私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

芳沢あやめの芸

2013-03-22 11:45:57 | Weblog

 この対談で、最後に高尚は梅玉に聞いております。

 高尚の言に「狂言の芸、昔の上手坂田藤十郎、芳沢あやめがいひつる言をつたへきき・・・」とありますがこの、芳沢あやめというのは、元禄の頃、大阪で、その人気を坂田藤十郎と二分した女形の人気役者でした。
 彼が芸談として著した「あやめ草」の中に次のような文章がありますが、初めに、それから見ていただきます。彼は言います 

 「所作事は狂言の花なり。地(芸)は狂言の実なり。所作事に珍しからん事のみ思うて地を精出せねば、花ばかり見て実を結ばぬに斉しかるべし。辰之助など上手は上手なれども、この場の工夫なきように見える」

 この所作事とは舞踊であり、地芸とは演技です。辰之助と云う役者は「女そのもの」に成りきることより「女らしさ」を表すことに芸の中心を置き換えたのです。男が女形を演ずるのだから、所詮女には成っこない。だったら、出来るだけ女のように見せるような様式技巧をその芸の中に取り込むべきだと主張していたのです。それを「あやめ」が、歌舞伎の女形は写実、即ち、見た目に女に見える芸が必要だと、辰之助の芸を強く批判したのです。

 此の当時の歌舞伎界の芸の方向性に付いて「芳沢あやめ」と「水木辰之助」の論争と高尚は知っていて、梅玉こと中村歌右衛門に尋ねたのです。
 なお、「あやめ」の絵がありましたので見てください。