私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

歌のさまをむつなりといへる事

2013-04-27 08:27:17 | Weblog

 高尚は、古今集の序について 、又次のように言っております。

 「歌のさまをむつなりといへる事、六人の歌のえたるところ、えぬところのさだめなどは、ただ文章のかざりにかかれたるものにて、ことことなり」と。

 「さま」というのは説明書によると、心と詞(ことば)とに分けず、総合的に和歌を把握して、「姿」「風体」と同じ意味だそうです。

 高尚は、歌はそのさま。即ち、歌の形・姿を捉えるのではなく、其のその心を、情ですが、それを主体に於いて見なくてはいけないと説いています。そして貫之が書いている僧正遍昭「朝みどりいとよりかけて・・」、在原業平の「月やあらぬ春や昔の・・」、文屋康秀の「吹くからによもの草木の・・」、僧喜撰「わがいほは都のたつみ・・」、小野小町「思いつつぬればや人の見えつらむ・・」、大伴黒主の「思い出でて恋しき時ははつかりの・・」の六人の歌のいい悪いとこをあげて説明しているのは、「ただ文章のかざりにかかれたるものにて、ことことなり。」と云っています。文章を飾るために書いた物で、これ等六人の歌が、特に、心が表れている秀い出ている歌とは言い難く文章を飾るために書かれたものであるとしています。

 高尚はこのように古今集を批判的に書いた部分も見えますが、正岡子規のように、最初から此の古今集を全面的に否定してしまうような取り扱いはしていません。あくまでも歌を読む者の必読の書だとしております。