たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

高齢者雇用の未来 <はたらく 「シルバー人材」会員を派遣>などを読みながら

2017-12-18 | 健康に生きるとは

171218 高齢者雇用の未来 <はたらく 「シルバー人材」会員を派遣>などを読みながら

 

昨夜もAIなどの技術革新を受け、BS1で“SPORT INNOVATION”という興味がそそられる番組がありました。ラグビーはとても面白いのですが、実際のところ、醍醐味であるスクラムの妙味とか、ラインアウトなどTVを見ていてもよくわからず、ファールを含め試合の展開が大ざっぱにしか理解できない(ただ知らないだけの部分もありますが)で、フラストレーションが溜まることもあります。

 

昨夜の番組では、司会者のぱっくんも驚く立体的かつ、スクラムなど選手の脇で見ているような臨場感を味わえ、しかも各選手のある種骨格線も読み取れ、その改善策も検討できる画像技術が出現していました。ラインアウトの高度なテクニックも細切れにしたり、全方向から見ることができるため、その戦術の有効性も理解でき安くなっていました。

 

おそらくすでに陸上競技などで取り入れられている骨格線など別の分析画像なども使えば、さらによりビジュアルに問題点の把握と改善策が検討できるようになるのではと期待したところです。

 

このように日々放送される多方面でのAIを含む先端技術は、いつしか従前の労働スタイルを不要にしてしまうのではないかという議論・不安も一方で主張されます。

 

一面で正しいと思いますが、一面では妥当しないようにも思うのです。

 

ちょうど今朝の上記の見出しの毎日記事がありましたので、それを参考に考えてみたいと思います。

 

私はこれまで一度シルバーの方に草刈作業をお願いしたことがあります。体調不調で大鎌を振れないどころか、普通の鎌ですら持てなくなったときです。田舎では隣接農家の手前もあって草が繁茂したのを放置しておくことはなかなかできません。

 

4反くらいの畑の草刈を依頼したら、5,6人の人が来て2日くらいかけてきれいにしてくれました。刈払機を使ってやるのですが、シルバーさんなので、まじめにやってはいても、刈払機の歯は危ないですので、慎重に、時間をかけてやっていました。

 

私の場合は一人で全体で1町未満程度を草刈りしていましたが、毎日汗びっしょりで終わるとしばらく何もしたくない状態になるほど精魂尽き果てる状態でした。刈払機だとそこまでなることはないですが、あの騒音・振動と油臭さ、エネルギー消費などを理由に、大鎌が私には合っていました。

 

ともかくそれだけの体力が必要でしたので、体調不良のときはシルバーさんの助けはなによりでした。

 

で、田舎ではもっぱら草刈がシルバーさんの仕事かな、なんていい加減な感覚でいましたら、この記事ではいろいろあるのですね。

 

まず、その働き方も大きく変わりつつあるようです。西田真季子記者の取材です。

<働くことを通じたシニア世代の生きがい作りのために始まった「シルバー人材センター」が、「本格的な仕事を提供する場」へと変わりつつある。介護や保育など人手不足の分野を中心に、センターからの「派遣」として働く人が増えている。>というのです。

 

<シルバー人材センターからの派遣が増えたのは、2015年の労働者派遣法の規制緩和で、60歳以上は派遣期間の制限を受けないことになったからだ。センターは定年がないため、90歳を過ぎた会員もいるなど長く働ける。>

 

そもそもシルバー人材センターは、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に基づき、都道府県知事によって指定され、地域毎に1つずつ設置されている高年齢者の自主的な団体で、臨時的・短期的または軽易な業務を、請負・委任の形式で行う公益法人です。

 

業務内容は同法38条で大別して、①臨時的かつ短期的な就業の機会を確保し、及び組織的に提供すること、②臨時的かつ短期的な雇用による就業又はその他の軽易な業務に係る就業(雇用によるものに限る。)を希望する高年齢退職者のために、職業紹介事業を行うこと、③その講習を行うことです。①は雇用以外、②は雇用です。

 

上記の改正は②の職業紹介の分野が広がったと言うことです。

 

改正の成果はすでに実績として現れているようです。<12年に1万4753人だった派遣の就業者数(実人数)が16年には5万3410人まで増えた。派遣契約では、最低賃金や労働者としての権利が守られる。>

 

その業務範囲も多様のようです。<業務は多岐にわたる。スーパーやコンビニエンスストアでの品出し、レジ業務、清掃、総菜の調理補助など、地方や中小零細の人手が集まりづらい企業からの希望が多い。>そして<都市部では介護や保育業務のニーズがある。>

 

さて受け入れ側はどうでしょう。

<埼玉県北本市の特別養護老人ホームでは、市のセンターから20人が派遣されている。施設職員は「人手不足で、なかなか新人が来ないなか、シルバー会員がいてくれて助かる。年代も入所者に近く、話し相手になる」と歓迎する。>といいことずくめのようにも見えます。

 

保育現場でも期待されているようです。

 

