夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

歌学び、初学び (その二十二)

2015-03-07 21:40:19 | 短歌
今月の「初心者短歌講座」は、先生の他に3名が参加。
今回の私の詠歌は、二月の終わり頃に詠んだ歌を提出した。

私の勤務校が、小さな山に接した傾斜地にあることは、以前話題にしたが、校舎裏の斜面に紅梅が植えられており、毎年白梅の後に咲き始める。
先日、よく晴れた穏やかな午後、その紅梅がまだ蕾のまま、今にも開花を迎えそうな様子なのを見て、歌に詠んでいた。

(提出歌)
  紅梅の小さき蕾は天をさし春の光に今ひらかむとする
(添削後)
  紅梅の小さき蕾は天をさし今かひらかむ春の光に

先生は、「小さき」は「ちさき」、「天」は「そら」と読みながら添削したところを教えてくれた。

(提出歌)
  紅梅の木は日に向かひ枝を広ぐ大空を抱かむとするがごとくに

この歌は、このままでよいと言われた。

(提出歌)
  このごろの空気をぬるみ梅が枝にさへづる鳥の声ものどかに
(添削後)
  このごろの空気をぬるみ梅に来てさへづる鳥の声ものどかなり

先生からは、この歌がよいと言われ、○を付けていただいた。

感想
今回の講座の最後に、先生が、歌作について「今面白いなと思って考えていることがある」と言われていた。

『百人一首』の、
  みかきもり衛士の焚く火の夜は燃え昼は消えつつものこそ思へ
のように、歌の構成として第三句が中心となって展開する歌によいものが多い。
一~三句だけでも独自の世界を形成するし、上二句がなくて三~五句だけでも同様である。
歌の作り方として、ある一つの事実をもとに一首の世界を形成する写生歌でなく、ある事実を綴り合わせて一つの歌を詠むこともできる。
作歌の際に、俳句を二つ作るような感じでくっつけたら、一つの歌になるのではないか、といったお話だった。

このお話は、先生が歌誌『龍』2月号に、「歌を作る方法として」と題して、
現代の作歌方法としても例えば「雪が降る」という五音の言葉を中心に、二、三の詩的世界を展開せしめることが出来るかも知れぬ。題詠とは別の試みとして第三句の五音を中心に歌を作ってみるのはどうだろう。
と書かれていたのと同趣旨だが、直接その提言をお聞きして、非常に興味深く感じた。

私自身は歌を作るとき、第一句から最後まですっと詠み通すように歌ができることは少なく、たいていは下句の七七が浮かび、後から上句を考えて付けることが多い。この癖は昔から変わらないが、きっとマンネリにもつながりやすいと思う。
先生の言われるように、歌の要の第三句を予め据えておき、そこから展開しうる詩的世界について、あれこれと想を構えてみるのは有効な方法かもしれない。

講座の前半にあった、若山牧水『海の声』の歌についての話題は、また次回に。