日々是好舌

青柳新太郎のブログです。
人生を大いに楽しむために言いたい放題、書きたい放題!!
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分別は 燃えるゴミです 犬の糞

2012年12月20日 10時58分22秒 | 日記
 生活環境の悪化を見るに忍びなく町内のゴミ拾いを始めたことは以前にも話したことがある。これは現在でも続けている。

 朝晩の散歩にはスーパーのビニール袋と火バサミを持参して出かける。更にポケットにはビニールの小袋を数枚入れている。柔らかな犬の糞はこのビニール袋を手袋代わりにして拾うのである。

 先日、面白い事態に遭遇した。

 町内の丸山老人(仮名)は現役の頃はしかるべき地位の勤め人であったらしい。現在は老婦人との二人暮らしである。脳梗塞の後遺症から歩行が少し不自由である。このリハビリのために毎朝の散歩を欠かさない。ステッキを両手に持ってゆっくりと歩く。私は二丁拳銃ならぬ二丁ステッキのお爺さんと呼んでいる。徘徊する時間帯が同じなので毎朝のように顔をあわせる。時折は言葉を交わしたりもするが特に親しい間柄ではない。その丸山老人が私奴にこういうのである。

「お宅の方から犬を連れてくる人で毎日ゴミをひろってくれる奇特な人がおりますねぇ」幾ら厚顔無恥な私でも奇特な人だといわれてから、それは私でございますとは明し難い。だから「そうですか変わった人もいるもんですねぇ」と、答えておいた。丸山老人もうんうんと肯いていたから奇特なということは、変人だというのと本質的に余り変わらないのであろう。因みに、変人奇人の「奇」の字は、本来、田偏(たへん)に奇と旁(つく)るのであって、原義は矩形でない田圃を表すようだ。

さて、道々拾う塵芥(ごみ)の種類であるが、先ず圧倒的に数が多いのはタバコの吸殻である。そして、桜町で吸殻をポイ棄てするのはキャビンという銘柄の愛好者であることが顕著な傾向である。フィルターのところの巻紙がこげ茶色だから判りやすい。口紅(ルージュ)のついた細いタバコの吸殻は女性が棄てたものに違いない。そういえば咥えタバコで闊歩している水商売風の女性ともしばしば遇う。

次は、コンビニのビニール袋を含む菓子及び食品の包装紙である。ガムの銀紙や蓋にストローのついたマックの紙コップも多い。空き缶・空き瓶はそこいらにある自動販売機のところへ持ってゆく。しかし自動販売機の設置者の中には空き缶空き瓶の回収をしない不届き至極な輩(やから)もいる。

タバコの吸殻とノド飴の包み紙がセットで落ちていることから、吸殻をポイ棄てする輩は、タバコの吸い過ぎで傷んだ咽喉(のど)をノド飴をなめて治そうとしているらしい。泥水で洗濯するような話である。

次は、犬の糞である。これは毎朝毎晩必ずある。しかも大型犬のよりも小型犬のものが多い。一見上品そうな顔を装ったどこぞの奥様が自分の可愛い犬の糞を置いていってしまうのだ。これは何処の誰なのか凡そわかっている。

他人が見ていれば仕方なし拾うが、見ていなければ置き去りにする。一度は拾った糞の入ったビニール袋を植え込みの中へねじ込んで隠す程度の悪い小母さんもいる。なにしろ家へ持ち帰っても「糞(くそ)の役にも立たない」代物である。

 ツツジの植え込みの陰で野糞をして、尻(ケツ)をパンツで拭いて、糞のついたパンツをかぶせてあるやつもある。こういう輩(やから)の糞は極端に臭い。

 拾得物の中には珍品もある。木刀。釣竿。女性のパンティーはこれまで二回拾った。序でに言えば使用済みの生理用品もある。情けなく萎んだ使用済みコンドームにいたっては他人が使用したものでも見るに忍びない。陽気がよくなると堤防の芝生(しばふ)のところで盛り上がってしまうカップルがいるようだ。場所柄を弁えてもらいたいものだがこれも致し方ない。

 6月からは釣具の包装などが覿面に多くなる。安倍川の鮎釣りが解禁になったからだ。

夏場はキャンパーのゴミ置き去りが多くなり片付けるのが大変になる。しかし生ゴミの大半はカラスやトンビの貴重な食餌(しょくじ)となることも事実だ。

 好きなだけ散らかせばいい。桜町には堤防のゴミを拾う人が私の他にもう二人いる。一人は老婆(ろうば)で県営団地の回りだけが行動範囲であるが、もう一人の「旭日(あさひ)を拝む女性」は、年のころなら50代の10人並みの容姿である。
偶(たま)にすれ違うこともあるが彼女は目礼をして足早に歩き去る。そして、賎機山(しずはたやま)の稜線に旭日が昇ると立ち止まって暫(しばら)く拝むのを習いとしている。

興味がないわけではないが他人の信仰にはかかわらないことを信条としているので、これからも目礼だけの関係が続くだろう。

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真心は 静岡弁で  伝えます

2012年12月18日 08時07分03秒 | 日記
近頃の静岡弁は昔に比べると変化してきていると思います。標準語に近づいているのはやはりテレビやラジオの影響ではないでしょうか。言葉は普段から使っていないと忘れてしまいます。静岡弁で話しましょう。

