム)と再会するんです。

 

ぜーんぜん興味なかった男だけど

意外に「いいヤツ」っぽく

ここで映画はなんだかロマンチックラブストーリーの方向に転調していく。

世の中、ロクな男いないと思ってたけど

意外に、当たりもあるかも?

 

そして、ライアンとの再会で

キャシーはある行動を始める――のですが

いやいや、ここからもまだまだ、話は転がっていく。

 

「ほ~ら、”女だてら”にやりすぎるから・・・・・・」なんて思わせて

そこもまた罠だったり。

 

逆回転していくとパーツがピタリとハマる

オリジナルな構成がうまく

アカデミー賞脚本賞受賞も納得です。

 

それに物語は、過激に、映画的にしてあるけれど

いや、日本を見回しても

この話はリアルに多く、ニュースにもなっている。

 

すねに傷ある男ども、

それを「見ていただけ」の男たち

さらに

そんな男性社会に同調してきた女たちに対しても

居心地悪さを味わいやがれ!という強烈な挑戦状。

 

そして

「もうこんなことは許さない!」という

若い女性たちへの約束、という思いが

映画に込められていると感じた。

 

キャリー・マリガンが

この役を引き受けたってのも

理解できるなあと、思うのでした。

 

★7/16(金)からTOHOシネマズ日比谷、シネクイントほかで公開中。

「プロミシング・ヤング・ウーマン」公式サイト


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