季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

刑務所での盲導犬育成

2009年04月22日 | 
コメント欄に島根で受刑者による盲導犬育成の試みがなされているとあり、早速検索してみた。

何度も書くけれど、ここがインターネットのフットワークの軽さである。島根でそうした試みがなされたと新聞で知った人がすぐに知らせてくれる。そして僕はそれを検索するだけでよい。

いくら関心が高くても、さすがに島根まで足を運んだり新聞社に問い合わせをしたりすることはない。いかに僕が好奇心が強くてもそれをしてしまったら単なる馬鹿者だ。何だって、そうでなくても馬鹿者だってか。そうかもしれない。

で、ありました。日本の受刑者の皆さん、お喜びください。じゃあなかった。

たしかにあったけれど、そしてきちんとした訓練師の指導の下で実施されるようだが、いかにも日本的なのである。僕はすこし(本当はとっても)失望した。

以前アメリカでの凶悪犯が犬の訓練をする話を紹介したが、それと一番違うのは、島根の場合、4,5人がグループを作って一頭の犬を育てようとする点だ。

まあ、たかが刑務所での犬の飼い方だという人もいるだろう。

しかし僕はどうしてもそうは思えない。

「アメリカでは受刑者に犬の訓練をまかせているらしいですよ」「ほう・・・面白いかもしれませんねぇ」「ひとつ日本でもやってみましょうか」「そうねぇ、うまくいけば盲導犬などはまだまだ足りていないから一石二鳥かもね」「しかし日本でうまくいくという保証はないですからな」「ここはひとつ数人で一頭を育てるようにして様子をみましょうか」「そうね、うまくいくようだったら拡大するという線でひとつ」

どうもこんな会話の末発足したプロジェクトなのではあるまいか。つい空想が先走るが。

僕の空想はまあどうでも良いのであるが、この試みはあまり実を結ばないのではないか、と思う。成果が思ったようにあがらずに頓挫することになったら残念だ。あんまり残念がると、僕が刑務所に入るのかと勘違いする人も出そうだが、その心配は今のところ無いよ。

ここでは犬の性質も人間の性質もあまり考慮に入れられていないと思わざるを得ないのだ。

犬という生き物は一人の人間をボスと認知して従う。人間のほうが頼りないと自分がボスとして振舞わなければ、と責任を感じて行動するくらいだ。

数人で一頭を訓練してごらんなさい。必ず下手な人と上手な人が出る。犬は更生プロジェクトなんて思わないから、上手な人をボスと認め、下手な人の言うことはあまり聞かなくなるだろう。

人間の心理から見たってあまりうまい方法とはいえない。どんな人間も自分に託された場合にのみ本来の「やる気」を示すものだ。かつて共産主義国家が次々に崩壊した理由の最たるもののひとつは、働いても働かなくても評価は変わらないという、あまりに人間的な、「理想」とは遠くかけ離れた現実だったではないか。

犬が自分を低く評価?し、4番目に懐いていると想像してごらんなさい。まあ普通の人ならば犬に対する愛着は減ってしまうだろう。そうしたら訓練する意欲も減り、犬は犬でよけい服従することをしなくなる。

こうやって考えてみてもうまくいくはずがない。盲導犬の数頭はできるだろうが、とても当初の目論見どおりに行くとは思えない。

何よりいけないのは、プロジェクトを進める側の臆病さだ。数人で扱ってみるという発想をした段階ですでに及び腰である。

失敗した場合のことばかり考慮していると僕には見える。アイデアが面白いと思ったならば、それを最大限に発揮できるかもしれない方法を採ってほしいものだ。それが成功を保証するものでなくとも。殊にこのケースでは「危険」な試みではないのだから。

いかにも日本的な用心深さをこんなところでも発見してしまい残念なのである。


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2 コメント

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そうなんですか!!! (やまかた)
2009-04-22 22:02:11
ショックです。
犬の習性を考えるとそういう結果が予想されるんですね。しかし、どうしてそんなもっとも根本的な、一番大事なところではずしてしまうのか、摩訶不思議です。盲導犬協会からは、当然同じ意見が出されていたでしょうから、結論ありきで妥協案としてそうなったのでしょうか。協会の意見を知りたいですね。

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訓練所 (重松正大)
2009-04-23 00:12:29
そのうちそちらで訓練の模様でも見学したらいかがですか。面白いですよ。

因みにドイツの警察犬は原則ひとりの警官についていて、休日はその警官の家で過ごすと聞いたことがあります。

そうやって意思の疎通を密にするのでしょう。
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