ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ファントム・スレッド

2018-05-23 23:32:00 | は行

 

本作で引退を表明したダニエル・デイ=ルイス。

有終の美を飾れるか?!

 

「ファントム・スレッド」70点★★★★

 

***********************************

 

1950年代のロンドン。

唯一無二のデザインと職人技を持つ

仕立て屋のレイノルズ(ダニエル・デイ=ルイス)は

英国の上流マダムたちに大人気。

 

ベルギー王女もウェディングドレスを依頼するほどだが

しかし本人は神経質で、かなりの変わり者。

彼を理解し、常にそばにいるのは姉シリル(レスリー・マンヴィル)だった。

 

 

ある日、彼は田舎のレストランに立ち寄り

そこでウェイトレスのアルマ(ヴィッキー・クリープス)と出会う。

 

背が高く、ちょっとぼんやりした彼女をみて

何かをひらめいたレイノルズは

アルマを食事に誘い、「採寸してもいいか?」と聞く。

 

姉シリルもアルマを「理想の身体ね」と認め、

そしてアルマはレイノルズの新たなミューズになるのだが――。

 

***********************************

 

俳優業からの引退を表明したダニエル・デイ=ルイスが

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の

ポール・トーマス・アンダーソン監督と再びタッグを組み、

有終の美を飾るか――?という作品。

 

 

ええ、飾ったと思います。

 

 

自分自身が、まさに1本の尖った針先のようになり

ドレスと美を求道する人物を完璧に演じている。

 

だけど

話はちょっと想像と違ってた。

正直な感想は「何つう毒婦じゃ!」(笑)。

 

まあストーリーの始まりは

地位も名声もあるデザイナーと、おぼこいけれど、個性的なプロポーションで

彼に見初められるミューズという。割とある感じ。

 

ただ、この映画では

見い出され→飽きられ→捨てられて→オチがつく

デザイナーや芸術家とミューズのよくある関係に

「支配権の逆転」という意外な展開が起こる。

 

これがなかなかおもしろい。

 

 

圧倒的な支配権を持っていた男が

あれ?あれ?という感じで、小娘に影響され、均衡を崩していくわけですね。

 

“おぼこ娘にしてミューズ”を演じるヴィッキー・クリープスの

顎のしっかりした素朴な顔立ちには

どこか土臭い“母性”があって

 

それがこのじんわり恐ろしい展開に

説得力を持たせている。

 

「弱ってるくらいの、あなたがいい」って言うアルマの気持ち

意外と「わかる」と思う人、いるかもね(笑)

 

★5/26(土)からシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA、新宿武蔵野館ほか、全国で公開。

「ファントム・スレッド」公式サイト


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ゲティ家の身代金 | トップ | 男と女、モントーク岬で »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

は行」カテゴリの最新記事