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午前2時の宮殿







ブログタイトルは「午前4時の宮殿」ジャコメッティの作品のタイトルから剽窃。

「午前4時の宮殿」は、明け方に見る夢のことだと思っているのだがどうだろう。



ところで、本物の「精神の宮殿」を見てきた。

ロンドンで最小の国立の美術館、サー・ジョン・ソーンズ美術館、そのキャンドル・ナイト。

この美術館では、月初めの火曜日の夜、ろうそくの光で館内を照らす営業時間がもうけられていて、
昨夜はそのバリエーション、バレンタイン特別版だった。


昼間にここを訪れたことはあるが...

ここは夜間訪れるべきだったのだ!


まさに人類の午前4時の宮殿、マインド・パレス(記憶の宮殿)。

暗闇に浮かび上がる船のような古代エジプトセティ1世の石棺(写真右下)、
ギリシャ、ローマ神殿の破風の欠片、欠片、欠片
円柱、ガーゴイル、鏡、ガラス、壺、ブロンズ、彫刻、その破片。


大英博物館の基礎となったスローン卿のコレクション、
彼の「驚異の部屋(ヴァンダーカーマー)」は最初こんな感じだったのかもしれない。


また、忍者屋敷のように入り組んだ館内の設計は、
例えばホガースの絵画のある部屋の「隠し壁」を開けたらピラネージの「パエストゥム」が現れ、
反対側の隠し扉を開けたら、吹き抜けバルコニー空間になる...


人の夢の中を歩けるとしたら、まさにこういう感じに違いないと思った。
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英国と外国の文物・人物




先日、近所にある大変優秀で有名なグラマー・スクールで開かれた、医学部進学希望者のための説明会に行ってきた。

スピーカーは5人。
事務的な話の後、医学部に入ってそれぞれ2年目と最終学年在籍中の学生、そして各分野の医師が、志望動機、日常のスケジュール、進行中のプロジェクトなどについて話し、とても興味深かった。

実際に出た数字をあげると

1000人(この数字は割合を見るための単なる数字)の学生が医学部進学に必要な資格をクリアして志願するとしたら
500人が面接に呼ばれ
125人が大学からオファーをもらい
Aレベル試験結果後63人が入学する

という状況らしい。

こりゃあかんわ(笑)と思い、娘に「どうなの?」と遠慮がちに聞いたら、さらっと「自信ある」ときた。
ティーンエイジャーとはいえ自我肥大しすぎてませんか。
最近は「宇宙物理学方面もおもしろいと思うの」などとも言うし、大風呂敷を広げるのだけはわたしの血を引き継いでいるみたいだ。


それはそうと、以下、わたしがいかに慣れ親しんだ考えの「檻の中」に住んでるかを暴露するようで気恥ずかしいのだが、いつものことだし書く。

関心したのは、スピーカー5名中4名が、乱暴な言い方を許されるなら「比較的最近外から来た人」だったことだ。

中国(不明)
ムスリム(2世)
フランス(学生時から英国へ)
オランダ(結婚後英国へ)
そしていわゆる英国人

全員このグラマースクールの卒業生、あるいは在校生の親だ。
まさに現代英国の縮図。


昨日だったか、中国資本が英国の私立校を「爆買」している、一部の私立校が中国人をはじめとした「お金のある外国人」を多数受け入れている、というニュースがあったが、グラマースクールは立ち位置が違う。

グラマースクールは公立だ。しかし、何かとレベルの低さが取りざたされる公立校の中では別格。学力では私立と並び、学費は公立ゆえの無料、のいいとこどり。学校数は少なく、ゆえに競争倍率は非常に高く、入学は相当難しい。

その状況で「比較的にしても最近外から来た人」の割合が多いというのは、正直、わたしはすごいなあと思った。
そんなにシンプルなハナシではないのかもしれないが。


英国はヨーロッパの中では新興国で、長らく辺境の位置にとどまっており、優れた文物や人物は外国から入ってくるものだった。
たとえば宮廷画家としては16世紀のホルバイン(神聖ローマ帝国)やヴァン・ダイク(フランダース)は有名だ。また、19世紀にマルクスがロンドンで執筆したことも。
あ、おいしい料理はすべて外国料理! 

英国が国力をつけ、国産の文物にこだわるようになったのは、イングランド銀行を成立させ戦時国債を発行しつつ対仏戦争でたびたび勝つようになり、海上交易ではオランダから権益を奪い、植民地経営をし、紡績業を中心とした産業革命にも成功してから、18世紀のことだ。

歴史的に見ても、英国人は国籍やオリジンにこだわりがない。この点では英国を尊敬できる。

娘の経験でいうと、料理コンクールで和食のメニューを作った時、「日本人が和食を作るのが上手いのは当たり前で、英国人にフェアでないから評価されないかも」と思ったが、和食で4回もトーナメントをくぐり抜けた。
また、楽器演奏で「英国代表」を選ぶのに外国籍は心情的に不利なのではないかと危惧したこともあったが、結果「外国籍」は全く影響がなかった。

ああ、国籍にめっちゃこだわりがあるのはわたしのほうじゃないか(笑)。


日本も外国の文物を受け入れ、改良するのは、英国よりずっと得意だ。
しかし、「人物」はどうだろう。

日本と英国は端っこの島国とあって、メンタリティが似ていることも多い一方で、「国籍やオリジンは関係なし」という英国の感覚は、日本の感覚(もちろん日本でもそれがポリティカリーにはコレクトだ)とは、ちょっと比較にならないほどオープンなのではないか。
だって、日本では去年のミス日本代表(日本と米国ミックス)が、「全く日本人らしくない」と諤々されたんですよ...


