季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

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2014年11月16日 | その他
さる県の高校生達が男女の制服を交換して1日を過ごしたそうだ。互いの性への理解を深めるという真面目な試みである。

女が男の、男が女の気持を理解するために服を交換する。すなわち女生徒はズボンを履き、男子はスカートを身に付けるのだという。生徒の感想から、その試みの成果は伺える。

女子は概ねこんなもん、という反応だが、男子は「寒いことが分かった」「周囲の目が気になった」となにがしかの「気付き」があったようだ。

僕は若い頃(もちろん今もね)女心が分からず、したがって全くもてなかったのだが、そうか、スカートを履いてみれば良かったのか。気づくのが50年ばかり遅かった。

友人のYだのSだのがスカートを履いているのを見たことも無かったな。うむ、彼らもまた気の毒なほどもてなかった。深く納得する。

例外的にもてた奴の(急に僻み根性丸出しの口調になってしまうが)スカート姿も見たことないようなきがする。しかし奴らは隠れて履いていたのだろう、絶対にそうだ。

こんな簡単なことで女心が分かるのだったら何がなんでも実行しておくべきであった。しかも応用がきくのだ、この画期的な試みは。

チョンマゲを結ったらあら不思議、江戸時代が分かる。

カツラを着けたらバッハでもヘンデルでもたちどころに理解できる。

尻尾を付けたら犬の心理は手に取るようだ。問題は猫とどう区別をつけることができるかだ。ロバと区別がつかないような気もする。

しかし気を取り直して取り組もう。

ショパンはえらくもてたという。そのショパンの気持を理解するためには僕らももてる必要がある!

今までそこには高い壁がそそり立っていたが、今や某高校のお陰で前途が開けた。

スカートがあるではないか。女心が分かればもてるようになろう。もてればショパンの心境も手に取るように分かるだろう。ブラーボ、ブラーボ。

ところがここで僕は小さな疑問に躓くのを感じる。

女性ピアニストがショパンの気持を分かろうとした場合のことである。彼女たちもやはりスカートを履いてみる必要があるのだろうか?

この根元的な疑問に僕は答えることができない。男の気持になるにはズボンを履いたら良い。

これは簡単だ。しかしもてる男の気持になるにはどうすればよいのだ。もう一度スカートを履くのだろうか?

もしかしたら某高校の発想には根本的な欠陥があるのではあるまいか?

もう一度冷静に生徒の感想に目を向けてみよう。

寒いことが分かった。これはこんな壮大なプロジェクトを立ち上げなくとも想像できそうな気がする。

周囲の目が気になった、にしても女装して歩けば当然周囲の目は気になるのではなかろうか。

第一、女子高校生達があんなにスカートを短くする心理には男子生徒の意識が向かっていないではないか。余計に寒いだろうに。

周囲の目が気になるためには別にスカートを履くまでもあるまい。後ろ向きに歩いたって、シャモジをくわえながら外出したって、充分好奇の目で見られるはずだ。

まぁ制服交換でミニスカートを履く生徒がいなかったことを喜んでおこう。








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