私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

木堂翁の最後の揮毫「慈悲」に秘めた心とは

2010-05-19 19:35:29 | Weblog
 この吉備の国が生んだ偉人な政治家「犬養木堂」の最後の揮毫をお見せします。

 あの忌まわしい昭和7年5月15日の事件によって、木堂翁は一命を落します。享年77歳でした。
 
 この書は、木堂翁が暗殺される、ほんの1日か2日前に書いて頂いたと、本当がどうか正確な記録はないのですが、ただ、「七十八叟」と言う文字だけが、その事実を伝えているに過ぎません。
     
 若し、これが木堂その人の真実なる書なら、将に、貴重な近代日本の歴史を語る上で、最も大切な歴史的事実を物語る資料の一つになるのではと、私は思っています。それも「慈悲」という、まことに、木堂晩年の、総ての人間を思いやる心が十分に伝わる、何か一本芯を貫いたような気品さへ感じさせられるような書だと思われますです。
 
 「慈悲の心を総ての、そうです。たとえ支那人であっても、人々が持つことが出来る日本社会の実現を目指しておるのだが・・・」 
 と、満州事変の対処方法に汲々している政府の要人や軍人たちを尻目に、己の総理としてのこれからの対策を確乎たるものとして心に秘めているような字にも思われます。
 
 5・15事件のすぐ前の書であると、聞いております。

 なお、「慈悲」とはなんであるか、例の漢文氏に問い合わせたところ、この言葉は孔子などの中国の古典はない言葉で、恐らく明治以降の作られた言葉ではないかという答えでした。

 でも、今となっては、木堂翁が、暗殺される二,三日前に、どんな気持ちでこの揮毫をしたためたのか、その由を知ることは、残念ですが出来ません。書だけがぽつんと空しく残っているだけです。

 五月の青葉の中で、「衆事不躁」の軸と共に、もう80年にもなる日本の昔を物言わぬ言葉で静かに語りかけているようでもあります。