【あつらさる】  頼まれる。預かる。

(用   例) このごんぼーを、足久保のきんみー婆さんからあつらさってきたもんだんて。

(標準語訳) この牛蒡を、足久保のきみ婆さんから預かってきましたので。

【あんもう】   餅。

(用   例) 正月のあんもう搗かざぁ。

(標準語訳) 正月の餅を搗こう。

【いかい】    大きい。大層。

(用   例) 馬鹿野郎。いきゃぁことゆうな。

(標準語訳) お前さん。大きいこと言わないで。

【いのく】     動く。

(用   例) そこの石いのかしてくりょう。

(標準語訳) そこの石を動かしてください。

【いみり・えみり】 ひび。割れ目。

(用   例) やいやい、茶碗へいみりん入っちゃってぇ。

(標準語訳) あれあれ、茶碗へヒビが入っちゃいました。

【いらひじい】 ものほしがる。

(用   例) ふんとに、いらひじぼったい野郎だ。

(標準語訳) 本当にものほしそうな奴だ。

【うざましい】  とても大きい。甚だしい。

(用   例) 殺生にいって、うざましいししを獲っただってさ。

(標準語訳) 狩にいって、すごく大きな猪を獲ったそうです。

【うっちゃる】  捨てる。

(用   例) もう、いらにゃぁもんで、うっちゃってくりょう。

(標準語訳) もう、要らないので、捨ててください。

【えーかん】   かなり。たくさん。

(用   例) せんころまで、えーかんあったっきけーがどうしちゃったずら。

(標準語訳) この間まで、たくさんあったのにどうしたのでしょうか。

【えらい】  つらい。苦しい。大変だ。

(用   例) 土方仕事はからだんえりゃぁやぁ。

(標準語訳) 土方仕事は体が大変です。

【おーぼったい】 うっとうしい。はれぼったい。

(用   例) ゆんべ、よふかししたもんで、顔がおーぼったいやぁ。

(標準語訳) 昨夜、夜更かししたので、顔がはれぼったいです。

【おぞい・おんぞくたい】    粗悪。劣等。

(用   例) おぜぇせいかくだなぁ。

(標準語訳) 悪い性格だなあ。

【おそかす】  教える。

(用   例) 誰だっても、始めは、わかんにゃぁだんて、おそかしてやれやぁ。

(標準語訳) 誰でも、始めは、解からないのだから、教えてあげなさい。

【おとましい】  いやだなぁ。不潔だなぁ。

(用   例) かあかあしくて、おとましい野郎だ。

(標準語訳) やかましくて、いやな奴だ。

【おだっくい】  お調子者。

(用   例) あの、おだっくい野郎が、しょんにゃぁなあ。

(標準語訳) あの、お調子者が、仕方がないなあ。

【おひんぶる】 上品なふりをする。

(用   例) あんまし、おひんぶってると嫌われるぜん。

(標準語訳) あまり、上品ぶってると嫌われますよ。

【おもる】  おごる。

(用   例) あんぶく銭ん入ったんて、おもってやらぁ。

(標準語訳) あぶく銭が入ったので、おごってやろう。

【おやす】   いためる。

(用   例) あんまし、無理すると身体をおやしちゃうよ。

(標準語訳) 余り、無理すると身体を壊してしまいますよ。

【かーかーしい】 意地汚い。

(用   例) 欲ばっか深くて、かーかーしい野郎だ。

(標準語訳) 欲ばかり深くて、意地汚いやつだ。

【かーばる】 こびりつく。

(用   例) 勝手に、かーばれ日なたの干糞

(標準語訳) 勝手に、こびりつけ日なたの干糞。

【かじくる】 ひっ掻く。

(用   例) 猫に手をかじくられちゃった。

(標準語訳) 猫に手をひっ掻かれてしまった。

【かせる】 貸す。

(用   例) 金かせてやろうか。

(標準語訳) 金貸してやろうか。

【がらい・がらいか】 つい。うっかり。

(用   例) がらいか足んすべってころけちゃってぇ。

(標準語訳) うっかり足が滑って転びました。

【がんこ】 非常に。

(用   例) がんこ手間暇んかかる仕事だ。

(標準語訳) 非常に手間暇がかかる仕事だ。

【かんじくなる】 かじかむ。

(用   例) 手がかんじくなって鉛筆んもてぇにゃぁ。

(標準語訳) 手が悴んで鉛筆が持てない。

【かんだるい・かいだるい】 だるい。つかれる。

(用   例) つるっぱしで穴ほったらかんだりーやぁ。

(標準語訳) 鶴嘴で穴を掘ったら疲れました。

【きーない】 黄色い。

(用   例) タンポポの花はきーない。

(標準語訳) タンポポの花は黄色い。

【きやんぼう】 きやん坊は山林労務者のこと。

(用   例) あのうちゃあきやん坊だんて田んぼはにゃあら。

(標準語訳) あの家は山林労務者だから田圃はないだろう。

【くすがる・くすげる】 刺さる。刺す。

(用   例) 足に古釘がくすがった。

(標準語訳) 足に古釘が刺さった。

【くすべ】  ほくろ。

(用   例) 顔にくすべがある。

(標準語訳) 顔にほくろがある。

【くむ】    崩れる。

(用   例) 地震で石垣がくんだ。

(標準語訳) 地震で石垣が崩れた。

【くろ】     端。傍。隅。

(用   例) 車を道のくろへ止めてくりょう。

(標準語訳) 車を道端へ止めてください。

【こすい】   ずるい。

(用   例) やっこさんはこすい野郎だ。

(標準語訳) 彼はずるい男だ。

【こずむ】  沈殿する。

(用   例) 濁酒の滓が底にこずんでらぁ。

(標準語訳) ドブロクの滓が底に沈殿してます。

【ごせっぽい】 せいせいする。さっぱりする。

(用   例) 亭主ん留守でごせっぺぇわ。

(標準語訳) 亭主が留守でせいせいする。

【こちー】  小さい。

(用   例) 身体はこちーけえが度胸はあらぁ。

(標準語訳) 身体は小さいが度胸はある。

【こそくる】 つくろう。修繕する。

(用   例) あんてーは大工だけぇがこそくりばっかしだ。

(標準語訳) あの人は大工だが修繕仕事ばかりだ。

【こば】  端。隅。傍。物のかど。

(用   例) 倉庫の真ん中へ置かずにこばへ置いてくりょう。

(標準語訳) 倉庫の真ん中へ置かないで隅へ置いて下さい。

【こんじょこんじょ】 ウスバカゲロウの幼虫。

(用   例) 蟻地獄はこんじょこんじょの巣ずら。

(標準語訳) 蟻地獄はウスバカゲロウの幼虫の巣でしょう。

【ささらほーさら】 乱雑。めちゃくちゃ。でたらめ。

(用   例) 部屋の中んばっちらがってささらほーさらだ。

(標準語訳) 部屋の中が散乱してめちゃくちゃだ。

【さばく】  破る。

(用   例) やっきりしたもんでメモをさばいてうっちゃっちゃった。

(標準語訳) 腹がたったのでメモを破いて捨てました。

【さんだす】 差し出す。

(用   例) そこの金鎚とってこっちへさんだいてくりょう。

(標準語訳) そこの金鎚とってこちらへ差し出して下さい。

【しょんない】 しかたがない。

(用   例) そんなんせちがうじゃぁしょんにゃぁくれてやらぁ。

(標準語訳) そんなにねだられては仕方がない差し上げましょう。

【しょろしょろ】 のろのろ。もたもた。

(用   例) しょろしょろしてんなよ。

(標準語訳) もたもたしてないで。

【しらっくら】 態度がはっきりしないこと。

(用   例) しらっくらしてにゃぁで好きなら好きって言え。

(標準語訳) ぐずぐずしてないで好きなら好きと言え。

【すこい・すけー】  ずるい。

(用   例) すけー野郎だ。

(標準語訳) ずるい奴だ。

【ずなる・ずなりとばす】 すっとぶ。すっとばす。

(用   例) ずなってきてくりょう。

(標準語訳) すっとんできてください。

【ずら】 でしょう。だろう。

(用   例) あそこへしょんべんひったのはおみゃーずら。

(標準語訳) あそこへ小便したのは貴方でしょう。

【せちがう・せちごー】 ねだる。せがむ。

(用   例) あんましせちごーもんで根負けしちゃった。

(標準語訳) あんまりねだるので根負けしてしまいました。

【せんころ】 先頃。先日。

(用   例) せんころの約束わすれんなよ。

(標準語訳) この間の約束忘れないでね。

【そのいと】 そのうち。

(用   例) そのいと一杯やらぜー。

(標準語訳) そのうちに一杯やりましょう。

【ぞんぐり】 ぞっとする。ひやっとする。

(用   例) 鼻声でせまられてぞんぐりしちゃった。

(標準語訳) 鼻声でせまられてぞっとしました。

【たんと】  たくさん。

(用   例) えんりょしにゃーでたんと食ってやー。。

(標準語訳) 遠慮しないでたくさん食べて下さい。

【ちーっと】 少し。

(用   例) たんと飲むと酔っちゃうんてちーっと注いでやー。

(標準語訳) たくさん飲むと酔ってしまうので少し注いで下さい。

【ちょっくり・ちょっくら】 ちょっと。

(用   例) ちょっくら行ってくらー。

(標準語訳) ちょっと行ってきます。

【ちんびー・ちんびくたい】 小さい。

(用   例) 身体はちんびーけーが胆は据わってるぜん。

(標準語訳) 身体は小さいが肝は据わっているぞ。

【ちんぶりをかく】 すねる。

(用   例) 仲間はずれにされてちんぶりをかいてんだよ。

(標準語訳) 仲間はずれにされてすねているのです。

【つっころかす】 押す。つきとばす。

