昨年秋に渋谷の坂巡りをし、何回か記事にした。その後も出かけたのであるが、記事にするのが遅れた。南平坂の記事を書いたとき、この坂につながる坂らしき道があることに気がつき、それから、ここが気になっていた。
地下鉄の渋谷駅から地上に出ると、駅周囲は工事中であるため、景観がかなり変わっており、一瞬方向を失うが、歩道橋の上り口を見つけ、246号線方向に向かう。246号線を越えて歩道橋から降りると、近くにそこから分岐した道があり、一車線の緩やかな上り坂になっている(現代地図)。ここが間坂である。渋谷区桜丘町24番と25番の間を南西へ上る。
この坂は、いつもの坂の本にはないが、ホームページ「東京23区の坂道」に紹介されている。「あいださか」と読む。このHPには渋谷のもう一つの間坂も紹介されている。スペイン坂近くにあるが、こちらは「まさか」とのこと。
坂下からしばらくはあまり特徴のない坂だが、ニッポンレンタカーのところで、左に緩やかにカーブしその上で右にまたちょっとカーブしている。ここまではビルの谷間の坂道といった感じであったが、ここから上側は左右に歩道が広くできており、ゆったりとしている。坂の途中で雰囲気がかなり変わるが、こんな坂も珍しい。右手(北側)にある高層ホテルの裏手(坂側)が公園風になっていて、そちら側が広めに感じられるせいでもある。このホテルの裏側にはもう一つ歩道があり、246号線の歩道につながっているが、坂道になっている。
渋谷は坂が多く、道玄坂や宮益坂が代表的であるが、これだけではなく、いたるところに坂があることはちょっと渋谷を散策すると実感できる。無名の坂が多いようであるが、ここは坂名がある。(あまり知られていないようであるが。)
坂中腹の左側に日本経済大学があり、この上側で緩やかに右に曲がっているが、そこから上はほぼまっすぐに中程度の勾配で上っている。休日であったためか、人通りが少なく、繁華街の道玄坂や宮益坂などとはまったく違う静かな雰囲気である。
坂名のいわれは不明であるが、間坂「あいださか」の名から連想すると、すぐ近くの246号線(または道玄坂)となにかとの間(並列)、または、246号線とその先のなにかとの間(直列)にあることから命名されたのであろうか。
坂と坂との間に新しい坂ができると、そこを中坂と命名するのが江戸期以来の伝統である(たとえば、九段坂と冬青木坂の間の中坂)。ここははっきりしないが発想が似ているように思われる。
しだいに勾配が緩やかになって、ちょっと右にカーブし坂上にいたるが、ここが四差路になっていて、右折すると、246号線である。坂下の246号線からここまでかなりの距離があるが、坂上が道玄坂上と同じ標高とおもわれ、道玄坂と同様に長い坂である。
戦前の地図(昭和16年)や戦後の地図(昭和31年)を見ると、この道に相当する通りがあり、現在、この間に246号線ができたため、かなり変わっているが、渋谷駅近くから南西へ延びていた。とくに、戦前の地図では、この道はこのへんの主要な道路であったように見える。
参考文献
横関英一「江戸の坂 東京の坂(全)」(ちくま学芸文庫)
山野勝「江戸の坂 東京・歴史散歩ガイド」(朝日新聞社)
岡崎清記「今昔 東京の坂」(日本交通公社)
石川悌二「江戸東京坂道辞典」(新人物往来社)
「古地図・現代図で歩く戦前昭和東京散歩」(人文社)
「古地図・現代図で歩く昭和三十年代東京散歩」(人文社)