テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

刀工を描いた名作時代小説。

2007-10-07 13:49:56 | ブックス
 さあ、青春エンタ剣道小説を御紹介した波に乗って、
 剣にまつわる時代小説を本日は選んでみました――こちらです!


    
     ―― 鬼麿斬人剣 (おにまろざんじんけん)――


 
 著者は隆慶一郎さん、1987年に単行本が発行されています。
 江戸も終わりに近い頃を舞台にした時代小説なのですが……。

「ネーさ、ひょうしのひと、こわいィでスゥ」

 確かに、テディちゃの印象通り、
 強面といいましょうか、怖いと感じる容貌ですね。
 こちらが鬼麿(おにまろ)さん。
 本作品の、主人公であって主人公でない、変わったキャラさんです。

「ふェ? しゅじんこ、でないのでスか」

 鬼麿さんはね、著名な刀工さんのお弟子さん。
 師匠の刀工さんが、或る日、
 自死してしまうところから物語は始まります。
 師匠の遺命に従い、鬼麿さんは旅に出る――
 昔、心ならずも金銭のために打った不出来な刀を、
 見つけ出し、折ってくれ。
 あんなものを残してゆくと思うと、堪らない……。
 師匠のそんな願いを叶えるための、旅でした。

 季節は冬。
 鬼麿さんの旅が楽なものでないのは、申すまでもありません。

「えェ~?
 それじャ、おにまろさん、ちゃんとォ、
 しゅじんこうさん、でスよ?」

 ええ、そう見えます。
 ですが、物語を支配するのは、鬼麿さんではないのです。
 鬼麿さんは、冒頭で舞台から去ってしまった刀工さんの、いわば《影》。
 最初から最後まで、《影》は師匠の敷いた道を進んでゆくのです。

 師匠はなぜ、不出来な刀を打つ羽目になったのか。
 旅する鬼麿さんを襲う危機と陰謀は、いったい何者の思惑か。
 一般的な剣豪小説とはちょっと違う、
 エンタメ色の濃い時代小説ですね。

 そして、読者の心を摑んで離さないのは、
 鬼麿さんの師匠であった刀工さんの存在です。その名を、

 山浦環源清麿(やまうらたまき みなもとのきよまろ)――

 この御方は実在の刀工さん、でした。

「そうなのでスか? かたな、つくったのでスか」

 清麿さんの御作は、かの有名な正宗、虎徹、村正などと並んで
 国立博物館に収蔵展示されています。
 実は去年、展示されていた『清麿』作品を見る機会があったのです。
 驚きました!
 あんな日本刀、見たことありません!
 虎徹も凄かったけれど、
 清麿の作品は格別、というのでしょうか……
 華のある刀というものを初めて拝見いたしました。
 なるほど、これほどの名刀を作った人物でしたら
 小説のモデルにもなるだろうと頷いたものです。
 一目惚れする刀剣マニアさんもいるでしょう。
 もし入手したら、誰にも、絶対に、渡したくなくなるでしょう。

 物語のすべては、清麿という、刀工あってこそ。
 清麿が、物語世界の柱であり、王。


 小説を読んで後、国立博物館へ行くプラン、お薦めです!
 国立博物館は面白いですよ!
 館内をうろうろしてると、
 あっちに尾形光琳が!
 こっちに俵屋宗達が!
 教科書に掲載されていた美術品の名作が、ごろん、ごろん。
 HP等で季節ごとの展示替えを調べてから行くと、
 見落としがありません。
 もしも『清麿』作品に出会ったら、少し、立ち止まってみて下さい。
 そして、幕末に生きた天才刀工を、
 ちょっぴりでも、思い描いてみて下さるよう――

「はくぶつかんは、うえの、にあるのでス!」

 分かってますって、テディちゃ。
 ついでに言うと、常設展示エリアは入場料がお安いのです。
 秋の行楽には、

「ぴったりィ、でスね♪」

 
 
 
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