(用   例) 後ろからつっころかされてひっくりけぇっちゃってぇ。

(標準語訳) 後ろから押されて転んでしまいました。

【づない】 強い。壮健だ。健康だ。達者だ。元気だ。

(用   例) あっちの家の婆さんはいつまでもづにゃあなあ。。

(標準語訳) あちらのお宅のお婆さんはいつまでもお元気ですねえ。

【てっさん】  素手で魚を獲ること。

(用   例) この鮒ぁてっさんで獲ったでぇ。

(標準語訳) この鮒は手づかみで獲りました。

【とぶ】  走る。駆ける。

(用   例) とびっくらするか。

(標準語訳) 駆けくらべしようか。

【なるい】 ゆるやか。

(用   例) もうちっと削ってなるくしてくりょう。

(標準語訳) もう少し削って勾配をゆるやかにしてください。

【なりき】  ぞんざい。いいかげん。

(用   例) なりきな仕事をするな。

(標準語訳) ぞんざいな仕事をするな。

【ぬくとい】 あたたかい。

(用   例) 冬にしちゃーぬくとい日だなぁ。

(標準語訳) 冬にしては暖かい日ですねぇ。

【のんばめる】 もてあます。のどにつかえる。

(用   例) 仕事をのんばめちゃって屁をたれちゃった。

(標準語訳) 仕事をもてあまして苦労した。

【はだって】 わざと。わざわざ。

(用   例) はだってやったずら。

(標準語訳) わざとやったんでしょう。

【ひっさぼる】 投げ出す。投げ捨てる。

(用   例) 仕事をひっさぼーってきた。。

(標準語訳) 仕事を投げ出してきた。。

【ひどろしい】 眩しい。

(用   例) おてんとさんがひどろしい。

(標準語訳) 太陽がまぶしい。

【ひなる】   ひーひー泣く。悲鳴を上げる。

(用   例) おまっちんかあさんが焼餅やいて、ひなってたぜん。

(標準語訳) お宅の奥さんが焼餅やいて、ひーひー泣いていたよ。

【ひまっさい】 時間の無駄。

(用   例) いそがしいずらに、ひまっさいさせちゃって申し訳んにゃぁ。

(標準語訳) 忙しいだろうに、時間をとらせて申し訳ありません。

【ひろひろする】物欲しそうにする。

(用   例) 酒も肴もたんとあるだんて、ひろひろするな。

(標準語訳) 酒も肴もたくさんあるから、物欲しそうにしないで。

【ぶしょったい】 きたない。不潔。

(用   例) ぶしょったい野郎だ。

(標準語訳) 不潔な奴だ。

【ぶそくる】 ふてくさる。不機嫌になる。

(用   例) 朝からぶそくってんだよ。

(標準語訳) 朝から不機嫌なんです。

【ぶっさらう】 なぐる。打つ。

(用   例) くだらにゃぁこというと、ぶっさらうぞ。

(標準語訳) つまらないこというと、ぶんなぐるぞ。

【ふんと】  ほんとう。

(用   例) ふんとにやっきりしちゃったっけ。

(標準語訳) ほんとうに腹がたったっけ。

【べったら】  小麦粉を溶いて焼いたもの。

(用   例) はらんへったらべったらでも焼いて食えさ。

(標準語訳) お腹が空いたらうどん粉を焼いて食べなさい。

【ぼさ】   草むら。やぶ。木のしげみ。

(用   例) そこの、ぼさをきっさらってくりょう。

(標準語訳) そこの、藪を切り払ってください。

【ぼっこ】 ぼろ。

(用   例) 貧乏してるもんで、こんなぼっこしか着れにゃぁでぇ。

(標準語訳) 貧乏しているので、こんなぼろしか着れません。

【ぼったつ】 ぼやっとして立つ。

(用   例) いつまでも、ぼったってんなやぁ。

(標準語訳) いつまでも、ぼやっと立っていないでよ。

【ぼったろう】 蟇蛙。

【ままい・まみゃー】 何とぞ。どうぞ。

(用   例) まみゃーたのむでたすけてくりょう。

(標準語訳) 何とぞお願い、助けてください。

【まめったい】 よく働く。達者だ。

(用   例) あのひたぁふんとにまめったいやぁ。

(標準語訳) あの人は本当に働き者です。

【まるける】 束ねる。丸める。

(用   例) 古新聞まるけて片付けてくりょう。

(標準語訳) 古新聞束ねて片付けてください。

【まるさら】 まるごと。そっくり全部。

(用   例) 鰹一本まるさら買ってきた。

(標準語訳) 鰹一本まるごと買ってきた。

【みこがいい】 おぼえがよい。えこひいきされる。

(用   例) あんてぇは上司にみこがえぇ。。

(標準語訳) あの人は上司におぼえがよい。

【みるい】 やわらかい。未熟。若い。

(用   例) まだみるすぎて茶摘にゃはやぁ。

(標準語訳) まだやわらかすぎて茶摘には早い。

【もそぐったい】 くすぐったい。

(用   例) 虫に食われただか臍のあたりんもそぐったいやぁ。

(標準語訳) 虫に刺されたのでしょうか臍の辺りがくすぐったいです。

【もや】   焚き木。

(用   例) せんころまじゃぁもやぁもやぁてめしょうたいたんだよ。

(標準語訳) この間までは焚き木を燃やして飯を炊いていました。

【やいやい】 あれあれ。

(用   例) やいやい、またしくじっちゃってぇ。

(標準語訳) あれあれ、また失敗してしまいました。

【やっきり】 腹立たしい。しゃくにさわる。じれったい。

(用   例) 勝手なことばっかりいやぁがってやっきりしちゃったっけ。

(標準語訳) 勝手なことばかり言われて腹立たしかった。

【やぶせったい】 うっとうしい。

(用   例) 庭の樹が茂ってやぶせったいんて伐っちまおう。

(標準語訳) 庭の樹が茂ってうっとうしいので伐ってしまおう。

【よーせー】 きゃしゃ。弱弱しい。

(用   例) あの仁は育ちんええもんでよーせーだ。

(標準語訳) あの人は育ちがいいので華奢だ。

【らんごく】 乱雑。

(用   例) 材料置き場んらんごくで手がつけられねぇ。

(標準語訳) 材料置き場が乱雑で手がつけられない。

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縁日に 露店の店も 出しました

2012年12月13日 20時53分33秒 | 日記
人が落目になるときは、たのむ木陰に露もれる。これは浪花節の一節だが、人間、落目にはなりたくないものである。
 土建業界一筋に生きてきた私もバブル崩壊後の不況時にはリストラを受けて失業したことがあり、その際に東海道丸子宿、大鈩不動尊(おおだたらふどうそん)の参道で露天商を営んだことは以前にも何かの折に書いた。
 大鈩不動尊の縁日は何々一家の縄張りだということもなく、土地の世話役の人に念達さえすれば堅気の人間でもショバ代一〇〇〇円を支払って露天の商売が出来るのである。勿論、露天商の多くは本職のテキヤであることは他のタカマチと何ら変わりは無い。だから、私が茣蓙を広げて店を出した隣もその隣も本職のテキヤで、道の向い側の店は中年の女性だったが、その人も本職のテキヤだった。この人はずぶの素人の私に色々と商売のアドバイスをしてくれたり、お茶を振舞ってくれたりして親切に接してくれた。
 最初に誤解の無いようお断りしておくが私は博徒でもなければテキヤでもない。素っ堅気の土木技術者である。現在、私は鳶職の会社に在籍しているが、敢て附言すれば鳶職はその由来からして新門辰五郎や野狐三次などの火消衆とは同類であり、その伝統かどうかは知らないが背中に彫物をした職人さんたちが今でも多いことは事実である。また、私が属していた土木業界には元何々という人間が多くいて中には元ヤクザという経歴の持ち主も少なからずいた。
 何の商売でも同じだが商売人同士の間には仲間内だけに通じる符丁というのがある。我々、鳶土工の仲間で「長太郎・ちょうたろう」といえば、仮の支柱のことである。丸太や角材、鉄パイプなどを使って仮の支えをすることを「長太郎をかう」という。
 「甚九郎・じんくろう」というのはトロッコなどのレールを曲げたり、曲がりを直したりするのに使う一種のジャッキでレールベンダーというのが正しい呼称である。
 「まんぼ」というのは、作業の回数や材料の納入回数を記録することで、その役目を「まんぼ取り」と呼ぶ。砕石場の受付などには勝気でおきゃんな「まんぼとり」の姉ちゃんが多い。ダンプトラック運転手を相手の仕事だから上品で大人しいお嬢さんでは勤まらないのである。
 「陸・ろく」というのは水平であること、平坦であることを言う。陸墨は水平を示す墨出しのことである。
 ところで隠語といえば卑猥な言葉は数知れずというほどたくさんあるが、場所柄を弁えてここでは遠慮しておく。今回は締切りに追われて原稿が間に合わないので、お目汚しではあるがテキヤの隠語について書いてみた。
 以下、テキヤの隠語を幾つか列挙してみよう。
【あいつき】あいずきとも言う。仁義、挨拶のことであり交際のはじまりを意味する。
【あおた】青田のことでテキヤが青果物を売る場合に使う。例えば、胡瓜、トマトなどを売るときは「今日のネタはアオタだ」という。果物はアオタアカモノという。
【あおかん】野宿のこと。屋外で寝ることを意味する。
【あかたん】金魚のこと。金魚売りもいう。
【あかなま】銅貨のことで昔なら一銭、二銭、或いは五厘の銅貨。今なら十円銅貨。アカウマともいう。
【あめ】うまいことをいって相手を乗り気にさせる。「あめをくわせる」「あめをなめさせる」などと使う。
【あけろく】ひよこ。
【あご】駄目。顎を押さえるのがダメの合図から。
【あらめん】初対面。
