たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

企業を活かすのは <東芝、WDと和解>と<シャープ 祝東証1部復帰>などを読んで

2017-12-15 | 企業運営のあり方

171215 企業を活かすのは <東芝、WDと和解>と<シャープ 祝東証1部復帰>などを読んで

 

東芝の上場維持は無理かなと思っていたら、一昨日の毎日記事<東芝、WDと和解再建へ前進も再成長見通せず>と微妙な表現ながら上場廃止は免れたようですね。一方、数年前から資金繰りが苦しくなり大量人員整理を敢行しても焼け石に水、昨年は債務超過で東証2部に降格し、存続の危機状態にあったシャープでした。それが鴻海に買収された後1年で黒字化、しかも1部昇格ですから、驚きです。しかも<シャープ祝東証1部復帰 社員に「3万円」 感謝の仕方がシャープ?>と含みを持った言い回しながら、金一封を社員に配るというのですから、首切りから一転した印象はありますね。

 

では両者になにか違いがあるのか、比較対象にならないといえばそうなのですが、たまたまほぼ同時期に問題を抱え、危機に瀕したそれぞれの経営者のスタンスの違いは明瞭で、その結果はまだ見えませんが、どうも明暗が分かれそうな雰囲気に感じます。それで、毎日記事だけを材料に、なにかいえるか、記事を読みながら少し考えてみたいと思います。

 

個人的に言えば、東芝もシャープもPC製品を使ったりして、身近ですし、東芝の環境配慮的な姿勢や先端的なガバナンスの導入など興味の対象でした。シャープは身近な商品が多いのと革新的なアイデアがつまっているように思えて、商品選択で言えば優先順位が高かったですね。

 

このブログでも両社とも取り上げてきましたが、とりわけ東芝は結構多かったように思います。とはいえ、第三者委員会報告書は別にして(実際はこれもそう変わらない面がありますね)、情報媒体は雑誌・新聞などが中心ですから、資料的な信憑性は十分とはいえませんね。それを前提に、書いてみます。

 

シャープは、今年の夏に黒字化の道筋が見えたと言うことで発表があったと思いますが、その間の報道がほとんどなく、狐に包まれたような印象でした。それで毎日が連載した次の記事は少しはその解明になるかと読んでみました。

 

シャープ変転/上 鴻海流「信賞必罰」浸透 太陽電池、総出で営業

シャープ変転/中 液晶、世界へ再挑戦 8K前面に独自路線

シャープ変転/下 人材確保、再建の鍵 買収1年、問われる真価

 

まず変転上では、<電機業界では、代理店の販売促進活動をメーカー社員が手伝うことは極めて異例という。この代理店は東京でも販促活動をしており、ほぼ連日シャープ社員が1、2人加わり、買い物客に商品を説明している。ブルーコンシャスの高松豪社長(41)は「『台湾企業の傘下に入って大丈夫かな』と思ったが、社員の態度ががらっと変わって親身になった」と、シャープに起きている変化を実感する。>

 

これはどういうことか、販売促進なんかは当たり前かと思うのですが、そうではなかったのですね。ある意味では鴻海のやり方自体は、本来に戻った?現場営業に注力する形で社員のやる気を引き出したということでしょうか。

 

とくに赤字垂れ流しの<太陽電池事業>は変革が必要だったようです。<「ぜひ商品の良さを知ってもらおう」。奈良県天理市の研修施設に昨年12月、設計や品質管理といった太陽電池に関わる社員数十人が集まった。3カ月は通常の業務を離れて、太陽電池のセールスで販売会社社員と一般の住宅を回った。関西地区の営業を統括するシャープ子会社の三島広史さん(43)は「それだけ追い込まれていた」と振り返る。信賞必罰を旨とする鴻海の傘下となり、危機意識が早くも浸透していた。>しかし、これ自体も特段目新しいことではないように思えます。地道ではありますが。

 

営業に注力するのはいいのですが、その分、これまで商品開発力が素晴らしかったものがどうなるのか懸念もあるように思います。

 

変転中では、これからの主力事業として、超高精細画質8Kか有機ELかという問題について、<有機ELでLGに後れを取ったシャープは、優位性がある8Kを戦略の中心に据えたのだ。>と思い切った選別をしているようにも見えます。

