私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

宛然一廓の不夜城は<資産を蕩尽したる者尠からず>と

2013-03-07 10:55:20 | Weblog

 宮内は幕末の頃には、青楼がその軒を連ね、角燈籠が灯す灯りは一廓の不夜城の如くであったと言い伝えられています。
 此の地にひとたび足を踏み入れようものなら、男の持つ淫靡なるその遊び心が泉の如くに湧きい出来て、「竟に資産を蕩尽したる者尠からず」と、牛骨氏は書いています。

 と、云うことは当時の社会では、女性にとっては、[男を食い物にする化け物より怖い魔性の住む憎き憎き敵の住む里」でもあったのです。この町の歴史を語るあの吉備津彦命かだれかが再来してくれて、あの温羅みたいな恐ろしい鬼どもを悉く退治してくれないかと心の奥で祈りながら常にこの街全体に眺めていたのだとも地域の老婦人は語ります。それくらい男の天国だったらしいのです。そなん当時の女性たちのうらみつらみの心は、高尚や竹堂たちの雅の世界に住む宮内の文人達からは、不思議なことですが、何ひとつ聞こえてはきません。それも、亦、当時の不可思議な宮内のひとつにかぞえられています???

 これはないしょの話ですが「高尚先生も所詮温羅の仲間の一人ではなかったのだろうか」と、彼等を痛烈に非難する御婦人もいたとも伝え聞いてはいますが、今ではそれもかれも総て遠い過去の流れの中に消え去ってしまっています。ただ、流芳遺徳と云う字が刻された高尚の頌徳碑だけが空に大きく吉備津神社をめがけて屹立しています。