あまりおもしろくはないと思いますが、高尚と云う人物を知る上でどうしても読まなくてはならない本です。
高尚は、歌の情に付いて
「まず歌のはじめといふ、須佐之男命の八重がきつくるとよみたまひしみ歌よ。ただそのおり見たまふさま、思ひ給ふよしを、み心やりにとみたまひならんと、こともなげに、みな人おもふめれど、さようににはあらず。・・・」
と云っています。
「和歌」として、日本で最初に作られたのは古事記にある「八重かきつくる」と云う歌だ。この歌については、須佐之命が見た通り、思った通りを素直に詞に現わしたもので、別に情がこの歌に深く表現されているとは言い難いと誰も人はそう思うであろうが、それが違っているのだと、高尚は説いております。
そしてこの歌は櫛名田比売か、足名椎、手名椎かに読み聞かせている歌で、その辺りの景色をただ見た通りに歌ったものではない。情深く詞うるわしく読んで、これを聞い人があわれとめずらかに思うような歌だと云うのです。
なお、ここで高尚が取り上げた歌は
“八雲もたつ いづも八重垣 つまごめに 八へがきつくる そのやへがきを”
です。