夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

十三夜

2012-10-27 21:25:03 | 日記


八月十五夜の中秋の名月に対して、九月十三夜の月見は「後の月見」という。十五夜に次いで美しいと言われている月なのに、今夜はあいにくの曇り空で、時々小雨が混じり、ながめることができないのが残念だ。

そういえば、後鳥羽上皇は、建仁二年(1202)九月十三夜には、水無瀬(みなせ)離宮で歌会を行っている。この日は、上皇がかねて歌人達に詠ませておいた恋歌十五首を、歌合に番えたものが、藤原定家によって読み上げられ、その後、歌のよしあしについての評議が行われた。

定家の日記『明月記』によれば、この日は朝からよく晴れ、雲や靄もなく「夜月清明」だったという(うらやましい)。評議は夕刻になって終了したが、参加者の興醒めやらず、「月前秋風」「水路秋月」「暁月鹿声」の三題で当座の歌合が行われ、さらに「しうさむや(十三夜)」を各句の上に据えた折句歌と、「みなせかは(水無瀬河)」を隠し題にした歌を詠むことが求められた。

後鳥羽上皇は、十三夜の折句歌では、
  志賀の波や浦わの月のさゆる夜に昔恋ふらし山の秋風
飛鳥井雅経(あすかいまさつね)は、同じく、
  しばし見んうき雲晴るるさやけさは昔もあらじ山の端の月
と詠んでいる。二人ともすばらしい。

私も挑戦してみようと思ったが、折句歌は難しかったので、「十三夜」を五首の初めに置いて詠むことにした。「山家の月」の趣で、山里で侘び住まいする者の立場から詠んでみたのだが、うまくいかなかった…。

  し 時雨れつる空とも見えず晴るる夜の月漏り明かす槙の板屋に
  う 憂しとみる世もなかなかにそむかれず月かげばかり友とならひて
  さ さびしさは月見るにこそまさりけれ同じ心に見る人もがな
  む 虫の音も秋をや惜しむ草の原月に恨むる声ぞ聞こゆる
  や 山里は訪(と)ふ人もなし夜もすがら月をながめてしのびわびつつ

写真の月は、昨日撮ったもの。本当は、今夜に照ってほしかった。

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