まあこのハナシも一面だけ、全然足らない観察だ。

繰り返すが、一番驚いたのは、外国生活の長い自分自身がいまだにこういうことで「ほおー」と感心する、という「外国人」的部分にあるのかもしれない。
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理想の彼




16歳の娘は、英国のシステムでは今年の6月で義務教育を終える。

終える前にGCSE(義務教育終了資格試験)があり、人生初めてのプロムがある。


ああ、プロム! 
わたしもティーンの頃、アメリカ映画を見て、憧れや羨望とかいうだけでは片付かないような複雑な気持を抱いたなあ。
エスコートしてくれる素敵なパートナー、イブニングドレスにハイヒール、記念写真、ダンス、あ、でも同級生の幼稚さに幻滅もしそう...

今思えばそんなにいいものでもないか(笑)。


娘のイブニングドレスやハイヒールはわたしが喜んで用意できるが、パートナーだけはどうにもならない。

車でしか通えない女子校、しかも稽古事もすべて校内で受けられる環境で、中学校入学時から今まで4年半過ごしてきた彼女らに異性の影はない。
娘の話によるとプロムにボーイフレンドを調達できそうなのは90人中、4人くらいだという。

うむ、娘が同年代の男の子に出会う唯一の機会、音楽関係(オーケストラやコンクール関係)をあたって、なんとか6月までに毛並みのいいボーイフレンドを当日だけでも調達できまいか!

と冗談で提案したら、彼女はボーイフレンドは全く大切なファクターではなく、むしろ邪魔、単にきれいなドレスを着て仲のいい友達とバカ騒ぎしたいだけなのだという。まあ、これが本心ならのハナシですが。
ただ、ベネディクト・カンパーバッチが付き合ってくれるのなら大歓迎だそうだ。


それで、一般的な話として、どんなボーイフレンドが理想かという話になった。

娘の理想を初めて聞いた。

「楽器が最低ひとつはできて、誰にでもやさしくて、バカじゃなくて、頭が良くて、賢くて、知識が豊富で、頭の回転が速くて、知的好奇心があって、成績も良くて...」

どうやら「バカじゃない」というのがとてもとても重要なようだ。思いつく限りの形容詞のパレード、延々に続く。
実際容姿はどうでもいいのですって。本当に?!


たぶん娘が理想とするのは『問題解決能力がある人』なのだと思う。
ベネディクト・カンパーバッチ演ずるシャーロックに狂乱するのもそうだからだと思う。

見たこともない数学の問題が出題されても、どんなマナーで振る舞えばいいのか不明な場所に引っ張り出された時も(女王様の御前とか、やばそうな集団の前とか)、理由のない屈辱を受けたとしても、桁外れの賞賛を受けたとしても、外国で誘拐されたとしても、突然職を失ったとしても、ロンドンの街を災害や宇宙人が襲ったとしても、とにかく素早く最善の回答を選択する能力のことである。「空気を読む」という緩さとはまた違う。


科学者ピット・ヘインはこう言った。
Art is the solution of a problem which cannot be expressed explicitly until it is solved.

技術(アルテ)とは、問題解決以前には問題化さえされていないような問題を解決することなのである。
「問題の立て方自体がすでに回答の一部でさえある」と彼は付け加える。


そんなアルテを身につけたパートナーに出会うため、学問と芸術に励み、何事にもとにかくオープンマインドで人格を磨いていってほしいと思う。

2年後、高等学校(6thフォーム)*卒業時のプロムには、そんなパートナーにエスコートされるといいね。



*ちなみに英国は、中高という区切り方ではないが、日本やベルギーが6年間なら7年間。そのうち6thフォームが2年。
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white hall








トラファルガー広場からホワイト・ホールを歩いてウェストミンスターまで。


ホワイト・ホール(大通り)には、ダウニング街10番をはじめとした政府関連機関が軒を並べており、
「ホワイト・ホールで働いている」という自己紹介は、多くの場合「官僚です」とイコールなのだとか。

沈みゆく大英帝国のエリートですな。


英国のエリート教育は「大英帝国の斜陽をいかに遅らせ被害を最小限に抑えるか」
のクールな趣旨で行われているそうで

オックスブリッジで教育を受けた優秀で愛国心あふるる若者はホワイト・ホールをめざすらしい
(と、先日娘の学校で聞いた)。


ちなみに彼らエリートの中で金をターゲットにする者は金融街シティを目指し、
「シティで働いている」ということになる。


「ウェストエンドで働いている」といえば、芸術やエンターテイメントか。
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ピアノソナタ第12番








Hに
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