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平和の王による救いと解放

2023-03-12 13:04:00 | メッセージ
礼拝宣教 ルカ19章28-40節 レントⅢ

①「ムナのたとえ」から
本日はイエスさまが都エルサレムへと入城なさる記事でありますが。イエスさまはこの時を迎えるにあたり1つのたとえを弟子たちにお語りになられました。それは今日のところの前に記された
「ムナのたとえ」(19:1-26)です。
そこには、「遠い国へ旅立つ」ことになった主人が僕らにお金を与えて旅立ち、「王位を受けて帰って来」て、僕らが預かったものに対してどのようであったかを問われる話です。その主人とはイエスさまでご自身であり、僕とは弟子となった者たちです。
ここではイエスさまとの十字架の出来事による別れがあること、そしていつの日かイエスさまが平和の王として再び帰って来られることが示されています。同時に、主の僕である弟子たちが、主イエスから託された福音を与る者として各々がどのように用いるのか、その心備えが語られています。主の弟子となった者は、自分の小ささや無力さに嘆き、涙することも多くあったでしょう。今も主に従って生きていきたいと願う者ほど、自分の小ささ、足りなさを知らされるものです。しかし、主の福音はその小さき者らにより代々運ばれ、終末のときを迎える備えがなされていくのです。
 このことを踏まえて、今日の御言葉に聞いていきたいと思います。

②「まだだれも乗ったことのない子ろばに乗られる主イエス」
そして、今日のエピソードでありますが。
イエスさまはエルサレムに向かう途上のべトファゲとベタニヤに近づいたとき、二人の弟子に、「向こうの村へ行きなさい。そこを入ると、まだだれも乗ったことのない子ろばがつないであるのが見つかる。それをほどいて、引いて来なさい。もし、だれかが、『なぜほどくのか』と尋ねたら、『主がお入り用なのです』と言いなさい」(30-31)と、お命じになります。
 イエスさまはエルサレムへ入城するにあたり、勇ましく、又見栄えのいい馬ではなく、まだだれも乗ったことがない、たよりない子ろばに乗られると言われるのです。
真の王の王であられるイエスさまがお乗りになられるなら、勇ましく見栄えのいい馬、その力と権力を示す軍馬に乗られる方がふさわしいようにも思えます。
しかし、人や荷物を運ぶのに便利だからと借りたり雇ったりしていたろば。又、農家の労働力として飼われていたろば。しかも、「まだだれも乗ったことがない」、大人のろばのようには役に立たず、未熟な子ろばを、イエスさまは「主がお入り用だ」とおっしゃるのです。それは、主の栄光が顕されるために用いられるように、と選ばれた存在であったのです。
 注目すべきは、イエスさまが平和の王としてエルサレムに入城するにあたり、そのような子ろばをあえてお用いになられたということであります。

③「御言葉どおりになる信仰」
まだまだ未熟で、、、といえば、この時の弟子たちも同様であったでしょう。
彼らはイエスさまがなさろうとしていることがなかなか理解できませんでした。
それも無理なからぬことでしょう。「この方こそ世を改めてこの地を統治するにふさわしいお方、来るべき王」と、従って来た彼らに対して、イエスさまは「十字架にかけられる」とか「殺される」とか口になさるようになっていたからです。
しかしそのような彼らが主に用いられるのです。
では彼らはどのようにして用いられていったのでしょうか。
それは唯、神の「お言葉に従う」ことを通してであります。
この時子ろばを連れて来るように命じられた2人の弟子たちは、「何で子ろばなどを必要となさるのか。馬だって借りることができたのではないか」と考えたかも知れません。しかし彼らは自分の思いではなく、「主がお入り用なのです」というお言葉に自分を従わせたのです。
そして、32節「使いに出された者たちが出かけて行くと、イエスさまが言われたとおりであった」のです。
彼らは、イエスさまのおっしゃるように、唯神の御心に聞き従ったとき、言われたことは本当だった、という体験をするのです。

さて、そうして「おっしゃっていたとおりだ」と、その「ろばの子をほどいていると、その持ち主たちがやって来て、『なぜ、子ろばをほどくのか』と言うのでありますが。弟子の二人は、『主がお入り用なのですと答えなさい』という、イエスさまのお言葉どおり、その持ち主にたちに伝えると、そうしますと、持ち主たちは不思議にもあっさりと彼らに子ろばを引き渡したというのですね。
これらの事から知らされましたのは、たとえ私たちが未熟であったとしても、弱々しく頼りないろばの子のようであったとしても、主のお言葉どおりに行なっていくと、主はその御心に適うみ業を起こしてくださるということであります。
主なるお方を尋ね求め、主なるお方のみ言葉にこそ聞いて従い、神の栄光を仰ぐ者とされてまいりたいと願います。