【あわ】石鹸。
【いもひく】恐れること。
【うきす】浮巣ということで船を意味する。
【うすい】バカという意味。「あいつは、うすいから」などと使う。
【うたう】泣くこと、或いは泣かせること。「うたわせてやった」などと使う。
【えんこ】手のこと。えんこずけるというと手をつけるの意味で、女性と関係したことになる。
【おーとん】自動車。
【おひん】金銭のこと。
【かくらん】布団。小カクランは座布団。鬼カクランは蚊屋。
【がせ】偽物、粗悪品のこと。ガセネタというと偽物、粗悪品の商品のこと。
【かりす】僧侶。
【がり】しんがりのガリからきた言葉で、一番おしまいのこと。「おれのショバはガリだ」などと最低だという意味にも使う。
【がん】眼のことで、眼のくばり、注意力などを意味する。「ガンが高い」といえば、よく見極めが利くということだし、「ガンをつける」といえば、睨むように見たということになる。ガンスイは涙。
【かんたん】唐の沈既済の小説『枕中記』にある故事の一つ、邯鄲の枕に因む言葉で眠ること。
【きす】酒のこと。オニキスは焼酎。ヨウキスは洋酒。キスボケは酔っ払い。キスグレも同じ。キスモロは酒に弱いこと。キスヒクは飲酒。
【きゃあ】客のこと。キャアタローともいう。
【ぎる】盗むこと。
【ぐに】質のこと。グニヤといえば質屋。グニにやったといえば質入れしたこと。丁半博打の五二(ぐに)からとも、七の字は下部が曲っているから、それをグニャリとしているからとして七をグニといい、転じて質になったともいう。
【げそ】本来は下駄のことだが、履物をすべてゲソというようになった。「ゲソをつける」というと入門すること。
【ごと】不正行為、詐欺行為などをいい、「ゴトをかまえた」といえば不正行為の仕掛をしたことになる。ゴトシは詐欺師。仕事のゴトからきた言葉。
【ごらん】子供の見物人。ゴランバイというと子供相手の商売。
【ごろ】喧嘩のこと。「ごろをまく」といえば喧嘩を吹っかけたことになる。ヤゴロは道具をつかった喧嘩。スデゴロは素手の喧嘩。
【さくら】客のふりをした仲間のこと。ぱっと咲いてぱっと散るところから。チルは売れるという意味。
【さじ】医者。
【ざんぶり】入浴。ズンブリともいう。
【しき】家のこと、屋敷からきた言葉。カリシキといえば借家。転じて店舗もシキという。
【しま】縄張り、或いは勢力範囲、或いは一定の地域を指していう。
【しゃり】ご飯のこと。ナマシャリは米。ギンシャリは白飯。バクシャリは麦飯。ナガシャリはウドン。
【じゃり】子供。ジャリスケともいう。
【じゅうろく】糞。小便はショウスイ。
【しょば】場所のこと。ショバ割りは商売をする場所を決めること。

【しん】金銭のこと。オシンともいう。
【じん】人間のこと。「ジンを集める」といえば人を集めること。「あの人はいいジンだ」といえば人柄がいいという意味。
【すい】水のことだがスイバレといえば雨降りのことになる。スイチャモというと水素ガスを入れて空中に浮遊する風船。チャモはオモチャをひっくり返した言葉である。カクスイは氷。スイチカは水の入った風船ヨーヨー。
【すいびら】手拭。
【すけ】女のこと。元は女をひっくり返してナオンといった。それから転じてナオスケになり、その上を捨てたのがスケである。スケコマシといえば女を騙すことになる。コマスとは、うまく丸めこむ、手なずけるという意味。
【せこ】景気がわるいことで賭博に負けたことなどを意味する。「セコモノだよ」というと、新品ではないという意味。「あいつはセコイ」というとカネを持っていないの意味になる。セコハンもセコモノに同じ。
【せんまつ】千松で歌舞伎の『伽羅先代萩』(めいぼくせんだいはぎ)の空腹を我慢している子どもからきた言葉。「おれは千松だ」といえば空腹だという意味。
【たかまち】高市と書く。縁日、祭礼などで人が集まって露天の店をだすのに適したところ。
【たかもの】興行のこと。奈良朝、平安朝の頃、農作物の収穫の後に、丘の上のような高いところに多くの人が集まって歌ったり踊ったり、異性の相手を求めたりした。それを「かがい」或いは「歌垣」といった。そこへ物売りがきたり、芸をする者もきた。そこからタカマチ、タカモノという言葉が生じたものと考えられている。
【たく】口上のこと。タクヅケというと口上をのべること。タクバイというと口上をいって売ること。
【だち】友達のこと。ダチコウなどともいう。
【だふ】札のことで、切符、入場券などを意味する。ダフヤというと入場券を買い占めて高く売りつける商売。
【たろう】太郎のことで、ぼんやりした客、あるいは田舎者。
【たんか】口上のこと。タンカバイというと口上をいって売ること。
【ちょお】客のこと。「きたか、ちょうさん待ってたほい」というのは客がきたということで朝鮮の人がきたという意味ではない。チョウコウ、チョウタともいう。
【ちょうふ】分け前。
【ちる】売れる。
【つぎもの】食べ物。
【つなぎ】通信のこと。ツナギをつけたといえば、挨拶をしたことになる。
【でか】刑事。昔、和服を着ている刑事を角袖(カクソデ)といったのを略して逆に呼んだもの。
【てけてん】ブス。器量の悪い女。
【てっかり】マッチのこと。
【てらこや】学校。
【てん】上等という意味。テンショバというと一番よく売れる場所。ガリショバの反対。
【てんがい】天蓋で傘のこと。洋テンガイはコウモリ傘。
【でんすけ】街頭のイカサマ賭博でテキヤがやる。それに使う持ち運びのできる道具をデンスケといったところから、すべての街頭イカサマ賭博をそういうようになった。語源は不明。
【とは】鳩を逆さにしたものでサクラと同じ偽の客の意味。
【とぶ】逃げる。高とびをするといえば遠くへ逃げるということ。
【どや】宿屋からきた言葉で旅館も意味するが、借りて住んでいるところのすべてをいう。
【とろ】油。ガマトロは蝦蟇の油。マキトロは蛇の油薬。ペテントロは白髪染め。ゲソトロは靴墨。
【どろん】逃げること。ドロンをしたというと、逃げてしまったことになる。
【とんすけ】嘘。スケトンともいう。
【ながれ】外れだが意外と客が来る場所。
【なく】雨が降ること。天気が泣くというわけである。
【なし】話のこと。ナシヲウツといえば話をするということになる。
【なま】現金。ナマイレは財布。ゲンナマともいう。
【にわ】自分のところの商品を持っていって売る者、あるいは子分。ニワバというとそういう人たちが売り歩くきまった場所。
【にん】人のこと。ただニンといえば素人。バイニンといえば商売人のことでテキヤのうちで物を売る人のことをいう。
【ぬくい】あやしいということ。
【ねき】飴のこと。棒ネキというと棒状のアメ。スイネキは水アメ。
【ねす】素人のこと。
【ねた】品物。転じて商品。ネタモトというと商品の卸売りをする者。
【ねんまん】万年筆。
【のみや】公営ギャンブルの馬券、車券などを客に代わって買い若干の手数料をとる商売だが、実際は公営ギャンブルに便乗して自分が胴元になることが多い。主としてテキヤ系のヤクザがやっている。
【ばい】商売。
【はくい】良い、美しいという意味。
【はこ】列車。電車。汽車。ナガバコともいう。ハコバは駅。
【ばした】親分の妻でテキヤだけの言葉。博徒はアネサンという。
【はぼく】葉木というわけで植木屋。単にボクともいう。
【はやい】盗むこと。「これは早い品物だ」といえば盗品のこと。「ハヤノリした」といえば盗んだことになる。
【はやせん】電話。
【ひつじ】紙。ヒツジモノは紙製品、印刷物。
【ひも】情夫。
【ひらび】平日ということで普通の日。ヒラバというと特定の祭礼などではなく普通の日にきまって店を出せる露天商の場所。日曜、祭日、祭礼、縁日などはモノビという。
【ぶうたれる】不平をいう。
【ふかす】隠すこと。フカシチャッタなどと使う。盗品を売ってしまうことも意味するから泥棒の符丁かもしれない。
【ぶりかまる】恐れおののく。
【へがば】便所。悪い場所もいう。
【へたり】露天商のうちの口上をいわないで、だまって商品を並べて売るだけの者。
【ぽたん】ご飯のおかず。
【ほやく】食べる。ホヤキモノは食べ物。
【まえ】前科のこと。マエモノというと前科者。「マエが無い」というと前科がないということ。
【まぶ】本物。マブネタは上等な商品。ヤクザ用語だと拳銃を意味する。
【めん】顔、人相のこと。メンガアルというと顔を知っているという意味。メンガトオルは顔を知られたこと。
【もく】煙草。洋モクは外国煙草。
【もんもん】彫り物のこと。くりからもんもんの略。
【やあさま】香具師、野師のことでテキヤのことである。よく、ヤクザの略と思われているが、博徒、グレン隊はヤアサマ、ヤアコウなどとは呼ばない。
【やさ】住居、家。刃物をおさめる鞘からきた言葉。ヤサグレというと家出人。
【やち】谷地ということでくぼんで湿り気があるという意味。すなわち女性の性器。ヤチモロというと性的に女に弱いことをいう。ヤチグレは性的乱行のこと。女性器に関する隠語はたくさんあるが、これを代表としておく。
【やばい】危険。
【やほん】本。
【やりとり】鋸。
【よろく】思わぬ儲けのこと。
【らんかい】博覧会。
【りこ】氷。
【ろく】宿六。男または亭主を意味する。
【ろくま】易者、占い師。仏教でいう六魔から。
【ろせん】露栓。男性器。
【ろは】ただ。只をロとハに分解。
【わじるし】春本春画のこと。春画を「笑い絵」といったことからきている。
【わたり】交渉。ワタリヲツケルというと交渉を持ったことになる。ときには、言い掛かりをつけたことにもなる。
【わり】分配すること。
【わんちゃ】茶碗。陶器。

