とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

トイレを磨いて心を磨く?

2006-08-26 23:57:40 | 日記
山口で行われた教育基礎講座(山口県教組主催)に参加してきました。午前中は、全体講座ということで、中嶋博先生(早稲田大学名誉教授)「真の学力とは?フィンランド教育に学ぶ」の話に刺激を受けてきました。

 フィンランドは国際的にも子どもたちの学力が充実していることで知られています。その成功の一因になったのが、日本の6・3制と教育基本法だそうです。その制度を参考にしながら、努力した結果だと説明されました。「高い山は、裾野が広くないと成立しない。子どもたち一人ひとりに確かな基礎学力を保障して、その中から初めて優秀な人材も育っていくのだ」と説明されていました。

 夏休みも長く、6月に入ってすぐから8月15日くらいまで休みだそうです。子どもたちは夏休みには夏休みらしい学び(家庭を中心とした)をするそうです。

 教職員の待遇も日本とは比べものにならないほど、充実していてフィンランドでは教員は憧れの職業の一つだそうです。教員たちは、自由で長い夏休みを利用して、海外研修や豊かな研修を積むそうです。

 日本のように教育を自由化の波に渡してしまい、お金がないと教育もできないという、教育の機会均等の原則もへったくれもない国とは、比べものにならないようです。

 日本では、確かな基礎学力が問題にされずに、国を愛する心や個人や自己を否定した奉仕の心を中心にした教育に変えられようとしています。そのことの中心が教育基本法の改正(改悪)です。安倍官房長官は、自民党総裁に立候補する決意表明として「憲法改正、教育基本法改正」を高らかに宣言しています。

 午後からは分散講座として大阪で障害児学級を30年続けて担当してこられた大島先生の実践を聞きました。高機能自閉症の女の子の苦しみや困難に寄り添いながら、その子の障害理解や、自己認識を育てながら、さらには兄弟や家庭の問題も考えていくような優れた話でした。経験や事実に基づく話は、共感がもてるものです。

 「今日はなかなかいい夏休みの研修だった」と満足感で家に帰って、何気なくテレビを見ていると「あれれ…」と身を前に乗り出すようなローカルニュースをやっていました。「夏休みの先生たちの研修…資質向上講座『掃除道に学ぶ』トイレ掃除実践」だそうです。小学校を借りて、先生たちが素手にスポンジを持ってトイレを一所懸命磨いているのです。マイクを向けられた先生たちは「人のいやがることでも何事も一所懸命やることが大切です。」「いつも子どもたちにやりなさいというだけだけど、やってみると大変なことだということがわかりました」などと言っています。

 すぐにインターネットのこの主催団体のホームページを見てみました。チラシがありました。「~掃除で学校が変わる~昨年1月の会に参加された方の学校での実践も行われ、子供たちの心の教育の推進に向けた取組が教育現場にも広がりつつあります。トイレを磨いて心を磨く。実践の前後であなたの中で何かが変わります」とありました。

 「トイレを磨いて心を磨く」よく言ったものです。ここで向上をねらった教員の資質というのはどんなものなのでしょうか?

 これを押しつけられる子どもたちはそんな気持ちなのでしょうか?空恐ろしい思いがしました。



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『憲法9条を世界遺産に』

2006-08-26 00:07:29 | 本の紹介
 先日、本屋で『憲法九条を世界遺産に』という奇妙な本を目にしました。作者は爆笑問題の大田光と中沢新一です。「何!憲法を世界遺産に葬り去ろうとしているのか!」という目でパラパラと見ると、そうではなく憲法改正へ向かおうとする潮流に対してアンチテーゼを投げかけるという趣旨の本でした。いかにも大田光らしい言い回しで語っているのでわかりにくいところもありますが、なかなか面白そうな本でした。買ってすぐに読み始めましたが、ひとつひとつのフレーズが面白いので、ポストイットを貼りながら読み進めました。