 

しかし、8Kには、放送局も多大な投資が必要で二の足を踏み、視聴者としても既存配線を使えないおそれとか、大型すぎて日本の住宅に不向きとか、問題を抱えているようです。

 

実際、鴻海本体は有機ELを追求する姿勢を変えていないといった記事があったと記憶しています。これまた微妙な状況でしょうか。

 

変転下では、経営危機で大量退職となったメンバーでチームSをつくり、新たなビジネスを始めている状況を取り上げています。有機ELの研究者で、それお下敷きとしてスマホとつなぐアイデアを商品化しようとしています。まさに元シャープマンらしい、アイデアではないでしょうか。

 

<チームSを束ねる代表取締役の高嶋晃さん(58)は、今のシャープ社内の雰囲気が心配だ。入社した1984年ごろ、社員の平均年齢は27歳前後で「『とにかく何でも挑戦してみろ』という自由な社風が好きだった」と振り返る。希望退職を経て、現在の平均年齢は43歳を超えている。>

 

そのような若い、熱意溢れる人材を獲得し、社内で創造力と活気で溢れる職場として、クリエイティブな人材を培養できるか、それが試されるのでしょう。

 

すでにこの買収による大きな道筋は見えてきたようで、楽観的かもしれませんが、光明が窺えます。

 

これに対し、東芝はどうでしょう。毎日記事は、和解報道を半日遅れたように思うのです。日経をはじめ他社は早々と和解を速報していました。これまでかなり丁寧に東芝とWDの対立を報道してきたのに、この和解は寝耳に水だったのでしょうか、あるいは私が見落としたのでしょうかね。

 

少なくとも<東芝、WDと和解再建へ前進も再成長見通せず>は周回遅れでした。いや、毎日記事を読んできた私も、まさか急転直下で来年3月のずっと前に妥協するとは思えなかったのです。

 

和解の骨子は<双方が全ての法的措置を取り下げる。東芝メモリの製造拠点、四日市工場(三重県)で協業関係を続け、2021年以降に稼働する岩手県北上市の新工場でも協業する。>

 

WDが訴訟による徹底抗戦を回避した一番の理由は<「メモリー製品を入手できる体制を確実に整えることを重視した」と説明。>ということのようですね。メモリー事業は成長産業で、新たな投資に参入できないと置いてきぼりになり、それを焦ったWDが振り上げた斧を下げるしかなかったのでしょう。

 

とはいえ東芝は、古屋敷尚子記者が指摘するように<経営再建に向けて前進した形だが、稼ぎ頭の東芝メモリの売却によって東芝の「稼ぐ力」は大幅に下がり、再成長への具体的な道筋はなお見通せない。>というのが厳しい現実ですね。

 

つまりは、東芝には成長分野は残っていない状況ではないでしょうか。<東芝は東芝メモリの売却で営業利益の約9割を失い、かつて半導体とともに「2本柱」だった原発は海外から撤退。成長事業とされた医療機器を手がける東芝メディカルシステムズも既にキヤノンに売却した。今後は、鉄道システムやエレベーターなどを展開する社会インフラ事業、国内の原発や火力を含むエネルギー事業を中核に据えるが、「大幅に成長できる分野ではない」(アナリスト)のも実情だ。>

 

そして残ったのは口出しする投資ファンドですね。<東芝の増資引受先の60の海外投資家には、旧村上ファンド出身者が設立したエフィッシモ・キャピタル・マネージメントなど「もの言う株主」がずらりと並び、東芝幹部は「経営の重要な判断に口を出されることも増えるだろう」と身構える。>

 

先の毎日記事<米ベインキャピタルWDとの和解に自信 東芝メモリ買収>では、すでにベインキャピタルがこの道筋を見通していた可能性が高く、同社のシナリオで動いているよう思えるのです。

 

このファンド日本代表は<協業先の米半導体大手ウエスタン・デジタル(WD)が、東芝メモリ売却に反対して法的措置に出ていることに対しては、「協業の条件などを提示することで、和解できる」と自信をみせた。>と2ヶ月前に見通しを明らかにしていました。

 

