テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

《怖さ》がよりつのる、怖い絵画の本。

2007-10-14 13:50:06 | ブックス
「むきゃあァッ!
 こわいのいやでスゥ! ほらー、きらいでスよォッ」

 落ち着きなさい、テディちゃ。
 今日ご紹介する御本はホラーじゃありません、美術評論の御本よ。

「……ほんとでスかァ、ネーさ」

 本当ですってば。さあ、こちらがその御本です。

  
           ―― 怖い絵 ――


 著者は中野京子さん、’07年7月刊行の作品です。
 表紙を飾るのは『いかさま師』。
 フランスの画家ラ・トゥール(1593~1652)の代表作ですね。
 この絵のどこが怖いんだろう?と美術マニアさんたちは
 首を傾げるかもしれません。
 流血の決闘のシーンや、魔女狩りが描かれているのでもないのに?と。

「う、そでス、ね……」

 でも実は、こわい。
 それは凶器の怖さではなくて、
 心理の怖さ。
 人物の目線をよくよく深読みしてみれば、
 ひとが如何に《怖い》何かに変化(へんげ)してゆくか、
 いやそもそも
 《怖い》何かをその身内に抱え持っているものなのか、
 じわじわと肌に染み入ってくるのです。

 視点を変え、
 時代背景や政治状況も考え合わせると
 ありふれた肖像画でさえも『怖い』本性が露になるのだと、
 中野さんはガイドして下さいます。

 ホルバイン描くヘンリー8世像の、こわさ。
 ドガの踊り子の、背後に忍ばされた、こわさ、かなしさ。
 ボッティチェリのパネル画の、裏返しの喜びと一体になった、こわさ。

 とりわけ素晴らしく感じたのは、
 ゴヤ、ダヴィッド、レーピン、コレッジョの作品のついて。
 そうだったのか、そういう風にも考えられるのかと、
 衝撃を受けました。
 特に――
 ゴヤ!
 『サトゥルヌス』に対する長年の疑問が解けました。
   (あんな絵を注文したクライアントって誰だろう?)
   (えらく趣味が悪いのか?)
   (真にゴヤを理解してるパトロンさんなのか??)
 
 でも、そうじゃなかったのですね。
 クライアントさんはいなかった……
 あれは、ゴヤが自身のために描いたのだと、
 金銭のために描いた作品ではなかった、と
 中野さんは解説しておられます。
 《自己治癒》のためであった、と。
 
 目からうろこ、でした。
 ああ、そんな背景があったんだ……。

 題材に選ばれているのは、みな、有名な画家さんたち。
 美術史に詳しくなくても、あのヒトかぁ、と分かります。
 美術好きなら 尚のこと面白い!
 芸術&読書の秋で一挙両得?
 ぜひぜひのお勧め本です!

 
 ……って、テディちゃは、どうしたんでしょ?
 途中からやけに静かですねえ?
 お~い? テディちゃ??

「………」

 あらら、ジェリコーの絵を見て気絶しちゃってる?
 テディちゃ、しっかり!

「……ネーさのうそつきィ~……
 やッぱりィ、このごほん、こわいでスゥ~……」
 
 

 
 
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