 どうして議論するのかというところでは、大田氏は『今九条がかいせいされるという流れになりつつある中で、10年先20年先の日本人が「何であの時点で憲法をかえちゃったのか、あの時の日本人は何をしていたのか」…そうならないための自分とこの世界に対する使命感のようなものがすごくある』と述べています。

 宮沢賢治についての論究もかなりつっこんであって、『あれほど動物や自然を愛し、命の大切さを語っていた賢治が、なぜ田中智学や石原莞爾のような日蓮主義者たちの思想に傾倒していったのかがわからない。…賢治の作品を信頼するけど、戦争は否定したい。そこが相容れない』と述べたあとで、『彼の作品の中には、正義や愛があふれているけれど、正義こそが結果として人を殺す思想にもつながっていく。そこを深く見つめ直さないと、もう一度同じことが起こる』として、宮沢賢治こそ。憲法9条の問題を考えるキーパーソンだとします。



 社会はディスコミュニケーションでできているが、賢治は他人の苦しみが自分の苦しみと同じであるような状態をつくりたいと思っていて、そんな時に宗教的思想にのめりこんだのだとします。人々が一つの理想郷に向かって邁進していく姿は大変危険な状況だと思います。最近で言えば『郵政民営化』路線が示している通りです。

 大田氏は『大田光の私が総理大臣になったら…』の番組でマニフェストとして『憲法九条を世界遺産に』というテーマを出したそうです。でもバラエティーだからということで『自衛隊の駐屯地を田んぼにする』に変えられたそうです。




 今の日本の憲法は『世界の憲法の珍品』だとします。『戦争していた日本とアメリカが戦争が終わったとたん、日米合作で無垢な理想憲法を作った。時代の流れからして日本もアメリカも無垢な思想に向かい合えたのはあの瞬間しかなかった。すぐにアメリカは朝鮮戦争で振り出しにもどっている』とします。

 『戦前世代の人間は、あの憲法はアメリカが作ったから違和感があると言う。でもぼくは生まれた時から41年間、あの憲法の中で生きてきたわけです。それを簡単に変えるな。僕の生きてきた歴史でもある』と述べていきます。これは、実に「我が意を得たり!」という心境です。

 『日本国憲法は、ドリームタイムなんです。…オーストラリアのアボリジニが、自分たちの根源の場所として確保している場所のこと』として、抱き続けていかなければいけないとも記しています。

 更に戦争を発動させないために文化(お笑い)があると続けていきます。
 小泉首相が、中国や韓国に靖国問題の説明をするときに「不戦の誓い」という言葉を繰り返すことに対しても『あのことばは、僕とかみさんがけんかしたときに。「ごめんなさい、もうしません」っていうのと同じくらい軽い。』と切り捨てます。

 そうして、「不戦」と「非戦」を対比します。『不戦という言葉を、もう一歩深めてみると、その本質は自分はやろうと思えばいくらでも戦えますよ。あんたなんかのしちゃいますよ。でも今はやらないよと言ってるののと同じような不穏なポーズが隠されています。』『普通の国の憲法では不戦しか言わないでしょう。我々は軍隊をもつ自衛権も持つ。一朝事あれば他国に攻め込むこともある。でも、それは平和時にはやりません。これが普通の国の憲法です。現実的な思考をすれば国家にとっては不戦しかあり得ない。…ところが、日本国憲法はそうじゃない。非戦だと言っている』これは、本質をついている論法だと思います。



 そして、最後に結論として、『憲法を世界遺産』にして、自分たちの立ち返る場所、反省したり、迷ったり、疑ったりするために世界に宣言して残しておかなければならないとします。

 非常に、ユニークな発想から述べられている本です。通り一遍なものではないと思います。でも、このようないろんな角度から憲法について述べていくことはとても大切だと思います。

 そんな高価な本でもないし、厚くもないのですぐに読める本です。ぜひ読んでみることをおすすめします。
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