エペソ6章12節
私たちの格闘は血肉に対するものではなく、
主権、力、この暗やみの世界の支配者たち、
また、天にいるもろもろの悪霊に対するものです。
次に、「この暗やみの世界の支配者たち」に関して。
実は、検討したかったのはこの箇所だ。
原典を提示する。
τους κοσμοκρατορας του σκοτους του αιωνος τουτου
これを見ると「この暗やみの世界の支配者たち」という訳出は誤訳だと分かる。
全文直訳する。
この世の闇の支配者たち
となり、上の日本語訳と原典の間には決定的な違いがある。
定冠詞「この」の修飾語が、日本語訳だと「暗やみ」であるのに対して、原典では「「世(界)」となっている。
この違いを説明する。
まずは、「この世の闇の支配者たち」について。
この世には闇が存在し、その闇を支配している者たちがいる
と理解するのが自然だろう。
一方、「この(暗)闇の世界の支配者たち」はどうだろうか。
この世とは無関係に何処かに(暗)闇という世界が存在し、そこを支配する者たちがいる
つまり、前者においては危機的臨場感があるが、後者はそれが全く感じられない訳出となっているのだ。
つまり、砂糖まぶし的な言い回し。
次に、「 天にいるもろもろの悪霊」について。
原典を示す。
τα πνευματικα της πονηριας εν τοις επουρανιοις
直訳する。
天々の中にいる悪しき霊たち
この箇所に誤訳はない。
・・つづく。