 テキヤが使う隠語は他にも数々あるが紙面の関係もあるからこの辺りでお終いにする。

◆ てけてんにがんつけられている  白兎

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お閑なら 紙魚の独言 聴いてくれ

2012年12月09日 08時44分13秒 | 日記
おい、若い衆、あんた、不惑四十になるかならぬかの歳じゃろう。ええっ。その割にはおぐしが薄いなぁ。なんかご苦労でもされたのかね。それとも副作用の強い薬の飲みすぎかな。まあ、そんなこたぁどうでもいいわ。禿には福音ともいえる耳よりな話があるんじゃが聞いてくれるかね。

俺か。おりゃぁな。『□○書房・ほうえんしょぼう』の本棚に巣くう紙魚じゃよ。

名前か。紙魚の老い耄れに名前なんぞは不要なんじゃが、『大言海』の裏表紙に棲んでおるゆえ、仲間の紙魚諸君からは「大言海の五郎」と呼ばれておるんじゃ。

なっ。なにぃっ。『大言海・だいげんかい』を知らないってか。『大言海』とは、かの大槻文彦文学博士が著した国語辞書のことじゃないか。

ええっ。なんだって、少し耳が遠いんでな。そりゃぁ紙魚だって寄る年波には克てんのじゃよ。

ええっ。なっ。なにぃ。紙魚の耄碌爺風情に人間様の言葉が喋れる訳がねぇって。じょ。冗談いっちゃぁいけねぇよ。こちとらぁ大言海の五郎ってぇ二つ名ぁ背負った紙魚でぇ。そこいら辺にのたくってるちんけな蟲たぁちぃっとばかっし出来が違うんでいっ。

この編の主人公は、青柳新太郎の書斎「□○書房」に巣くう紙魚の長老で「大言海の五郎」と呼ばれている。

負けず嫌いで、偏屈で、嘴ばっかりが変に達者で、空威勢のよい年寄りである。だが、一寸した話を聞いただけでも、ただの耄碌爺でないことは、賢明な読者の皆さんにはお判りになるだろう。

今回は、この老人ならぬ老紙魚が、半生を費やして舐めまわした、和漢の書籍の中から、「知らずとも全く困らぬが、知っておれば猶一層困らぬ」という、一風変わった話を紹介してみたい。

早速じゃが、読者の諸兄諸姉は、もちろん遊郭は御存じだな。然様、江戸で吉原、京都で島原、大阪では新町、長崎では丸山、駿府では二丁町が有名な遊郭だったな。古くは、東海道は手越(静岡市手越)の宿の遊女なども有名だったがね。

昔は売春が公許されていたんでな、各地に遊郭があったんだよ。それなのに、あの菅原通済とかいう、お節介な爺さんが、自分の一物が役立たずになったからといって、三悪追放とかいって騒ぎまくってな、若い衆には何の相談もなしに『売春禁止法』なる法律を制定させたんだよ。

自分が若い頃には、散々やりちらかしたくせに、まったく身勝手の強い爺さんだった。まあ、この御仁は天神さんとして親しまれておる菅原道真公三十六代の遠孫で、鉄道業界から土建業界をも支配する黒幕として君臨した人物でな、なかなかの大物だったんじゃよ。

なにっ。禿に効く秘薬とやらを早く教えろだと。慌てなさんな。焦るでない。慌てる乞食は貰いが少ないと、かの俚諺にも云うではないか。

ところで禿はいまさら説明しなくても解かるな。そう。頭の毛が抜けて無くなることだな。つるっ禿・里芋頭・河童禿、ザビエル禿・・・他にも色々な禿げ方があるぞ。そうだ、禿頭病という厄介な病気もあったっけな。

古来、中国では髪の毛のことを「血餘・けつよ」という。何といったかな。養毛剤だったか発毛剤だったか、とんと忘れてしまったが、こんな文句の宣伝文句があったな。

毛髪は、有り余る血液から生まれるのであり、豊潤な血流の証明であると考えられておった。確かこんな文句が続いていたような記憶があるんじゃがな。

昔の中国では髪の毛を血液の余りと考えた訳だな。中国といえば漢字発祥の国だが、毛髪に関係する文字も仰山あるぞ。

「髪」の音はハツで、髪の毛の意味だが、一寸の百分の一を表す長さの単位としても使うんだよ。間一髪の髪はこの意味だ。

「髭」の音はシで、口ひげの意味だ。

「髟」の音はヒョウで、長いかみの毛の意味。

「髢」の音はテイで、入れ髪、或いは添え髪のこと。入れ髪では解からないって。それでは「かもじ」ではどうかな。

「髦」はボウで、垂れ髪のこと。

「髥」はゼンで、頬ひげのこと。

「髫」はチョウで、うない髪のこと。

「髱」はホウで、「たぼ」のこと。

「髷」はキョクで、縮れ毛のこと。日本では「まげ」にあてる。

「髻」はケイで、「たぶさ」或いは「もとどり」の意味。キツと発音すると、竈神の意味もある。

「鬆」はショウで、髪が乱れるの意味だが、ゆるい、しまりがない、の意味にも使う。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などというのがその用例だな。