しかも代表の杉本氏は<買収完了後の東芝メモリの経営については、現在の経営陣が引き続き主導権を握り、成毛康雄社長が続投する方向だ。ただし、杉本氏や外部の人材を社外取締役に就けることで、経営を監視するという。>としっかりと手綱の緒を引き締めており、東芝経営陣は傀儡に近い状態になるおそれすらありえますね。

 

これでは、東芝の真の意味での再建を担うことができる意思決定組織があるのか、不安です。投資ファンドは短期利益を中心に考えるのが一般で、市場と製造工場をもつ鴻海による倍出とは大きく異なることになるでしょう。

 

やはり東芝の選択は、これからよりいっそう厳しい現実にさらされることになりそうです。経営改善と言った本来的な事がいつまでも見通せないような懸念を覚えます。

 

むろん白い騎士となって正義の味方を発揮することもありえますが、ダークナイトでもいいですから、問題を解消して立て直しを図ってもらいたいですね。

 

資料がないなか、適当に記事を読んで書いてみましたが、すっきりしません。

ちょうど一時間が経過。今日のところはこの辺でおしまいとします。また明日。


「山のきもち」考その5 <「見直される木の力」と「自然資本の考え方」>  

2017-12-15 | 農林業のあり方

171215 「山のきもち」考その5 <「見直される木の力」と「自然資本の考え方」>

 

『山のきもち』で著者山本悟氏が山をどのようにとらえているか、注視しながら読んでいます。きもちを思いやる人がどのような場合でも前提ですね。人といっても多様ですね、木が社会の中で活かされるというとき、いわゆる川上から川下まではもちろん、エンドユーザーからその廃棄ないしは代替利用まで視野に入っています。

 

とはいえ、やはり木が中核でしょうか。木の持つ価値をどうみるか、長い歴史があり、その一部をうまく整理して切り取っているようにも見えます。それは「木の力」という形で力強く指摘されています。他方で、木という一つの個体に注目する以上に、木を取り巻く生態系全体を含んだ自然について、「自然資本」という括りで、いわゆる経済的価値を中心にしつつ、非経済的価値にも目配りした視点を用意しています。ではそのような理解で、今回は2つのメガネでみてみようかと思います。

 

山本悟氏は、「木の力」あるいは「木の底力」として、従来の常識的な見方を正す形で、その実力や多面的に機能を取り上げています。

 

まず、従来の常識的な見方としては「①弱い、②腐る、③燃える、④くるう」をあげてつつ、それらは今見直されつつあることを指摘します。

 

その弱さという面では、「木材は鋼鉄の4倍の強度がある」ということです。伏谷 賢美著『木材の物理』(文永堂出版刊)によると、「木材とコンクリート、鋼について、圧縮力を示す圧縮強さ(kgf/c を比較すると、木材は、1 c㎡当たり380kgfで、コンクリート(704kgf) の半分、鋼(8,160kgf)の約20分の1の強さしか持たない。我々の感覚通りの結果だ。」と単純比較というか、面積単位で比較すると、弱いと言えるわけです。

 

両者の比重は違いますね。それで今度は「材料を、同じ比重で比較する必要がある。そこで、圧縮強さを比重で比較(比圧縮強さ)するとどうなるか。木材は826で、鋼(1030) には及ばなかったものの、コンクリート(282) 3倍の強さがあった。」

 

鋼は用途的には競合しないともいえますので、競合するコンクリートと比較すると木材が3倍の強さがあるというのですから、これは驚いてもいいように思います。なんか義務教育の教科書もこのような実際に応用できるような視点がもう少し欲しいですね。余分な事ですが。

 

これは圧縮力ですが、こんどは引張り力を試すと、面白い結果が出ています。面積単位で比較しても、「引張強さ(kgf/c) は、木材は、1㎡当たり1,060kgfで、コンクリート(41kgf)

26倍の強さがあったものの、鋼(4,680kgf) 4分の1しかなかった。」とコンクリートよりも格段の引張り強さはあるわけですね。しかも比重で比較すると、「木材(2,300) は、鋼(592) 4倍、コンクリート(16) に至っては、144倍の強さがあった。」驚くべき数字ですね。

 

つまりは「軽いわりに強い」という特徴を木材が持っていると言うことですね。それでこれを応用すれば、「例えば、木造の建築物をより高層にした場合、上部の建築物の重量を支える基礎は上部が軽い分だけ規模が小さくてすむ、というのだ。基礎を設けるために、それほど深く掘らなくてもよく、コストが削減できる。」ということになります。

