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7月1日(月): 天の川銀河に多くの衛星銀河!/ミッション別ページ

2024年07月01日 06時00分00秒 | 天文・宇宙

天の川銀河に予測を超えた多くの衛星銀河を発見!(すばる望遠鏡)

<前書き>: このところ、すばる望遠鏡の特徴を生かした大きな発見が続いています。今日の記事もその一つ。全文は下部のリンクから。

私たちの住む銀河系にはいくつの衛星銀河があるのでしょうか。これは長年、天文学者が抱えてきた重大な問題です。衛星銀河は、ダークマターの小さな塊にガスが集まり、そこから星々が生まれることで形成されたと考えられています。したがって、衛星銀河の数の問題は、ダークマターの性質、つまりその正体に関わっているのです。

<右上図>: おとめ座の方向で見つかった矮小銀河(Virgo III)の位置(左)とその星々(右;白丸で囲まれた天体)。矮小銀河には暗い星しかないため、星がまとまって存在している部分を探し出して、同定します。右側の図の破線の内側にメンバーの星が集中しています。

ダークマターの標準理論では、銀河系のような銀河の周りには千を超えるダークマターの塊と、それに対応する小さな銀河、つまり衛星銀河が存在すると予想されていました。しかし、これまでの観測では数十個の衛星銀河しか見つかっておらず、この数の食い違いは「ミッシングサテライト問題」と呼ばれてきました。この問題を解決するには、ダークマターの正体が標準理論と異なるもので塊の数がもっと少ないのか、あるいはダークマターの塊の中でガスから星が生まれる過程に問題があるのかを解明する必要があります。

この問題へのもうひとつの糸口として、まだ発見されていない暗い衛星銀河(矮小銀河)が、銀河系の遠方に多く存在している可能性も考えられていました。そのような暗い矮小銀河の探査に威力を発揮するのが、8.2 メートルという大口径を持つすばる望遠鏡と超広視野焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム;HSC)の組み合わせです。とても暗い天体を空の広い領域から探す上で、すばる望遠鏡と HSC は世界最強のコンビだからです。

研究チームは、HSC を用いて広い天域を観測する「戦略枠プログラム」(HSC-SSP)で得られたビッグデータから矮小銀河の探査を進めてきました。HSC-SSP のデータは解析後に順次公開されてきて、研究チームはこれまでおとめ座、くじら座、うしかい座の方向に次々と新しい矮小銀河を見つけてきました(それぞれ Virgo I、Cetus III、Bootes IV)。そして、今回、最新の公開データから新たに2個の矮小銀河(Virgo III と Sextans II)を発見しました。これらは全て太陽系から 30 万光年以上離れた距離にあることもわかりました。

HSC-SSP の天域には以前から4個の矮小銀河が知られていたので、研究チームによる発見を合わせると、合計で9個の矮小銀河が見つかったことになります。実はこの数は最新の理論で予想される衛星銀河の個数をかなり上回ります。

背景として、「ミッシングサテライト問題」を発端に、矮小銀河の形成を抑える過程の理論研究も展開されてきました。そして、最新の最も確からしい分析では、銀河系に全部で 220 個程度の衛星銀河があると予測されていました。これを HSC-SSP の観測天域と観測可能な明るさの限界に適用すると、3個から5個の衛星銀河が見つかることになります。しかし、実際には9個の衛星銀河が見つかったので、銀河系全体に換算すると、少なくとも 500 個の衛星銀河が存在することになってしまいます。今度は「ミッシングサテライト問題」ではなく、「衛星銀河が多すぎる問題」に直面することになりました。

これは、衛星銀河と同程度の大きさのダークマターの塊の中で、一体どのようにして星ができて銀河になるのかという基本的な物理過程の問題と考えられます。現状では星の形成にブレーキをかけすぎた結果になっているので、その過程を計算する精度が足りていないのか、あるいは、見落とされている物理過程があるのか、などを再検討する必要があります。ただ、少なくとも当初の「ミッシングサテライト問題」は解決できそうな状況で、ダークマターの標準理論が生き残れる状況になってきたと言えるでしょう。

<ひとこと>: 以下および詳細は下記リンクから。

<出典>: すばる望遠鏡

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