私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

高尚と梅玉の会談

2013-03-17 15:02:30 | Weblog

 高尚と梅玉の会談で四つ目に話題に上ったのは、一人の役者が一つの出し物でその所作に七化もすることがあるが、之はその芸の気とわざを見せることに主眼があり、どうしてもその一つひとつの演じる時間が短くなるのが普通のように思われるが、見ていると、たいていの役者は一つずつの演技時間が長いように思うのだが、それに付いてどう思うかと尋ねております。

 それの回答として梅玉こと中村歌右衛門は次のように答えておられます。
 「七化、九化、十二化まではする。その時一つの芸を長くするのは“役者仲間へのはれわざ”のことで、見物する人はあまりそれを面白いとして見ているとは限らない」
 と。
 ここで、面白いのは他の役者との芸の争いのために何役もするのだと答えられている点であある。この間、亡くなった団十郎にしても、一人で十二化などしたと云うことは聞いておりません、どうでしょうかね。現在するとしたら一人何役ぐらいでしょうかね。此の梅玉は九化迄したことがあり、それも、それは吉三郎と芸を争いお互いに励むためだと話しております。競争心からだとすると、これ又、大変に面白いことだろうとも思われますが。

 こんなことを高尚は尋ねて居るのです。なお、この会談では高尚は梅玉に全部で七つ質問しておりますので、後3つです。最後までどんなことを尋ねたか、あまり興味は湧かないかもしれませんが“高尚の演劇論”としても面白いのではないかと思いますので、退屈ではありましょうがお付き合いください。