 

カナダ滞在の20年以上前、中高層の木造建築が次々と建てられていたのを思い出します。カナダは自然資源が豊かで、木材もその一つ。それを早い時期から戸建て住宅だけでなく、中高層の集合住宅やビル建築にも活用してきた歴史があります。建築現場の人はよく木材の力を知っていて、中高層化に地元木材を活用してきたわけですね。

 

わが国の民家もそういった木材の性質をうまく活用して明治以降の建築でかなりの規模の建築物にも大工さんがうまく活用して耐震性のある木造をしっかり作ってきた伝統があったのでしょう。それがいつの間にか、法令の制限もあって、木材の有効活用がされてこなかったように思います。

 

また、「丸太は腐らず、液状化を防ぐ」と山本氏が指摘していますが、一定の条件の下で極めて利用価値が高いわけです。一般的には、たとえば倒木がいい例ですが、木は微生物により分解して物質循環を通して生態系を維持している一員ですね。ところが、最近よく話題の木簡は700年以上も前のものがそのままで残っていて、考古学や歴史がの常識を変える発見が話題となっているように、腐らないというのですね。「水に漬けると」の条件ですね。この表現もちょっと綾がありそうですね、一定の水分条件下でしょうか。

 

山本氏は東京駅や新潟駅に打ち込まれたカラマツの杭のおかげで、液状化の被害を受けていないことを指摘しています。これは軟弱地盤対策だけでなく、護岸防御や沢をわたる道路法敷などにも疲れてきた木材利用の歴史からは、昔から常識だったのでしょう。だいたい、大畑才蔵が行った灌漑事業の要諦の一つ、取水口はまさに河川の中に木製で作っていたわけで、木種によってはどれだけ耐水性があるか、昔の人はよくわかっていたのだと思います。

 

環境保全機能で言えば、茨城のアサザプロジェクトは、霞ヶ関護岸対策として粗朶を間伐対策との一石二鳥ということで、90年代から実施しています。これはたしか国交省も支援していて、緑の公共事業とも言える内容かと思います。

 

ところで、こういった丸太杭の液状化対策への活用はひろがっているようですね。東日本大震災では、浦安など東京湾岸の埋め立て地は液状化による被害で大変だったわけです。当時私の知人の自宅があることから心配して連絡したら、トイレが使えない状況が長く続いたそうです。なんどか泊まらせてもらいましたが環境の良いところですが、埋め立て地はやはり注意が必要だと痛感しました。

 

木杭の効用がわかってか、一部では直径15cmの細いスギ・カラマツを13000本以上を分譲地1.3haに打ち込んで地盤強化したとか、利用促進が進められているようです。まだ全体には浸透していないようですね。

 

この丸太杭の活用が本格的になれば、通常はこの径くらいだと、C材以下の扱いでしょうから、バイオマスとかチップに使われるより、有効活用になるように思うのです。

 

「木は燃えやすいか」と言われると、当たり前との返事があちこちから上がってきそうです。最近話題になった新潟県糸魚川市大規模火災などを見れば肯けますね。政府がしきりに木造密集地帯の解消をと音頭をとってその解消策を何十年も前から言ってきたのも、木は燃えやすいとの理解からですね。

 

しかし、昔、風呂焚きをした経験があったり、今では暖炉や薪ストーブの経験があると、まず生木は燃えにくいというのは常識ですね。熱帯林の焼き畑でも、焼き終わった後を見ると、結構、枝葉がなくなったものの、木がしっかり立ち残っている光景を見ることができます。火に強いのですね。では、アメリカで毎年各地で起こっている大規模森林火災はなぜというのは、話すとながくなるでしょうし、いい加減な記憶なので、簡単にしておきますが、乾燥しすぎているのと、元々水分が少ないところに植林して降雨も少ないところで起こっているように思います。とはいえ、木の種類によって燃えることにより発芽更新が起こるので、自然の循環として放置される場合もあるようです。

 

どうも余談が続き、一向に終わりません。今日はもう一時間経過してしまいました。

中途ですが、この辺でこのテーマは今日のおしまいとします。続きは明日以降です。