 ところで、このろばの子ですが。「つながれていた」のが「ほどかれて」イエスさまのところに引いて来られたわけですが。
 その「ほどく」という言葉が2度繰り返して使われ強調されているのです。これは当時のローマの悪政によってつながれ、あえぎ苦しんでいる人々が、「ほどかれ」ること、つまり解放されていくことを表したものです。
 イエスさまは、当時のローマの悪政や傀儡政権の支配のもとで軽んじられ、苦しむ民の1人としてお育ちになり、民が解放されることを切に願っておられたことでしょう。
けれどもイエスさまは、その手段として軍事力や武力という力による解放をお求めにはならなかったのです。
イエスさまは軍馬ではなく、「子ろば」をお用いになられるという象徴的行為によって、平和の王として来られたことを世に示されるのです。
37-38節では、「イエスさまがオリーブ山のくだり坂にさしかかられたとき、弟子の群れはこぞって、自分の見たあらゆる奇跡のことを喜び、声高らかに神を賛美し始めた。『主の名によって来られる方。王に、祝福があるように。天には平和、いと高きところには栄光。』とあります。
弟子の群れは、子ろばに乗ったイエスさまにつまずくことなく神を賛美して、これこそ王の王・「平和の王」であると、喜びたたえます。
 ただ、ここに「天には」とありますように、地上における平和は実現されていないのです。しかし、時は満ちていました。それはまさに、主イエスの十字架の受難と死、そして復活を通してもたらされようとしていたのです。

 この主イエスの御業によって神と人の関係の回復、人と人の関係の回復の道が開かれていくのであります。そして、真の平和である神の国の完成は最初に申しました「ムナのたとえ」にありますように、イエスさまが子ろばに乗って表わされた平和の王としての行進は、その時だけで終ったものではなく、再び主がこの地上に来られる神の国の完成のときに至る壮大な歩みであるのです。

④「石が叫ぶ」
 このように子ろばに乗って進み行かれるイエスさまに向かって、宗教家であるファリサイ派のある人々が群衆の中から、「先生、お弟子たちを叱ってください」と進言します。それに対してイエスさまは、「言っておくが、もしこの人たちが黙れば、石が叫びだす」と、お答えになるのであります。
ファリサイ派と聞けば、十把一絡にイエスさまに敵対していた人たちという先入観で見てしまいがちですけれども。
そのグループの中には敬虔でイエスさまのことを尊敬していた人たちもいたようであります。イエスさまを「先生」と言ったこのファリサイ派の人々も少なからずイエスに親愛と尊敬の念を抱いていた人たちであったと言われています。
けれども彼らはイエスさまの弟子にはなれず、一定の距離を保っていたのであります。
ここで彼らは、「これ以上、賛美が高まれば、イエスの身に危険が及びかねない」という観点から、「賛美をやめさせて黙らせるように」と、指摘しているようです。これはある意味、思いやりのある言葉であったのかも知れません。
けれどもその彼らに対してイエスさまは、「もしこの人たちが黙れば、石が叫ぶ」と、ユーモラスにお答えになります。
それは、心から湧き出る神への賛美。それを押しとどめることはできない。たとえ彼らを黙らせることができたとしても、この世界のすべてを造り、おさめておられる神がおられ、その神とその御業を全被造物がほめたたえる日がやがて訪れる。石ころさえも主を賛美する日が訪れるということであります。

⑤「今をどう生きるか」
最後に、その日その時を前にして、今、私たちは遂に始まった産みの苦しみのような時代を生きているように思えます。
以前に新聞のコラムで、昨今の風潮は、「『相手をたたきのめす』それがいいんだとするような過激な手法に待望論が集まるほど、戦後民主主義は行き詰っているのかも知れない」と、ある精神科医の方が記していた事が心に留まっています。
いろんな面で厳しく、不安や恐れの多い時代であります。そういう時に強いリーダーシップを求め、逆に身動きがとれなくなり、ひいては争いの過ちを繰り返そうとしていないかを問われます。力に依存し、力に服従していく社会や人間関係は、神の国とは程遠い殺伐とした世界といえるでしょう。
全能の主なる神は力ある軍馬ではなく、小さな子ろば乗られたイエス・キリストを通して神の国の到来をお示しになられました。
私たち一人ひとりは小さな存在に思えるかも知れません。しかし神の国の到来を叫び、祈り求める私を、「主がお入り用なのです」。
 主が再び来られるその時を待ち望みつつ、今も平和の王、主の行進に連なる者となっていきたいと切に祈り求めていきたいものです。
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