「鬘」はバン、またはマンと発音し、髪かざりのこと。

「鬚」はシュ、またはスと発音し、顎ひげのこと。

「鬟」はカンで、まるく束ねた髪のこと。

「鬢」はヒンまたはビンで、びん即ち耳のそばの髪の毛のことだ。

「鬛」はリョウで、これまた顎ひげのこと。

この他にも「髣髴」という熟語があるな。ホウフツと発音するが「彷彿」と同音同義で、よく似ているさま、ありありと思い浮ぶさま、などの意味があるな。

勿論、この外にも毛髪に関する漢字はあるんだが、なんせ字画の多い字ばかりなんで、記憶能力にも限界があるんじゃよ。

実のところ、青柳の爺さんの知合いにも、禿げた人や髪の毛が極端に薄い人がおってな、禿とても決して他人事ではないと、かねがね心配しておるんだよ。

ええっ。何っ。青柳の爺さんはどうかって。あの爺さんは、下半身の方はさっぱり駄目だが、大した苦労がない所為か、髪の毛だけはたっぷりあるし、いまだに黒々としてるんだよ。ただし、少し癖毛だがね。

何っ。発毛の秘薬っ。ええっ。変に勿体をつけるなって。勿体なんかちっともつけちゃあいないよ。けれども話にゃぁ筋道ってぇものがあるでしょう。

そうそう急くな。慌てなさんな。話の舞台は、花のお江戸の吉原だ。そうだ、吉原遊郭だ。遊郭というのは女郎屋がわんさと軒を並べている歓楽街ですよ。

女郎屋ってなにだって。ちょっと、若い衆。いいかげんにしなさいよ。さっきから話がちっとも前に進まないじゃぁないか。女郎屋ってのは、お金を取って■■■■(いいこと)をさせる商売屋ですよ。■■■■じゃぁ解からないって。ちょっと、お前さん、とっとと家へ帰って、お袋さんにでも教えてもらいなさい。

そこでだ。話は再び元へ戻るが、大体が漢字の「商」という字の起源からして、股間の穴の形、つまりは女陰を意味するという説もあるぐらいだ。

従って、商売の「商・あきなう」の字は、本来は、大声で呼び込むことを意味する「唱」の字を充てるべきものらしい。

唱えて売る。これが商売の原義だとすれば、祭礼・縁日の露店で香具師のお兄さんが、威勢のよい口上を並べて物を売る、所謂「啖呵売・たんかばい」が、商売と呼ぶのに最も相応しいと、俺は思うんじゃが如何なもんかな。

あゝ。若い衆。ちょっと待って。いいことを思いついた。そこにほれ、丁度いいお師匠さんがおいでになる。秣場(まぐさば)さんにご指南を仰ぎなさい。なんてったって秣場さんは百戦錬磨の豪傑ですからね。

ところで吽公(うんこう)さんは何人斬りでしたっけ。しかし、斬るというのもなんだかおかしな表現だな。得物は男子の一物なんだから、突くとか刺すとかいうべきじゃあないんかしら。そんなこたあ此の際どうでもいいや。どうもいかんな悪い癖じゃ。

遊郭も江戸の吉原ともなれば、女郎の数も並ではないぞ。だが、人数が多ければ多いほどいるのが、有るべき処に毛の無い妓(こ)だ。そうだ。俗に「土器・かわらけ」ともいうが、当今では「パイパン」などともいうそうな。パイパンとは白板のことで麻雀牌の一つだな。

そうだ、若い衆。白・發・中(ハク・ハツ・チュン)で大三元というやつじゃ。

有り過ぎても困るが、無くても困るのが毛だ。何っ。今度はなんだ。そう。そうだよ。無くても困るのが陰毛だ。■■■■(だいじなところ)の縮れ毛だよ。

『万葉集』の一首に「凡有者左毛右毛将為乎恐跡 振痛袖可忍而有香聞」という歌があってな、天平二年(730年)太宰帥大伴氏に、児島という遊行女婦が贈った歌として載っておるんじゃ。

漢字の羅列だから鹿爪らしいが、これは万葉仮名といって、表音文字と思って間違いないな。解かりやすく片仮名書きすると「オホナラバ、カモカモセンヲカシコミト、フリイタキソデヲ、シノビテアルカモ」となるんだね。

これを更に読下文に直すと「凡ならばかもかも為むを恐みと振り痛き袖を忍びてあるかも」となるようだな。

この『万葉集』九六五の一首を、普通は「貴方が、九州の大宰府へ行かれるというので、一緒に連れていってよと訴えたが、連れては行けぬと諭された。だから、私は袖を振るのをも我慢して、じっと忍んで見送っておりますよ」といった程度に、当たり障りなく訳しているんだな。

『古語辞典』などにも、「右毛左毛」を「右にしたり左にしたり・・・ああしたりこうしたりして、ほしい儘にいろんな事をする」といったふうに逃げておるんだよ。

だがね。人間の体毛が右と左に分かれている場所は、ただの一ヶ所だけなんだから、本当の歌意は、もっともっと肉体的にエロチックに解釈するべきだという説もあるんだよ。なにっ。そうだもっと助平にじゃ。

江戸時代の人は、これを「チンチンカモカモ」などという言葉にして結構頻繁に使っていたようなんだな。例えば「別嬪じゃぁねえか、かもって、かもかもしたいじゃぁありやせんか」とか、「締め切った小部屋で、ちんちんかもかもしてる最中に、とんだ邪魔が入りゃあがって」などといった具合に使っておるんだな。

だからさ。実は『万葉集』のマンが曲者でな。万葉時代の女性は、極めておおらかに性を謳いあげておったという訳さ。おおらかにね。

何っ。煩いねえ。お前さんは。ほら、だから話を途中で忘れてしまうじゃあないか。ちょびちょびしないで、おとなしく聞いていなさい。

ええっと。さっき何処まで話したっけ。あゝそうだったな。パイパンのところまでね。カワラケすなわちパイパンじゃったな。

でね。有るべき処に毛がないと、もちろん女郎も不憫だが、女郎を抱えた楼主も困るんだよ。

何故かって。毛のない妓はどうしても客に嫌われることが多い。お客が寄らない。抱えている女郎の稼ぎが悪ければ楼主が儲からない。損をするのは誰でも嫌だから、楼主も知恵を絞るという訳さ。

そこでだ、何とかしてカワラケの妓に毛を生やしてやろうと、考えだされた妙法が、なんと蚕の餌にする桑の葉の利用だったという訳さ。

蚕のことは知っているかな。然様、蓑虫と同じ蛾の仲間だ。鱗翅目蛾亜目カイコガ科に属する昆虫ですな。カイコは「飼い蚕」という意味で、クワゴの家養変種だとされておる。従って、家蚕(かさん)ともいうな。

カイコガの幼虫が所謂、カイコで、飼育して繭から絹糸を得るわけだ。繭は一本に繋がった長い糸で出来ておるんじゃよ。長い糸ね。

卵から孵った直後のカイコは、多毛で黒く、これを毛蚕(けご)という。いいですか。カイコの毛虫は毛蚕ですぞ。毛蚕。多毛で黒い。いいな。

毛蚕は成長すると、やがて脱皮して、白色で斑紋のある幼虫に姿を変える。毛蚕から数えて四回の脱皮を重ね、蛹(さなぎ)になる前の幼虫は熟蚕(じゅくご)と呼ばれる。熟蚕だ。

熟蚕の体色は、やや透明で、なおも桑の葉を食み続ける。そして暫くすると、美しい糸を吐いて我が身を包み、繭を作るのじゃよ。

繭の中で蛹化(ようか)したカイコは、やがて成虫と姿を変えますな。これを完全変態といいますぞ。完全変態と。何っ。お前さんは、ただの変態じゃあないか。

カイコの蛹の身体の中にはマルキピーシ管という器官がありましてな、これを取り出して見ると真っ黄色をしておるんじゃ。

解剖用のメスで、これを切って中を見ると、真っ黄色な物質が詰まっておって、これを顕微鏡で覗いて見ると、美しい黄色い結晶が見えるんじゃよ。

これが何という物質の結晶か想像がつくかな。解からんじゃろう。

実は、これはビタミンB2でしてな、ビタミンB2が純粋に濃縮して結晶しておるんじゃよ。そこで皆さんに考えて欲しいんだがね、一体全体このビタミンB2は何処から来たものかっていうことをさ。

