日々是好舌

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ほろ苦き 春の味こそ 土筆飯

2017年03月11日 19時25分34秒 | グルメ
 春になると土手や野っ原のいたるところに顔を出すのがツクシである。ツクシといえば星野立子の「まま事の飯もおさいも土筆かな」という句を思い出す。平明で解りやすい一句だと思う。

 また、「土筆、誰の子、杉菜の子」というわらべ唄は誰でも一度ならず聞いたことがあるだろう。唄の通りツクシは木賊(とくさ)科の植物スギナの胞子茎である。胞子ということは即ち隠花植物ということであってスギナは羊歯植物の仲間である。

 ツクシの語源は澪標(みおつくし)からきたとする説が有力であるが、これには勿論異説も多い。ツクシは漢字で土筆と書くが、姿を筆に見立てたもので的確な表現だと思う。なお、定かではないがツクシを男性器に見立てた俳句もあったように記憶している。一方、親のスギナの語源は姿が杉に似ているから杉菜と呼んだという説が解りやすいように思うが、これにも諸説がある。

 スギナは庭や畑に蔓延ってなかなか手ごわい雑草となる。その理由は細くて長い地下茎にあって、地上部をいくら抜き取っても、地下茎を取り除かない限り、次から次へと生えてくるのである。また除草剤などにも比較的強いようである。スギナを根絶するためにはワラビの地下茎を細くしたような黒くて長い地下茎を残らず掘り起こして取り除く必要がある。

 初夏から夏の盛りにかけて青々と茂ったスギナを採取して水洗いしたのちに天日で乾燥したものを問荊(もんけい)といって利尿や淋病などの生薬にする。また、花粉症に効能があるとの説もあるが科学的な根拠が示されているわけではない。
問荊は少量を水で煎じて服用するのだが、病気の治療に用いるのは専門家の指導を受けるのが適切であることは言うまでもない。

 さて、ツクシの食べ方である。先ず、ツクシはなるべく未熟なものを選んで採取していただきたい。未熟なツクシは頭の部分が青くて広がっていない。反対に熟して胞子を散らしたものは急速に衰え、皺が寄ったりしているから見分けは簡単である。

 採ったツクシは関節の部分についている袴(はかま)を丁寧に取り除く。この際に未熟な頭の部分は残してよい。よく水洗いしてから笊にあげ水を切れば料理の準備完了である。軽く茹でてアクを抜いてからだし汁で煮たり、玉子で閉じたりするのが手っ取り早い食べ方であるが、天麩羅に揚げたり、佃煮にして保存する方法もある。

 また、少量のツクシを御飯に炊き込んで土筆飯として季節の風味を楽しむのもよい。ただし、ツクシにはアルカロイドやケイ酸などが含まれているので一度にたくさん食べるのは控えた方がよい。

 私が俳句の先輩のお宅でご馳走になった土筆飯は帆立貝柱の出汁が効いて実に美味であった。ちなみにツクシにはちょっとしたほろ苦さがある。

 最後にこれは蛇足である。江戸時代の静岡は幕府の直轄地であったがために駿府城には城主がいなかった。代わりに幕府の重役が城代や町奉行、
代官として赴任し、多くの勤番侍を統率していた。これらの勤番侍たちを慰労するために「土筆ぶるまい」という年中行事があったそうである。地元に住んでいながら「土筆ぶるまい」についての詳しい経緯がわからないのが残念である。

◆ つくしつむとて妻と野に出る  白兎




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2 コメント

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今年は未だ (ふきのとう)
2017-03-13 15:48:33
毎年摘んでいた「秘密の場所」が宅地造成でなくなり
今年は未だ土筆飯を食べていません。
近日に別の場所を当たり探してみる予定です。
この季節、長い事私の年中行事の一つなっている
土筆飯を食べないことには気持ちのどこかが空白となっています。
返信する
写真はお宅でいただいたものです。 (秋山白兎)
2017-03-13 19:46:23
こんばんは。
前の水路のあたりでは採れませんか。
大井川の堤防とかだったらあるでしょうね。たくさんは必要ありませんもんね。
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