お須賀にとって小雪は、ほんの1,2回出会ったばかりの大変きれいな若い女でした。会って話してみると、それまでに心の中で我欲ばかり強くて、どうしようもないはしためうだと決め付けていた宮内のあそび女とは随分と違っていることに気付き、大変驚いたのです。その小雪は、自分はあそびめとしての汚らしさ卑しさを、一人では持ちこたえられないくらいに一杯に持った女として、常に控えめに、でしゃばらず、息をするにも遠慮遠慮するするような瘠せ我慢ばっかりしているような女でした。 「こんな女が宮内にも」と、お須香は大いに驚くやら感心するやらでした。だから余計に、愛しさが募って、この若い女のために人肌脱いでやろう、と、言う、お須香独特の体の奥にある男気といいましょうか、何か思いついたら一途に総てのものを擲ってでもそのことに邁進せずにはおかないというおとこだての心でしょうか、そんなものがいっきに噴出してきて、親身も及ばばない世話をするようになったのです。
自分の目の前の、もう二日間も眠りこけている小雪を、必死になって見つめています。時々、それしかできない自分の不甲斐なさにやりきれないような気持ちにさえなって、片時も目を離さずじっと見続けています。
小雪は相変わらず眠り続けています。