テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 主役よりも、王座よりも ~

2024-04-16 22:03:06 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 くううゥ~! きゃッこいいィ~!」

「がるる!ぐるるがる~!」(←訳:虎です!みんな踊れ~!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 宇多田ヒカルさんの最新アルバム『SCIENCE FICTION』、

 とりわけRe-Recording『traveling』が素晴らしくて、

 何度も聴き入っております。

 PVも新版を作ってくれないかな~とこっそり願いつつ、

 さあ、本日の読書タイムは、こちらの御本を、どうぞ~♪

  

 

 

           ―― 脇役たちの西洋史 ――

 

 

 編者は有光秀行(ありみつ・ひでゆき)さん、

 鈴木道也(すずき・みちや)さん、

 2024年2月に発行されました。

 『9つのライフ・ヒストリー』と副題が付されています。

 

 この御本に収録されているのは、

 9人の執筆者さんによる、

 聖人、騎士、学者、重臣、地図職人や予言者などなど

 8世紀から19世紀に実在した

 ”時代の主役”……ではなくて、

 ひとクセもふたクセもある《バイプレイヤー》さんたちの

 ライフ・ストーリーです。

 

「わきやくゥさんッ、でスかッ?」

「ぐるがぅるるる?」(←訳:主役じゃなくて?)

 

 御本の『まえがき』では、↓こう述べられています。

 

   《これから登場するのは、

    歴史の教科書に太字で記されるような、

    いわゆる歴史上の人物ではない》

 

   《時代の主役とまではいえず、

    それどころか

    主役に相対して惜しくも敗れたライバルでもない》

 

 そう、主役ではない、主役ではない……んだけど、

 地味な彼らは、

 歴史の舞台に欠くことのできない

 バイプレイヤーのような存在である、と。

 

 その一例が、

 第2章『世界で最高の騎士』で語られる

 ウィリアム・マーシャルさん。

 

「うしろだてェ、なしィ?」

「がるるぐるるがる?」(←訳:地位も領地もなし?)

 

 ウィリアム・マーシャルさんは、

 1146年頃、近衛大将職にあるジョンと

 貴族の子女であるシビルを親として生まれました。

 ただし、ウィリアムさんは、第四子。

 当時、長男・次男ではないウィリアムさんが

 親の財産や土地を相続する可能性は、ほぼゼロですから、

 頼りにすべきは、

 

 自分の腕と、才覚だけ。

 

「がんばッ!」

「ぐぅるる!」(←訳:ファイト!)

 

 ウィリアムさんの孤独な戦いは、

 わずか5歳、父母が恋しくてならぬ年頃から始まります。

 

 人質として、イングランド王の宮廷へ。

 やがて人質の役目から解放された彼は、

 ノルマンディーに渡って騎士見習いとなり、

 父の死の直後には騎士に叙任されました。

 英仏の王族たちの闘いが初陣となって、

 数々の戦いを生き延びたのち、

 母方の叔父・ソールズベリ伯に仕えるも、

 叔父は謀殺され、ウィリアムさんは捕虜に……。

 

「はわわァ~…」

「がるる……!」(←訳:激動だ……!)

 

 釈放されたウィリアムさんが新たに仕えたのは、

 ヘンリ若王(1155~1170)。

 王のもとでウィリアムさんは順調に出世してゆきますが、

 妬みそねみの標的にされてしまい、

 若王の宮廷を離れて、大陸へと旅立ちます。

 

 ただ、皮肉なことに、

 心ならずもヘンリ若王と袂を分かったウィリアムさんの

 ”騎士としてのステップアップ”は

 完全に右肩上がりでした。

 

 大貴族たちとも親しい、馬上槍試合の名手。

 イングランドやウェールズのあちこちに領地を得て、

 もはや大富豪。

 ジョン王(1167~1216)に請われて宮廷に戻り、

 晩年の称号は

 《国王と王国の保護者》。

 

「のぼりィつめましたでス!」

「ぐるがる!」(←訳:ほぼ天辺!)

 

 財産あり、領地あり、実績あり、

 名声もあって人望もあって、人脈もある。

 

 ウィリアムさんは、その気になれば、

 王座に手が届いた、のかもしれません。

 が、それをしなかった。

 王ではなく、

 騎士である自分を選んだ――

 主役ではなく、脇役である自分を。

 

 他にも、脇役ひと筋!な傑物さんたちが

 各章でキラリと輝きを放っています。

 第7章『国王の天地学者として生きる』も

 歴史好きな活字マニアさんにおすすめですよ。

 ”王になろうとしなかった男たち“の物語を、

 ぜひ、一読してみてくださいね~♪

 

  

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