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理想の彼




16歳の娘は、英国のシステムでは今年の6月で義務教育を終える。

終える前にGCSE(義務教育終了資格試験)があり、人生初めてのプロムがある。


ああ、プロム! 
わたしもティーンの頃、アメリカ映画を見て、憧れや羨望とかいうだけでは片付かないような複雑な気持を抱いたなあ。
エスコートしてくれる素敵なパートナー、イブニングドレスにハイヒール、記念写真、ダンス、あ、でも同級生の幼稚さに幻滅もしそう...

今思えばそんなにいいものでもないか(笑)。


娘のイブニングドレスやハイヒールはわたしが喜んで用意できるが、パートナーだけはどうにもならない。

車でしか通えない女子校、しかも稽古事もすべて校内で受けられる環境で、中学校入学時から今まで4年半過ごしてきた彼女らに異性の影はない。
娘の話によるとプロムにボーイフレンドを調達できそうなのは90人中、4人くらいだという。

うむ、娘が同年代の男の子に出会う唯一の機会、音楽関係(オーケストラやコンクール関係)をあたって、なんとか6月までに毛並みのいいボーイフレンドを当日だけでも調達できまいか!

と冗談で提案したら、彼女はボーイフレンドは全く大切なファクターではなく、むしろ邪魔、単にきれいなドレスを着て仲のいい友達とバカ騒ぎしたいだけなのだという。まあ、これが本心ならのハナシですが。
ただ、ベネディクト・カンパーバッチが付き合ってくれるのなら大歓迎だそうだ。


それで、一般的な話として、どんなボーイフレンドが理想かという話になった。

娘の理想を初めて聞いた。

「楽器が最低ひとつはできて、誰にでもやさしくて、バカじゃなくて、頭が良くて、賢くて、知識が豊富で、頭の回転が速くて、知的好奇心があって、成績も良くて...」

どうやら「バカじゃない」というのがとてもとても重要なようだ。思いつく限りの形容詞のパレード、延々に続く。
実際容姿はどうでもいいのですって。本当に?!


たぶん娘が理想とするのは『問題解決能力がある人』なのだと思う。
ベネディクト・カンパーバッチ演ずるシャーロックに狂乱するのもそうだからだと思う。

見たこともない数学の問題が出題されても、どんなマナーで振る舞えばいいのか不明な場所に引っ張り出された時も(女王様の御前とか、やばそうな集団の前とか)、理由のない屈辱を受けたとしても、桁外れの賞賛を受けたとしても、外国で誘拐されたとしても、突然職を失ったとしても、ロンドンの街を災害や宇宙人が襲ったとしても、とにかく素早く最善の回答を選択する能力のことである。「空気を読む」という緩さとはまた違う。


科学者ピット・ヘインはこう言った。
Art is the solution of a problem which cannot be expressed explicitly until it is solved.

技術(アルテ)とは、問題解決以前には問題化さえされていないような問題を解決することなのである。
「問題の立て方自体がすでに回答の一部でさえある」と彼は付け加える。


そんなアルテを身につけたパートナーに出会うため、学問と芸術に励み、何事にもとにかくオープンマインドで人格を磨いていってほしいと思う。

2年後、高等学校(6thフォーム)*卒業時のプロムには、そんなパートナーにエスコートされるといいね。



*ちなみに英国は、中高という区切り方ではないが、日本やベルギーが6年間なら7年間。そのうち6thフォームが2年。
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