外苑茶房

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ハードとソフト

2012-02-22 22:47:12 | ビジネス
ソニーの新社長である平井一夫さんは、レコード会社のCBSソニー(現在のソニー・ミュージッ ク・エンターテイメント。SME))の社員から、プレステのソニー・コンピューターエンターテ イメント(SCE)を経て、親会社であるソニーの社長に登りつめたという異色の経歴をお持ちです。
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ソニーは、永らく「ハードとソフトの融合」というビジネス・モデルを追求しています。

ここでいう「ハード」とは、ソニーが製造する電子機器類、「ソフト」とは、ソニー・グループが 保有する映画、音楽、ゲームなどのコンテンツを指します。

その意味で、平井さんの社長への抜擢は、このビジネス・モデルの方向性に適ったものだといえる でしょう。

確かに、プレーステーションという「ハード」と、ゲームという「ソフト」の融合という成功体験 が、ソニーにはあります。

しかし、最近の経済誌の報道を読んでいると、この「ハード」部門と「ソフト」部門との間に利益 相反があるという指摘がされています。

すなわち、電子機器類を販売する部門は、ソニー・グループの有する映画や音楽のコンテンツに よって差別化したいと考えている。

一方、映画や音楽のコンテンツを売る部門は、ソニー製品を持つ人だけに顧客層を限定されてしまうのは、正直なところ迷惑な話。

あらゆるコンテンツに対してオープンなスタンスをとるアップル陣営の好業績をみる限り、ソニー の掲げる「ハードとソフトの融合」という戦略は、言葉の美しい響きとは裏腹に、その実現は簡単 なことではないように思えてきます。
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ところで、「ハードのソフト化」という表現を、最近の新聞で読みました。

ここでいう「ソフト」は、コンピュータやスマートフォンで利用されるソフトウェアを指します。

すなわち、これまで電子機器として個々に製造・販売されていた携帯電話、デジタル・カメラ、携帯用音楽プレーヤー、携帯ラジオ、、電子辞書、電子手帳などのハードウェアの機能が、スマートフォン上のソフトウェアで代替されてしまい、それらのハードウェアをユーザーが個々に買い揃えようとしなくなった。
すなわち、それらのハードウェアの市場の大半が消滅してしまった現状を、「ハードのソフト化」と表現しているわけです。

上記の商品群を眺めてみると、まさにソニーやシャープなどの日本の電子機器メーカーが得意としていたものばかりだと思いませんか?
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日本の電子機器メーカーの業績不振が話題となるとき、多くは円高、新興国の追い上げなどが原因として挙げられます。

テレビやパソコンの場合は、そのとおりでしょう。

でも、携帯音楽プレイヤーなどの上記商品群での敗因は、日本メーカー各社が個々の商品カテゴリーの中で多機能化を競っているうちに、ふと気づいたら、そのハードウェアがソフトウェアに代替されて、市場の大方が消滅していたということなのだと私は思います。
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行政やメディアが、日本の中小企業を支援しようというとき、「日本のモノづくり」という表現を、よく使います。

そのときの「モノ」とは、ハードウェアなのでしょうか。
コンテンツなのでしょうか。
あるいは、ソフトウェアななのでしょうか。

いずれにしても、時代の潮流を見据えた的確な事業戦略が各社にあってこそ、その意義があるというもの。

その戦略が的外れなものであれば、いくら行政が支援して現場が心血を注いでも、「支援策」は単なる「延命策」に終わるしかありません。

供給者の論理ではなく、また日本国内のユーザーをみるだけでなく、あくまでも先進国から途上国にわたる多様なユーザーの目線で、より安全に、より便利に、そして、より快適にするには、どうしたら良いかを、とことん突き詰めていく。

そんな不断の努力が求められる、実に厳しい大競争時代となったのですね。
Comments (2)
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