パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

貧しい私の、望むもの

2011-10-21 01:06:06 | Weblog
 毎度毎度でいささかなんなのだけど、またNHK。

 「みんなで日本GO!」という番組。

 「日本語」をテーマにした番組で、ちょっと前、といっても去年になるが、船越英一郎が司会をやっている頃はかなり好きな番組だったのだが、今年に入ってゴールデンタイムに移ってから、特に、例の大津波後は、すっかり「日本頑張れ!」、嵩じて「日本万歳!」番組になってしまった。

 「うんざり」と言うのも、うんざりするが、今日も「日本企業は、今でも外国企業にとって《学びの対象》となっている」という趣旨だった。

 要するに、日本には、企業であれ、個人であれ、外国人の目から見て素晴らしい要素が多々あるのだから、それを自ら見つめ直し、自信をもって、勇気をもって頑張れば、この難局を乗り越えることができるというわけだ。

 しかし、「学習」というのは、基本的に「他人」から学ぶもの。

 「みんなで日本GO!」で、外国人が「日本企業を学びたい」と、瞳を輝かせて言っていたが、それも、まさに、日本企業が外国人にとってなじみがないからこそ、ぶっちゃけて言えば、外国人にとって、日本人が「他者」だからこそ、「学びの対象」となっているのだ。

 「学び」は、自らにないものを「外」に探すのであって、「自分のいいところを、自ら自覚的に認識し、再学習する」なんて、できるわけがない。

 もちろん、日本人には、たぶん、いい面が少なからずあるだろうが、そういうのは、日本人であろうが、韓国人であろうが、アメリカ人であろうが、イギリス人であろうが、パプアニューギニア人であろうが、《自分》にはわからないものなのだ。

 人間って、そういうものなんだ……ということくらい、NHKもわかるだろうに。

 それとも、「日本人のいいところ」がすっかり失われている今こそ、失われたものを「再度、学ぶ」ことができる――という認識なのか?
 
 しかし、番組にそういう高度なセンスは感じられなかった。

 「みんなで日本GO!」を見る少し前の日曜日の朝のNHKニュースでは、結構いいことを放送していたのだが。

 それは、騒音とかホコリにうるさい日本社会を反映した日本独自の「大型ビル破壊技術」で、簡単に言うと、最上階の一階を一種の帽子をみなし、帽子をかぶったまま、少しずつ壊していくらしい。

 他に、「だるま落とし」的工法とかあるらしいが、いずれもダイナマイトで破壊する方法に比べ、危険性も、騒音も、ホコリも大幅減少というか、実質的にほとんどないばかりか、工期も大幅に短縮できるらという。

 一度にドカンと爆破すると、破壊は瞬間に終わっても、後片付けが大変らしい。

 たしかに、ダイナマイト爆破は絵的には派手で面白いのだが、「大雑把だなあ、少しは工夫したらどう?」とは思っていた。

 というわけで、その「大雑把」な外国から大いに注目されている技術なんだそうだ。

 ん、これは、いい技術だ。

 あと、リチウム電池に使うレアーメタル、リチウムを石油から精製する方法をどこかの大学の研究室で開発したとか。

 本当なら、すごいと思う。

 あと、二本脚ならぬ四本脚で、なおかつエネルギーを使わぬロボットとかも紹介されていた。

 エネルギー不要の四本脚ロボットというのは、エネルギー不要というのではなく、「人力で動くロボット」で、後ろで人間がちょっと「押す」だけで、四本の脚がバタバタ動いて、前進するというもの。

 番組では4、50キロはあると思われる荷物をヒョイヒョイ運んでいる映像が流れた。

 梃子の原理を利用しているらしいが、要するにリアカーの二つのタイヤの働きを四本の脚が代わりにやっているような感じ。

 リアカーでは動けないような場所でも動けるのが利点らしい。

 あと、もう一つ紹介されていたのは、産業技術ではなく、フランスに設置されている標準度量衡のうち「質量」の基準値を決める装置で、従来は厳密にはかった一キログラム分の「重り」で、一キログラム分の質量を決めていたのだが、それを「原子の数」で測るようにした装置で、来年早々くらいに納品されるのだそうだ。

 そもそも、「重さ」には、たとえば飛んできたKONISHIKIを受けとめるときに「重い!」と感じる慣性質量と、KONISHIKI自体の「重さ」である重力質量の2種類ある。

 月面上では、KONISHIKIの体重は六分の一になるが、それは慣性質量。

 万有引力との関係で決まるために、重さが変わるのだが、「それ自体の重さ」である重力質量は不変である。

 つまり、重力は、当然、不変の重力質量を提示しなければならないが、従来の度量衡原基では、実質的に慣性質量で重力質量を代置させていたことになる。

 それを「日本の技術」で、重力質量そのものを原基にすることになった、というわけらしい。

 そもそも慣性質量と重力質量は、概念的にまったく別物だが、両質量が99.9999999…パーセントの確率で比例しているため、実質、同一のものとみなしてよい(であるが故に、度量衡原器でも金属の固まりを代置的に「基準」にしているわけだ。今現在、少数点20桁近くまで「同一」であることが実験的に確かめられているとか)のは、まったくの偶然である、とか、そんなことを以前、読んだことがあって、今ひとつよくわからなかったのだが、今後は、「原子の重さ」で永遠不変の「重力質量」を確定すると聞いて、少しわかった感じ。

 いずれにせよ、大変に意味深い技術だと思ったし、ああいうのをプッシュすればいいのに、NHKときたら、人型ロボットとか、新幹線とかの「輸出」ばかりにご執心で。

 人型ロボットは、なんで2本脚という不安定なかたちにするのか意味が分からない。

 断然四本脚ロボットのほうがセンスがいいし、輸出も大いにあり得ると思う。

 それはともかく、多くの日本人が期待する「新幹線の輸出」も、私は望み薄だと思う。

 なんでかというと、安全かつ時刻表通りにぴたりと運行するのはすごいと思うが、普通運賃の2倍の料金がかかるというのでは、ある特定の地域、たとえば観光地とか、ドーバー海峡のような特別の路線を除き、需要はないだろう。

 日本だって、新幹線が地方にも張り巡らされて以降、地方がどうなったか。

 奇麗で早くて快適な新幹線なんか、くそくらえ。

 新幹線は中流以上、貧困層は高速道路の無料化に基づく格安のバス移動が定番、とか、そんな「格差社会」になることを貧困層の私は望んでいる。