このようにシルバーさんへの期待が高まる中、課題は人材不足と言うことのようです。それは私のようなシルバー事業に対する誤解も大きな要因と思われます。それは働く側、依頼する側いずれもでしょうね。

 

<仕事が拡大するシルバー人材センターだが、課題は人手不足だ。60歳以上人口が増加し続けているのに、会員数は09年をピークに減少傾向にある。定年年齢が上がり、企業で働き続ける人が増えているうえ、シニア世代が楽しめる余暇も増えた。一方で、少しでも稼ぎたい人にとっては、労働時間の制限がネックだ。会員不足で、仕事の依頼がセンターにあっても断るケースもあるという。

 センターでは、高齢者が集まる場で説明会を実施したり、登録までの手続きを早めたりするなど人材確保の努力をしており、成功事例を全国で共有している。福島部長は「草むしりなどがシルバーの仕事で、ホワイトカラー系の仕事はないという大いなる誤解がまだある」と語っている。>

 

では実際にどんな業務範囲があるのかについて、<全国シルバー人材センター事業協会の シルバー人材センターで行っている主な仕事>を見ますと、驚くほど多様です。地域によって異なりますから、どこのセンターでもできるわけではないので、そこは注意が必要でしょう。

 

技術分野

 家庭教師 学習教室の講師 パソコン指導 翻訳・通訳(英語) 翻訳・通訳(英語以外) 自動車の運転

技能分野

 庭木などの剪定  障子・ふすま・網戸の張替え 大工仕事 ペンキ塗り 衣類のリフォーム 刃物とぎ 門松・しめ縄づくり

事務分野

 一般事務 経理事務 調査・集計事務 筆耕・宛名書き パソコン入力

管理分野

 建物管理(ビル、アパート・マンション管理など) 施設管理(スポーツ、遊戯施設管理など) 駐車(輪)場の管理

折衝外交分野

 販売員・店番 配達・集配 集金 営業 電気、ガスなどの検針

一般作業分野

 除草・草刈り 屋外清掃 屋内清掃 包装・梱包(封入、袋詰めなど) 調理作業(皿洗い、配膳など) 農作業(種まき、水やり、収穫など) エアコン・換気扇の清掃 チラシ・ビラ配り 荷造・運搬

サービス分野

 家事サービス(掃除、洗濯、留守番など) 福祉サービス(身の回りの世話、話相手、介助など) 育児サービス(子守、送迎など)>

 

さてこの業務範囲も、一応のものと言って良いと思います。法律上の「臨時的かつ短期的な」業務であれば、さらに拡大しうると思います。それは高齢者(あ、私もそうですが)の気持ち次第ですね。私も弁護士業を辞めて、シルバーさんで使ってもらえるよう頑張ることも考える時期にいずれは来るのかもしれません。いや、使い物にならないとことわられるかもしれませんが。

 

私の場合はできれば、ターシャ・テューダーさんのような庭造りが終活かもしれません。無理かな。でも理想です。

 

今日はこの辺でおしまい。また明日。

 

 

 

 


心安まる・まちづくりとは <風知草 日中、四川省の場合=山田孝男>などを読みながら

2017-12-18 | 心のやすらぎ・豊かさ

171218 心安まる・まちづくりとは <風知草日中、四川省の場合=山田孝男>などを読みながら

 

歴史的遺産を公的に認定したり顕彰することはそれ自体、先祖が行ってきた郷土形成への意義を再評価し、その歴史的価値や人の努力を蘇らせるなど意義があることと思うのです。ただ、現代的な意義を考えれば、その遺産が単に登録されたり、顕彰されたりすることだけにとどまるのでは、その価値を本当に見いだすことにはならないように思うのです。

 

『論語』の温故知新という言葉が長く人の心に響いてきたのは、過去のそういった偉業の歴史的価値・思想的価値などから、新たな知見をくみ取り、現代に活かす

 

その中国といえば、一昔前の日本のように、この20年あまりはスクラップアンドビルドに邁進し、日本と違うのはある種強制的立ち退きという強権的手段で、伝統的なまちなみ景観をも破壊する暴挙も行われてきたように思われます。近代的なビル群、マンション群で外観的には美しいですが、そのために失ったものも大きいでしょう。

 

遺産となるべきものが、どこかに保存され、生活と切り離された途端、生活の歴史的系譜がある基盤を失い、より所への喪失感をずっと引きずるように思うのです。それがわが国の開発という名で、そこに住み続けてきた人にとっての歴史的価値・心の自然史的価値を失わせてきたように思うのです。

 

ところが、最近は新たな動きもあるようです。上記の山田氏のエッセイは、その一端を活写しています。

 

まず一般的な新しい流れを指摘しています。<日中関係は改善基調で推移しているようだが、環境デザイナー、石川幹子・中央大理工学部教授(69)の最近の経験も、新しい流れを感じさせる。>

 

<2008年、石川は、中国四川大地震の復興グランドデザイン国際コンペで入選したが、なぜか入選作がお蔵入りになった。

 ところが--

 最近、中国側から「あらためて説明を」と要請があり、石川は今月25日、訪中する。招聘(しょうへい)元によれば、今年3月、習近平国家主席が四川省農村保全を指示。7月、同省が石川案での復興を決めたという。>

