パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

○○ちゃん、見てるー?

2008-08-20 20:55:03 | Weblog
 部屋が狭いのは最初からわかっていたことなのだが、間仕切りの壁が薄いらしく、ラジカセでジャズを聴いていたら、管理人がやってきて、「あのーすいませんが、お隣さんがちょっとボリュームを下げてださいとおっしゃられるので」と言ってきた。

 お隣さんは、70をだいぶ過ぎたお婆さんで、私が借りている部屋の大家さんでもある。

 まあ、アート・ブレーキーだったからなあ。うるさいことはうるさい。(この「うるさい」は文字通りの「うるさい」だ)

 しかし、本当に一番「うるさい」のはクラシックオーケストラだ。

 しかし、名曲も聴きたくない時に聴くと騒音でしかない。これはしょうがない。しかし、間仕切りの壁が思いのほか薄いのは、大家さんの責任でもある……と言いたいところだが、あきらめて音を絞るか、ヘッドホンの性能のいいやつを買うしかないと思って、電器屋を覗いたが結構高い。もっとも安くて5000円もする。

 あきらめて、本屋でショーペンハウアーの「意志と表象としての世界」を購入。

 最初、岩波文庫にはいっているだろうと思ったら、びっくりしたことに4冊もショーペンハウアーの著書を揃えながら、肝心の「意志と表象として……」がはいっていない。

 なんてアホなことをと思いながら他を探したが、結局、中央公論社の中公クラシックスとかいう新書シリーズで出ていて、なんと、新書のくせに定価が1780円。

 泣く泣く買ったけれど、製作原価なんか、2000冊刷ったとして、おそらく一冊150円くらいだろう。要するに、30万円。これに翻訳者への謝礼が五%とすると、定価×刷り部数×0.05で17万8000円。大体20万弱。合わせて50万円。

 一方、収入のほうは、2000冊全部売れたとして、250万円くらい。(七がけで計算)

 これで大ざっぱに計算すると、大体400冊売れればトントンの計算になる。

 ということは、ショーペンハウアーでも400売れれば上々という感じなのだろう。しょうがないのか……。

 しかし、ショーペンハウアーは、世界に名だたる厭世家のくせに書くものはえらく面白い。厭世家だが、サービス精神は旺盛なのだろう。


 ところで、もう一昨々日のことになるが、今のうちに書いておこう。

 体操男子個人のメダル中国独占は、「なんじゃありゃー」である。

 私が見たのは平行棒をほんの一部と鉄棒だったが、平行棒で頭を傾げ、鉄棒で確信した。

 あまりに酷い。日本、アメリカ、イタリアの各選手が意欲的で大胆果敢な演技を見せながら、最後の着地でちょっと乱れたことにつけこみ、中国選手が優勝してしまった。私が見たところ、ダントツで最下位だと思ったがなあ……。

 というわけで、ことごとく中国が金メダルをとってしまうため、獲得金メダル数ではアメリカの二倍もとり、一方、総数ではアメリカのほうが多いということになった。言い換えれば、中国の金メダルの獲得率が高すぎるのだ。

 とはいえ、男子飛び込みの何選手とやらの金メダルは文句なしだ。性格も良さそうで、各国選手、役員から抱き締められていたが、体操は駄目だ。あんなんで金をとって恥ずかしくないのか。

 団体総合で優勝した記者会見では、なんと、中国のマスコミから、最後の演技種目になった鉄棒について、「なんで安易な演技をしたのか」と質問が飛び、コーチが、「鉄棒が不得意なことはわかっている。勝つためにはレベルを下げるのは当然」と答えた。

 これを報告した小倉智昭いわく、「そりゃーコーチの言う通りでしょう。不得意なんだから、安全を期すのが当たり前」と言っていたが、中国の記者の質問の趣旨は、「それはわかるが、それにしても、なんであんなに下手なのか」だろう。

 これに限らず、意外なことに、小倉は中国をかばい過ぎである。

 それはともかく、自国マスコミに突っ込まれて「我々が鉄棒が不得意なことはみんなが御存じ」と告白しながら、その鉄棒個人で優勝だもんなあ。

 誰か、ひとつ、強烈な皮肉をかまして欲しいものだ。別に大した工夫はいらない。

 「不得意と言われていた種目でも、得意とするドイツ、アメリカ、日本の選手をはるかに引き離す、見事な、完璧な演技でした!」

 と言うだけで皮肉になってしまう。

 でもあのチャンピオンには、カエルのつらになんとかだろうなあ。何しろ、チャンピオンになったインタビューで、「○○ちゃん見てるー? 早く結婚したいよ」なんて言ったそうだ。これは、演技の話に持ち込まれたくないための煙幕か、と思ってしまう。