たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

小学生の体育は <組み体操事故 東京・世田谷区が賠償金 生徒側と和解>などを読みながら

2017-12-11 | スポーツ

171211 小学生の体育は <組み体操事故東京・世田谷区が賠償金 生徒側と和解>などを読みながら

 

午前中は調停事件で家裁に出かけて2時間過ごしました。午後は交通事故や労働事件、成年後見の件などで、打合せなどしていると、いつの間にか5時近くになっています。今日は連載?ものは休止して、本日の話題だけにしようかと思います。

 

さて今日の毎日ウェブ情報では上記のニュースが出ていました。最近よく話題になる組み体操事故ですが、和解解決の中で改善策が盛り込まれている点、その被害が脳脊髄液減少症であることから、少し注目しています。

 

上記記事によると、<小学6年の時に組み体操の練習で転倒して脳脊髄(せきずい)液減少症となり、後遺症が残ったとして、東京都世田谷区の中学3年の男子生徒(15)と両親が、区に損害賠償を求めた訴訟は11日、東京地裁(鈴木正弘裁判長)で和解が成立した。>とのこと。

 

和解の骨子は<区が事故後の対応の不十分さを認めた上で「遺憾と謝罪の意」を示し、賠償金として1000万円を支払う内容。再発防止策として、区内の学校で組み体操を行う場合に指導者が事前に実技研修を受けることなども盛り込まれた。>

 

この内容だけでは、脳脊髄液減少症(現在の厚労省見解・ガイドラインでは脳脊髄液漏出症とされていますが、裁判所の認定に従ったと思われる記事の表現を維持します)の程度や訴えた損害額がわかりませんので、どの程度の後遺症との心証を裁判所が抱いていたかは推測するしかありませんが、和解金が1000万円ですので、後遺症と認定されたことは確かだと思われます。しかも後遺障害等級12級よりも重い、下位の等級の心証であったのではないかと推測します。

 

訴状での請求内容が明らかではないですが、相当重い内容で、請求額も等級5級とか7級程度を基礎にして損害算定していたのではないかと思われます。

 

父親の会見では<「賠償金だけの判決より、再発防止につなげるため、和解を選んだ。今後、区が本当に行動できるか見続けていきたい」と話した。>ということですから、判決で請求額に近い損害金を求めるより、再発防止策という一般予防に力点を置いた解決策で、譲歩したのではと思われるのです。

 

たしかに脳脊髄液漏出症との診断に争いがなければ、通常、後遺障害等級も相当重くなり得ますし、労働能力喪失率もその分高くなり、逸失利益額が大きな金額となり得ます。和解金1000万円ということから、相当譲歩した金額としても結構な額ですので、やはり残念ながら重い症状ではないかと心配します。

 

それではどのようにして起こったのかですが、記事では<生徒は2014年4月、体育館で倒立を練習した際、補助者の同級生が受け止められず転倒。後遺症が残ったとして今年2月に区と担当教諭を提訴していた。>というのですから、少し驚きです。

 

組み体操としてのピラミッドやタワーでは危険性がかなり認識されてきていますが、単に倒立の練習で倒れただけで、重傷の後遺症が残ったわけですから、これは関係者の多く想定していないのが普通ではないでしょうか。

 

具体的な倒立の練習の仕方や、受け止めにあたった生徒と倒れた生徒の身長・体重・運動能力などよくわかりませんが、それでも状況によっては起こりうると思われます。また、脳脊髄液漏出症自体、どの程度の外傷、外圧により生じるかは、解明されていないように思います。

 

しかし、漏出症との画像診断がされるような症状は大変重く、ブラッドパッチ(自家血硬膜外注入)などにより一定の改善効果が認められるものの、一生苦しむ可能性がありえるでしょう。

 

その意味では、小学生や子どもの体育のあり方、体操だけでなくバスケや柔道など、従来の指導方法について、こういった事故をよく検証して、あらゆる体育の練習で起こりうる事故を回避するよう、指導体制を見直す必要を感じています。

