季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

犬学 3

2009年03月31日 | 
ミケがたまと一緒に生活しなかったらどうなっていただろう。このような仮定はもともと意味を成さないのだが、ついつい思ってしまう。

ドイツで羊飼いが牧用犬を訓練しているのを目撃したことがある。大変面白かった。これから訓練しようと思う若い犬はじっと自分の横に付かせているのだ。現役の犬にてきぱきと命令する。現役犬はみごとに仕事をこなしていく。羊の群れをあちらのほうから、こちらの方から吠え立てたり、尻に軽く噛み付いたりしながら望む方向へ追い立てていく。若い見習い犬はそれを見ているだけである。

でも表情はきりっとして、わき見もせず、先輩犬の一挙手一投足を追いかけているところからも、これが集中しなければならない時間であることを承知しているのだ。

こうやって羊飼いの命令と犬の動作を覚えさせるのか、とビックリしたものだ。犬が他の犬の動作を見ているだけで学習するなんて思っても見なかったから。

そういえば友人が犬を飼っていて、自慢する。うちの犬は何でも分かっている、と。彼の家をしばしば訪れる人によると、どこにでもいる躾がされていない犬だそうだが。

しかしここは友達を信じてみよう。曰く、うちの子は頭が良い、こちらが何かを命じるとしばらく小首をかしげてから従う。すぐに従わず、考慮してから行動する。そこが普通の犬とは違うという。

そこで僕は思う。これは少なくとも牧羊犬には無理だなあと。ピーッと口笛を鳴らしたら間髪を入れず走り出し、忙しく右に左に走り回る。これは牧羊犬に必須であろう。その後の判断は犬がしていたものの走り出すのは羊飼いの合図で、そこでグズグズしていたら務まらないなあと思う。

さらに警察犬にも無理だなあと思う。犯人に襲われる。「かかれ!」「えっと・・・」これでは間に合わないものな。

待てよ、あの犬は猟犬じゃないか。羊飼いのものでもなければ、警察捜査のものでもない。打ち落とした鳥を運んで持ってくるのが使命だったはずだ。ひとつシュミレーションしてみよう。

「持って来い」「えっと・・・」のそのそ歩いていったら他の動物がとっくにさらっていってしまうな。仮に間に合ったとしたらどうなるか。「食べ物のことなんかものすごく理解しているんだ」という食欲旺盛な犬だ。持って帰らず食べちまうだろう。

となると、友人宅によく行く人の言うことのほうが正しいのかもしれない。

自慢話を聞いたのがつい先ごろのことで、おもしろく、脱線してしまった。リアリズムは思い出よりも強いね。

ミケはたしかに母性本能が強かったけれど、他の動物を追い回す本能だってあったはずだ。それが見られなかったのは、たまと一緒になって子猫を舐め回したりしたためだろう。

いったんそういう経験をすると学習してしまう能力が犬はとくに高いようである。むつごろうさんのところを見ても分かるように、違う種類の動物でも平和にやっていけるものだ。その点が人間とは大違いだ。

ミケは一歳になったころ、買った時の約束で訓練所に7ヶ月預けた。これはあまり意味がなかったといってよい。

僕は躾は自分でできるし、何よりたまから習うことが途絶えたのが大きかった。訓練所に入っている間にたまは死んでしまったから。

ミケは一人で留守番させるとよほどいやだったのだろう、悪さをした。人が嫌がること、それと物の価値が分かっているとしか思えない、絶妙な悪さをするところが犬の面白いところだ。

帰宅してみると生ごみが床に散乱している。食べたのではない、撒き散らしてある。捨てるべきものだから、かたづけるだけでよいと分かっているとしか思えない。金目のものを壊されたことはない。いつも三角コーナーが床に転がっていた。

叱られると知ってはいるのだ。帰宅したとき部屋の隅にうずくまって、上目遣いにこちらを見ているときには生ごみか、紙くずが散乱していたものだ。

たまができなかったというか、できてもしなかったのがドア開けである。ミケはこれが上手だった。押し下げ式のドアノブなのだが、ここに前足をかけて体重を移動させる。

特筆すべきは、押して開くだけではなく手前に引いて開くこともできたことだ。これは犬にとって難しい。教えることは簡単だが、自分で発見するのはめずらしい。家内の実家に行ったラブラドールも(最初の躾は大切なので我が家でした)実子のアイも、見ていてすぐに押して開くようにはなったが、引いて開くことはできなかった。

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