何っ。解からないって。お前さんも盆が暗いねえ。さっきから一々煩いことを言っておるが、俺の話を全然聞いちゃあおらんじゃないか。

蚕は卵から孵ったばかりの毛蚕のときから、桑の葉っぱしか食っちゃあおらんだろうに。してみればビタミンB2の源泉は、桑の葉っぱにあるとしか考えられんじゃろう。

そこでだ、今度は桑のことについて少しばかり研究してみようという訳だ。いらぬ心配をするな。万事は俺に任せておけ。

先ず、クワの植物分類学上の位置についてだ。位置について、ヨーイドンではないぞ。おいっ。若いのっ。他人の話を聞きながら欠伸(あくび)をするなっ。失礼じゃあないか。ええっ。

さてっと。ここにおいでの皆さんは、界・門・綱・目・科・属・種という分類の方法をご存知かな。かい・もん・こう・もく・か・ぞく・しゅ。おや、ご存知ない。

なっ。何っ。臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前だとう。そりゃあ忍術の呪文じゃないか。お前さん一体どこでその「九字印契・くじいんけい」を覚えなすったね。何っ。陰茎じゃない印契だ。護身の秘法として九字を切るだろう。あれだよ。驚いたなあ俺も。だが、残念ながら全く関係ないねえ。

例えばじゃ。あの動物園にいるライオンじゃ。ライオンを例にとってみるとこうなるな。動物界・脊椎動物門・哺乳綱・食肉目・ネコ科・ヒョウ属のライオンということになる。

それでは、問題のクワはどうかな。植物界・顕花植物門・被子植物亜門・双子葉植物綱・離弁花亜綱・イラクサ目・クワ科・クワ属、のクワということになるな。

ところがな、世の中そうそう簡単には済まされないんだよ。クワ属のクワにはな、所謂、マグワのほかにヤマグワ・ケグワ・シマグワ・ハチジョウグワ・ロソウなどの種類があるのでな。山桑・毛桑・島桑・八丈桑・魯桑じゃ。細かい分布のことなどは省略するが、これらの桑はすべて蚕の餌になると考えてよろしい。

桑はな、元々が中国原産の落葉の低木または高木でな、乳液があるんじゃよ。乳液だ。解かるな。日本でも蚕の飼料作物として、古くから栽培されておる。我が国へ養蚕技術が伝播したのも古いことなのでな。

中央アジアあたりでは、街路樹としても広く利用されていてな、その椹果(じんか)は重要な食料となっておるんじゃ。椹果じゃ。すなわち桑の実のことだな。

地中海沿岸地方からインドにかけては、食用にするための品種を栽培しているとも聞いたことがある。熟れた桑の実は多汁質で美味いもんだぞ。何っ。多汁質とはジューシーなということだ。

樹幹の材はやや堅いが、強度があって紋理や色沢が優美で且つ工作し易いので、床柱、床板、家具、指物の材料として賞用されておる。

春に採った根皮を桑白皮(ソウハクヒ)といい、消炎・利尿・鎮咳・去痰などの目的で漢方方剤(かんぽうほうざい)に配合される。

葉は桑葉(ソウヨウ)と呼んで、中国では駆風薬に使われる。果実は桑椹(ソウタイ)と呼び強壮薬にされる。樹皮は酒に浸して桑酒を作る。また、樹皮は製紙原料にもする。

駆風薬とはなんぞや。腸管内に集積するガスを排泄させる作用のある薬剤、と辞書にあるな。屁だ。いや、屁になる前の濃縮ガスかな。

どうだ。解かったかい。根っこ・樹幹・樹皮・葉っぱ・果実そして街路樹を兼ねた果樹としての利用価値、そして蚕の唯一の飼料植物。これじゃあ、この次に桑の樹を見たときには思わず伏し拝みたくなるだろうよ。

さてさてと、ぼちぼち行っても田は濁るか。御託を並べるのはこのくらいにしてそろそろ結論に入りますか。何っ。前置きがくどすぎるって。怒るな。お前さんのように、一々頭の鉢から湯気を立てていると、ますます髪の毛が抜け落ちるぞ。ああ、桑原くわばらだ。

桑の葉を利用したカワラケの治療法というのはだね、実はいたって簡単なことなんだ。だがね、だがしかし、この方法は、江戸の吉原で、大昔からずっと、遊郭が廃止になるまで続けられてきたというんだ。

先ず、桑の葉をよく揉んで軟らかくして、青い葉の液が出るようになったのを局部に当てる。これを根気よく続けていると発毛してくるということだ。

この毛生えの妙法が■■■■の本場というか、専門家とでもいうのか、江戸は吉原遊郭で、二百数十年ものあいだ連綿として施されてきたということは、余っ程のこと効力だあったという何よりの証(あかし)じゃあなかろうか。

俺の話はこれでお終いだ。どれ、帰って寝るとでもするか。

何っ。桑の葉の食い方だとう。おい、お兄さん、嬉しいことを聞いてくれるねえ。桑の葉の食し方ね。色々とありますよ。色々とね。

先ず、一番美味しく、しかも手早く料理できるのは、桑の若葉を空揚げにする方法ですな。若葉ですよ。若葉。カラッと揚げて貰いたいもんだね。カラッとね。風流ですな。実に風流な桑の葉の食し方だ。

次にか。お次の献立は天麩羅だ。何だって。空揚げも天麩羅も大して変わらんじゃあないかって。馬鹿をいうな。天麩羅は天麩羅専門店もある立派な料理の方式だ。

薄く衣をつけて、上等の油で揚げた桑の葉の天麩羅。細く刻んだ桑の葉と桜海老の掻揚げ。乙(おつ)ですな。実に乙な桑の葉の食し方だ。話しているだけで涎が垂れそうだ。

何っ。桑の葉の天麩羅はおかしい言い方だって。実はそうなんだよ。天麩羅の本義は魚貝の身に衣をつけて揚げた物のことで、野菜の天麩羅というのは蕎麦粉の饂飩というのに等しいんだよ。しかし、最近では野菜の天麩羅という言い方をしてるんだよな。

硬い葉っぱは、ジューサーにかけて青汁にする。布巾で絞って滓を漉して、蜂蜜などを加え野菜ジュースの要領で飲用されては如何かな。ただし、味の方は保証のかぎりではありませんぞ。

最後に一つ、俺の口から申し添えておこう。この一文を読んで、どうしても桑の葉の天麩羅を食してみたくなった諸君は、遠慮をせずに、秣場さんに相談してみなさい。

秣場さんは『桑蒿倶楽部』の会員だから案外簡単にお世話してくださると思いますよ。では、御免なさいよ。

完。



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我輩は 糖尿病の 患者です

2012年12月07日 10時09分28秒 | 日記
若いころからの暴飲暴食がたたって糖尿病を発病したのが丁度40歳のころである。

最初に気づいたのは会社の健康診断で血液検査をしたときに、医師からガンの疑いがあるからと言われた。ガンときけば当然が~~~んとショックを受けた。

しかし、健康診断を受けた診療所の医師の説明はきわめて曖昧でとても納得できるものではなかった。そこで、県立病院で改めて検査を受けた。結果はガンなどではなくて糖尿病だということになった。ガンよりはいくらかマシだが糖尿病もけっして簡単に直る病気ではないことは、祖母が同じ病気であったから解っていた。

さて、糖尿病患者になってからは県立病院へ毎月通って診察をうけると同時に血糖降下剤の処方をうけて治療に専念した。当時の主治医は若い医師であったが医師としての指導は適切であったと思っている。そのころ私は土建業界で営業つまり談合を担当していたのであるが、同じ営業仲間の今田氏(仮名)と平野氏(仮名)も同じ医師の患者だった。

今田・平野両氏は普段からつるんで行動していることが多く、飲み友達でもあったから糖尿病で県立病院へ入院するのも一緒にした。病院の食事ではとても我慢ができないからといって、コンビニで買ったツマミと缶ビールを密かに持ち込んで病院の屋上で酒盛りをしたりしていた。案の定とでも言おうか、今田氏は程なく就寝中に突然死してしまった。これはまったくの余談だが、夫を失った今田氏の未亡人は亡夫の葬儀そのほかのことを元彼に相談したというから死んだ今田氏も浮かばれないだろう。