 

それにはこの事故などは、関係者の匿名性を確保しつつ、できるだけ詳細に公表して、どのような練習方法の中で起こったかを、刑事事件でいえば時系列を秒単位で、関係者の四肢の動きをしっかり再現して、そのときの指導者の言動も含めることが大事だと思います。労災事故の事例報告では、大ざっぱな事故報告がおざなり的になされることが少なくありません。それではなんのための報告か疑問さえ浮かびます。再発防止をしっかり注意喚起する意味は具体性が必要です。

 

その点、この件は訴訟で相当詳細な事実関係が示されていると思われます。むろん判決が出ていないので、双方の対立する事実関係となりますが、それを考慮しつつも、学校側の安全配慮義務を認めた形の和解が成立しているのですから、それにそった事実関係の整理を心がければできうることだと思います。

 

ところで、倒立といった案外、危険性を感じない体操でも危険がはらんでいることは以前からある程度は知られていることです。

 

たとえばこの<組み体操低い技も骨折注意…ピラミッド、タワーより多発>という記事は、その一例でしょう。

 

<2016年度に小中学校の運動会などで行った組み体操中の事故で、九州・沖縄・山口9県で少なくとも39人の児童生徒が骨折していたことが分かった。その6割にあたる23人は、高さがあって危険とされる技の「ピラミッド」や「タワー」ではなく、低い位置で2人1組で行う「補助倒立」などの技で骨折していた。スポーツ庁はピラミッドなどへの注意を呼びかけているが、専門家は「簡単とされる技も油断はできない」と警鐘を鳴らす。【杉山雄飛】>

 

ここでは骨折ということが取り上げられています。その程度の事故は容易に想定できるはずです。それが今回のような脳脊髄液漏出症といった重大な後遺症となると、話は違います。

 

この記事では<スポーツ庁は16年3月、都道府県教委などへの通知で「タワーやピラミッドは段数が低くても事故が発生している。安全が確認できない場合は実施しない」と注意を呼び掛けたが、サボテンや補助倒立などに言及していない。>とスポーツ庁の取り組みを紹介しつつ、その対象が限られている点を指摘しています。それはその通りですが、骨折の場合は、それも大変な事故ですが、まだ容易に回復します。今回のような事例は想定外でしょう。そこに着目する必要を感じます。

 

また、<漫画で解説組み体操は危険!?の巻>は、体操の危険性・問題点をうまく解説しつつ、それ以外のバスケや跳び箱競技の方が負傷事例が多いという統計数字の取り上げも重要でしょう。

 

子ども、小学生の身体は(心も)最近とみに弱くなっているようにも思えます。骨折しやすいのではと思ったりします。私が子どもの頃は外で遊んでばかりいました。相撲、跳び箱、鉄棒、水泳などなど、それでも骨折をしたことがありませんでした。階段の少しでも上から飛び降りるという競争?もやっていましたが(これは先生が許さない危険な遊びですね?)、おそらくこういう競争は得意でしたが、事故もなく過ごしました。

 

それはなぜか、わかりませんが、食べ物や環境も影響するのでしょうか。そういう子どもの全体像や環境をよくわかった上で、指導者は体育を指導する必要があると思うのです。それにはきちんと指導体制をつくり、指導カリキュラムを受けた教員なり指導者のみが指導できるシステムを確立する必要を感じます。

 

スポーツ庁、すでにいろいろ取り組んでいると思いますが、教育分野を文科省にのみ委ねず、また、オリンピック・パラリンピックなどに出場するようなトップクラスのアスリートを中心にするのではなく、子どもたち全般に対してこれから長い人生を健康に生きることのできることを安全な方法で提供できるような取り組みをやって欲しいと思うのです。

 

そろそろ一時間となりました。今日はこの辺でおしまい。また明日