 

四川大地震のときは、耐震構造が確保されていないと思われるビルが跡形もなく倒れ、多くの犠牲者を出したことが思い出されます。

 

で、コンペの対象となった都市、すごい歴史的遺産があるところだったのです。

<震災復興計画を国際公募したのは被災都市の一つ、都江堰(とこうえん)だった。省都・成都の西に位置する市で人口およそ60万人。

 チベットへ続く山々に発した岷江(みんこう)の急流が四川盆地へ注ぎ込む扇状地。紀元前3世紀に整備された堰(せき)(今も使われている治水・利水施設。世界遺産)が市の名前になっている。>

 

わが国の灌漑事業は、いつから本格的になったのか、江戸時代からなのかよくわかりませんが、中国は紀元前3世紀にすでに大河に大きな堰を設けているのですね。技術力・創造力が違いますね。

 

たしか以前、NHKで<都江堰>の灌漑事業については、放映されたことがあり、見た記憶があります。わが国では7世紀後半、斉明天皇が大きな石造りの運河的なものを作ったということが指摘されていたと思いますが、これは灌漑用水路ではないと私は思っています。その前後、わが国では、中国のような巨大な運河や灌漑用水路は、江戸時代まで生まれなかったのではないかと思っていますが、勉強不足ですので、教えていただければ幸です。

 

ここから石川氏の案が登場します。それは歴史的に形成されてきた土地利用を保全しつつ、現代的なまちづくりを行うもので、スクラップアンドビルドとは異なる内容です。

 

<同僚と都江堰の農村を調査した石川は、この地方独特の、「林盤(りんぱん)」と呼ばれる集落の形態保全--を構想の核に据えた。

 「林盤」は、扇状地の網の目状の水路の間に無数に散らばる。ひとかたまりの林ごとに伝統的な家屋と田畑、家畜が溶け合う共同体で、一つの「林盤」の人口は50人から100人。大地震で家屋は崩れたが、水路と林は無事だった。石川はそこに着目した。>

 

099月に石川案は報告書としてまとめられたのですが、そこから動きがとまり、新規開発の波が農村にも及んできた影響ではないかと言うのです。

 

ところが事態が再び動き出したというのです。

<再開発の波がとうとう農村へ迫ったこの秋、流れが変わった。習近平の中国は農村復興を国策の柱に据えている。習は10月、第19回中国共産党大会の活動報告で「農業・農村の優先的発展」「20年までに農村の貧困脱却」「環境、生態系の保全」を強調した。>

 

習近平氏は、経済成長一本槍だった中国を、パリ協定に合意したり、大気汚染対策に積極的に対応するなど、70年代日本政府のように大きく舵を切ったようにもみえますね。

 

さてこの石川氏のキャリアも興味深いです。

<石川は宮城県出身。東大農学部、米ハーバード大大学院で造園、環境デザインを学んだ。専業主婦だった42歳の時、東大に戻って博士号取得。工学院大、慶応大、東大大学院の教授を務め、13年、中央大へ。

 この間、東日本大震災や熊本地震の復興支援に関わる一方、独創的な環境デザインで内外の設計コンペを連覇している。>

 

専業主婦の力、侮るべきではない見本でしょうか。専業主婦が十分に力を発揮できるように環境整備すれば、彼女たちは専業の終身雇用男性以上に創造的な仕事をする可能性を秘めているように思うのです。

 

その石川氏の言葉が光ります。

<「それぞれの場所に歴史があり、蓄積がある。土地そのものに答えが埋め込まれています。土地に刻まれた歴史、人の思いを読み込む努力ですね。長い歴史から見れば、私たちの存在はほんの一瞬です。その瞬間に何をなすべきか、過去を見て未来を思えば自然に決まる。無理はしません」>

 

「土地に刻まれた歴史、人の思いを読み込む努力」とはいい言葉ですね。林盤という生活拠点を活かすことで、そこに住んできた人はその存在価値を古代からの歴史的系譜を改めて感じながら、存在意義を見いだし、それだからこそ、心も安らぐのではないかと思うのです。

 

この言葉から、ついあの映画「柳川堀割物語」を思い出しました。監督高畑勲氏は、土着の精神、その堀割の成り立ちや機能を見事に活写しつつ、その再生にかけて一市役所の職員の殻を抜け出した広松伝氏に光を当てたといえるでしょう。東京弁護士会時代、たしか30年くらい前、この映画を上映しました。古い東弁会館に200人以上が詰めかけ、皆さん感動を分け合った思い出があります。

 

そのような感動を、中国の中で、1000年を超える歴史遺産を活かすまちづくりを通して、きっと中国人と分かち合えることを期待したいです。

 

歴史遺産はただ、見て鑑賞するだけではその真価を見いだすことができないでしょう。現代に活かす価値を見いだしてこそ、意味があると思うのです。

 

石川氏の成功を祈りたいと思います。