残った平野氏も数年後には後を追うように冥途へ旅立った。私は医師の言いつけを守って血糖値も比較的安定していたのであるが、あるとき定期健診に行くと、医師ではなくて中年の看護婦がえらい剣幕で”秋山さん。アンタ昨夜お酒を飲んだでしょう”という。いえいえお酒なんてとんでもない一滴たりとも飲んではいませんと答えると、”嘘をいってもだめ。こんなに血糖値が高いんだから”と、畳み掛けてきた。

そこで私が切れた。”何で、てめェに嘘を吐かなきゃならないんだ。看護婦風情が医者以上の能書き垂れるんじゃねェ。この婆ァ”と悪たれた。若い医者は突然豹変した私を見て驚いた様子だったが、”秋山さん。昨夜は何を食べましたか”と訊くから、昨夜は肉じゃがを食べましたと答えたら”なるほどね、それで解りました。ジャガイモは澱粉の多い食べ物ですから、それで血糖値が上がったんでしょう”ということだった。”それ見ろ。酒ばっかりが原因じゃないじゃァないか”と今度は私のほうから看護婦に言い返してやった。

そんな気まずい場面があってから、暫くの期間、病院へ通うのを中断してしまったのが結果的にいけなかったのである。

次に別の総合病院で診断を受けたときは糖尿病はかなり進行していてインスリン注射をしたほうがよいということになり、今度は私が入院する羽目になった。その病院でも隠れて買い食いをしている患者がいた。私は医者の言いつけを守って正しい食生活を続けた。

発病以来25年、インスリン注射をするようになってから15年ほど経つ。入院した当時の主治医が自宅から車で15分ほどのところへ開業してから11年目になる。開業当時からいた美人看護婦も昨年辞めて、変わらないのは主治医の先生だけである。

写真は私の朝飯である。米飯100グラムに京都鞍馬の名物”ちりめん山椒”、若布と麩の味噌汁、讃岐名産の蕪の漬物、ウインナーソーセージが3本・・・正確にカロリー計算をしているわけではないが、これで太らない程度の食餌になっていると思う。

糖尿病との闘いは私が棺桶に納まるまで続くのである。
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警備する 会社はアコム ソルマック

2012年12月04日 10時30分39秒 | 日記
会社の資材置き場には時価に換算すれば数千万円あるいは億単位の資材が保管してある。東北大震災以後は特にこうした足場資材の需要が多いらしく盗難にあった同業者の話などもしばしば耳にする。先日も同業者が自分の足場資材が我が社の置き場にないか覗きにきたりして不愉快な思いをしたばかりである。

我が社は静岡県公安委員会から「道具商」の許可をもらって真面目な商売をしているので中古資材の売買や物品の出し入れについては「古物台帳」に記録して厳正に管理している。

会社の事務所にはもともとセキュリティーが設置されていた。これはsaxaというメーカーの電話機についている赤外線センサーが熱を感知して通報するというシステムであるが、夏場などに誤報が頻発して信頼性に欠けたためカメラもつけて映像を記録することになった。ところが、このデジタルレコーダーには液晶モニターがついていないので映像をチェックするためにはいちいちパソコンへ接続しなければならず甚だ面倒である。しかもカメラの性能も劣るので広い資材置き場の警備には心もとないことこの上ない。

そこで新しい資材置き場へ移転したのを契機に専門の警備会社へ頼むことにした。警備会社には全国ネットの大きな会社からローカルな警備会社までいろいろとあるが、とりあえずはセ■ムさんとア■ソックさんの2社から警備の提案を受けることにした。

セ■ムさんは元の日本警備保障㈱で長嶋さんが「セ■ムしてますか~~ァ」とテレビでやっていた会社である。ア■ソックは総合警備保障㈱で女子レスリングの金メダリスト吉田・伊調両選手をコマーシャルに起用している会社である。

さて、当方の求める警備の内容は公道側の道路に駐車する自動車の映像記録、置き場入り口へ侵入してきた自動車の映像記録、置き場内への不法侵入者の検知、事務所内への不法侵入者の検知・・・以上の4項目である。

私が電話をしてすぐに対応してくれたのはセ■ムさんで、ア■ソックさんは一日遅れの対応となった。しかもセ■ムさんは課長代理の人が来てくれて当方の求めている内容をよく理解してくれた。一方のア■ソックさんは平の営業社員が来ていちいち上司の指示を仰ぐといった様子だった。何の権限もない人では話がちっとも前に進まないのである。

提案の内容は、カメラ2台、デジタルレコーダー1台、17インチ液晶モニター1台、赤外線センサー1台を設置するというもので、構成はまったく同じであったが、異常事態が起きたときの対応が大きく異なっていた。

つまり、セ■ムさんは、警報が入れば、警備員が現地に駆けつけて必要に応じて警察や会社の人間に連絡をくれるというのに対して、ア■ソックさんはサイレンを鳴らすなどして侵入者を威嚇するだけだというのである。夜中の2時、3時にサイレンが鳴って侵入者を威嚇できたとしても、近所迷惑になるだけで、後の始末はすべて当方ですることになる。これでは料金が幾らか安かったとしても従来のセキュリティーとなんら変わりなく、枕を高くしては寝られないのである。

そんな訳で今回の話は長嶋さんの勝ちと決定しました。今週の金曜日には設置工事が完了するようです。
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天井が 落ちたトンネル 通りけり

2012年12月03日 15時45分51秒 | 日記
今回天井が崩落した中央自動車道の笹子トンネルは私も何度か通ったことがある。
私は運よく無事に通過できたが、今回の事故で下敷きになった方々の悲運というのか不運というのか、気の毒過ぎて慰めの言葉もない。と、同時に私も土木技術者の端くれとして道路管理者の中日本高速道路の杜撰な管理体制にはあきれて物が言えない。

トンネルの開通は1977年というから出来てから既に35年も経っている。この間、天井部分の改修工事はほとんど行われていなかったという。

中日本高速道路は、今年9月の定期点検で、崩落したコンクリ-ト製天井板の上に人が入り、点検したが異常はみつからなかったとしているが、天井の吊り金具のボルトの「打音検査」などはしていなかったという。

天井板は長さ5メートル、奥行き1.2メートル、厚さ8センチで1枚あたり約1.2トンあるという。
5×1.2×0.08×2.4トン=1.152であるから概ね間違いなかろう。鉄筋コンクリートの比重は普通2.4で計算する。

天井板の上に人が入って何を点検したというのであろうか。私が思うには大方、何メートル置きかに設置されているハッチから首だけを出し、目視して異常なしと判断したのではないか。コンクリートといえど鋼材といえど35年間も経てば経年劣化が進むことは当然考慮せねばなるまい。
トンネルのクラウンの部分はコンクリートの打設も一番難しい部分であるから、どんなボルトで固定してあったのか分からないが、もっと細やかな神経を遣って点検するべきだったのではないだろうか。

結果論でものは言いたくないが、天井板をもっと軽い材質の物に交換したり、吊り金具の結合部分を点検あるいは金具の交換などをしていれば当然防げたはずの事故である。この点で道路管理者の責任は厳しく問われなければならないであろう。

(昨日の続き)
今朝のテレビニュースや新聞報道によると、天井板を吊るしていたアンカーはトンネルの巻き立てコンクリートの中へ15センチ程度入っていただけだったらしい。
詳しく見たわけではないので正確なことはわからないが、アンカーの鋼材が切れたとか、ボルトが抜けたとかいうものではなくて、コンクリートの接続部分ごと剥離して崩落したと見るのが理にかなっているようだ。
つまり、雪崩現象と同じで一箇所のアンカーが損傷したことにより、隣のアンカーへ負荷がかかり過ぎて抜け落ち、次々に連鎖して崩落したものと考えられる。
コンクリート構造物を半永久構造物とする誤った考え方に基づく維持管理の方法に根本的な問題があったことは明白なようである。
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