日々是好舌

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リニアには 市民・県民 注視せよ

2014年01月27日 14時28分09秒 | 日記
 このところリニア新幹線がもたらす自然破壊を危惧する声が次第に高まりつつある。静岡市や周辺市町そして静岡県もようやくこの問題に本腰を入れ始めたようである。

 
 特に大井川下流域の市町にとって大切な水資源を失うことは死活問題であろう。

 
 前々回の記事でリニアのトンネル掘削に伴って大井川の水量が毎秒2トンも減少するということに触れた。毎秒2トンは日量17万2800トンであることも言った。この水量は大井川流域に暮らす約63万人の上水道取水量に匹敵するという。

 トンネルを掘ると地下水脈を切断したりもするが、多くの場合はトンネルが水抜きパイプの役目になってしまうのである。地滑り地帯などでは山の中腹へ水抜きトンネルを掘ったり、深井戸を掘ったりして地下水の水抜きをする工法が採用されている。

 それでは何故これほど大量の水が失われてしまうのかということである。
大井川上流の地形をイメージしていただきたい。リニアのトンネルが直下を通過する二軒小屋付近の標高は約1400メートルである。大井川は3000メートル級の南アルプスに挟まれたV字形の底を流れている。

 トンネルの東側入り口となる早川町新倉の標高は約500メートル、西側の入り口大鹿村大河原の標高は716メートル余りである。トンネルは水平に掘られるわけではなくて0.4パーミリ程度の勾配がつく。パーセントではなくてパーミリであるから1000メートルあたり40センチ程度の緩い勾配であるが水は十分に自然流下する。

 二軒小屋付近は地下500メートルを通過するそうだが、トンネルはここを頂点とする「へ」の字の形となり大井川水系の地下水は西と東へ流出するのである。

 それにしても,何故毎秒2トンもの水が失われるのだろうかという疑問をお持ちになるだろう。
その理由はトンネルの掘削工法に因る。現在の山岳トンネル工法はNATM(ナトム)New Austrian Tunnel Method(新オーストリア工法)と呼ばれるものである。これは、削岩機や火薬で岩を砕いて穴を掘り、掘ったそばから岩に巨大な鉄棒(ロックボルト)を打ち込み、コンクリートを吹き付け、防水シートを張り、その上にさらに分厚くコンクリートを塗り固め、トンネルを築いてゆくという工法である。

 岩盤の隙間から水が激しく流れ出すと、岩肌が崩れてしまったりコンクリートが固まらなくなったりして、工事に支障が出る。そこで、本坑の周囲に小断面の穴を掘ったりして、徹底的に水を抜く作業が行われる。その結果、トンネル完成後も完全に湧水を止めることは不可能である。それゆえ、山岳トンネル工事には、地上の水枯れはつきものなのである。

 リニアのトンネルは、幅約11kmの大井川流域を東西に横断する。それだけでなく、地表から本坑に向かう斜坑も2本掘られる。言ってみれば、大井川の谷底下方に巨大な水抜きパイプを設けるようなものである。

 それでは山が乾くとどうなるのか。
 乾燥に弱い植物は枯れます。植物が枯れるとそれを食べて育っていた蝶は絶滅します。ご承知のように蝶は食草といって幼虫が食べる植物が決まっているのです。

 残土処理の問題、水資源の問題、自然保護の問題・・・もうひとつの大きな問題は、環境破壊の問題である。リニアトンネルの掘削に従事する労働者の宿舎や施工会社の工事事務所は二軒小屋付近に設営されることになると思われるが、少なくても7~800名が常時生活することになると思われる。工期は10年間以上が見込まれる。

 南アルプスの山中に一つの町が出来るのである。このことによる自然環境への負荷はきわめて大きいのではないかと思われる。

 市も県も国もあらゆる観点から改めてチェックしていただきたいと思う次第である。

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岩石は 掘ってほぐせば 倍になる

2014年01月09日 13時58分11秒 | 日記
JR東海は、リニア中央新幹線の南アルプス長大トンネルから発生する大量の残土のうち、静岡県内分360万立方メートルについては、南アルプス山中に捨てる計画を出している。

 360万立方メートルの計算根拠について具に知るところではないが、静岡県内分ということは富士川水系と大井川水系の分水嶺、大井川水系と天竜川水系の分水嶺で分けているのだと思う。東京ドームの体積が124万立方メートルだというから東京ドーム約3個分の土量だと憶えておくと解りやすい。

 本坑の掘削断面積はコンクリート覆工の厚さやインバートの逆アーチ部分を含めると約115平方メートル位になるそうである。さらにトンネルの下部に縦横50センチほどの排水溝を掘ることになる。

 また、二軒小屋付近には断面積は31平方メートルほどだが長さ4000メートルの二軒小屋斜坑を設置することになっている。

 トンネルは山梨県側、長野県側からも掘り進めることになるから南アルプスを貫通するトンネル全体のおよそ半分約10キロメートル分が大井川上流の狭隘な渓谷に処分されるということのようである。

 大井川上流部標高2000メートルを流れる急流の河岸に大量の建設発生土を処分しようという発想は単に建設コストを引き下げようというにほかならず、環境保護の立場や土石流の危険性などはあまり深刻に考慮されていないと思わざるを得ない。

 私も現役のころは林道工事や治山工事に長く携わってきたから、わずかな残土の処理にも流出防止や環境破壊にずいぶんと心を砕いてきたものである。

 土木の世界には「土量の変化率」というのがある。つまり地山・・・自然な状態の土石を掘ってほぐすと体積が膨らむという理屈である。山岳トンネルの場合は固い岩石であるから砕いてほぐした状態では地山土量の1.65倍から2倍になるとされている。もちろん、これを敷き均して転圧すればある程度の体積は減ずるのであるが元の岩石のようには戻らない。

 これらを根拠にして単純に計算すると本坑1メートルを掘るごとに

(115 + (0.5×0.5))×1.83(変化率) = 約211立方メートル

の建設発生土がでることになる。通常の建設工事に使用される10トンダンプに積載できる土量は6立方メートルとされているから約35台分である。

 静岡県内約10キロメートルを年間実働日数280日、10年間で掘ると仮定すると

10000メートル ÷ 2800日 = 3.57メートル

ということになり、一日あたり753立方メートルの残土が発生することになる。単純な計算だが126台のダンプが往復することになる。何台のダンプを運行するのかは判らないが、日中8時間480分で計算すれば4分間に1台の割合で大型ダンプが往来することになる。

 トンネル掘削には残土処分だけではなくて覆工のためのコンクリート骨材、セメントなど多くの建設資材が必要となる。と、すれば南アルプス山中にこれを運搬する交通量の多い道路が突如として出現することになる。

 井川ダムまでは大井川鉄道井川線の利用も考えられるが、井川集落から二軒小屋に至る路線は貧弱で特に畑薙ダムより先は一般車両の通行は制限されている。

 路肩に構造物もないような林道を大型ダンプが頻繁に往復するとどうなるか。路面は傷み安全な運行は望めない。当然、作業効率は悪化する。

結果的に大型ダンプが通行しても安全なように道路を整備せざるを得ない。道路を拡幅するのには山肌を削って法面を防護したり、落石防護をしたり、路肩へ構造物を築いたりしなければならない。路面を舗装することにもなるだろう。つまり、大々的な環境破壊が公然と行われようとしているのである。

 静岡県にも静岡市にもこれといったメリットのないリニア新幹線計画であるが、取り返しのつかない環境破壊は具体的な対策も示されないまま確実に迫っているのである。

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