とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

かもめ食堂

2006-07-02 22:45:30 | 映画
 前々から見たかった映画『かもめ食堂』がやっと近くのシネコンにかかることができました。土曜日から2週間の予定でかかっています。さっそく出かけてみました。劇場に入って驚きました。日本の小作品にもかかわらず、ある程度の客がすでに着席していました。こんな目立たない作品にこんなに客が集まるなんて、田舎のシネコンもまだ捨てたものではありませんね。

 映画ですが、これが実にきれいな映像で淡々と描かれているのです。登場人物が少なく、それといって事件もなく、食堂と、アパートと港くらいしか場面がないのです。これなら、そのまま舞台でもできるのはないかと思わせるくらいです。

 上映が開始されて間がないし、ぜひ見に行っていただきたいのでストーリーにはなるべく触れないで紹介したいと思います。

 フィンランドでオールロケをした日本の映画というのも興味あるところですが、映画監督が荻上直子でこの人は何と1972年生まれなのです。デビュー作が『バーバー吉野』なのです。この才能にも恐れ入谷の鬼子母神(ちょっと古い)なのです。

 登場する女優が実にふるっていて、小林聡美、もたいまさこ、片桐はいりの3人で実に個性的な演技を見せてくれています。彼女たちが演じているのはそれぞれの事情により、フィンランドで生活する女性たちのちょっと不思議で肩の力の抜けた日常であり、自分らしく生きるための居場所探しなのかもしれません。

 映画好きにとって、フィンランドといえば、アキ・カウリスマキ監督の「過去のない男」(02)を思い出します。その主演をしていたマルック・ベルトラがわけありの客を演じています。よく出演してくれたものだと感心しています。

 荻上監督と言えば、『バーバー吉野』の時も『恋は5・7・5』の時もカルチャーギャップがテーマになっていましたが、今回もフィンランドの食堂で和食、おにぎりを出すというあたりがカルチャーギャップになっているのかもしれないと思いました。でも、もう一歩踏み込んで、融合ということなのもしれないとも思いました。

 主演の小林は独特の雰囲気で画面の中に存在し続けます。台詞を発するタイミングが絶妙で、何とも言えない間のようなものを感じさせます。デビュー作の『転校生』の時からただ者ではないと思っていましたが、こういった映画に出させると他にいないだろうと思わせるほどの存在感だと思います。

 片桐はいりは、顔が一番存在感があるような気がします。でも、この映画では実に普通の女性を演じていてそれがまた独特の空気を醸し出している感じがします。でも、もたいまさこが出てくる場面になると、もたいと比較すると舞台人らしい癖のようなものが鼻についてくるのが気になりました。

 もたいまさこは、まさに等身大の演技で、本当のもたいまさこもこんな感じの人なんじゃないかと思いました。フィンランド語がわからないまさこがなぜか話が通じたり、いくつかつじつまの合わないシーンが出てきても、もたいまさこならありえるような気がしてしまうのです。

 原作にはないけど、印象的なシーンが主人公サチエがプールで泳ぐシーンがあります。何かを象徴しているんだろうけど、その場ではつかみきれませんでした。これから何日かたつとゆっくり意味がわかるかもしれません。いつもそういう見方をしている変な人間なのです。

 結論です。女性と男性は感想が異なるかもしれませんが、ぜひ見るべき映画だと思います。今年のベスト10に入る作品だと思っています。



コメント (2)
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