日々是好舌

青柳新太郎のブログです。
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駅のないリニアに何の益もなし

2013年09月19日 15時02分51秒 | 日記
 リニア中央新幹線の予定ルートが発表された。

 土木技術者の端くれである私は当時、宮崎県にあった実験線のリニアモーターカーに試乗した経験があり、リニア新幹線の工事にも大いに関心がある。

 さて、その予定コースであるが、品川駅地下からほぼ一直線に山梨県甲府市へ、そこからわざわざ南側へ向きを変えて静岡市葵区の南アルプス伝付峠から二軒小屋の北側を経て小河内岳の地下を通過して長野県へ抜けてゆくようだ。その後は長野県飯田市、岐阜県中津川市を経て名古屋駅地下へと達する。

 この間の駅は神奈川県相模原市緑区、山梨県甲府市、長野県飯田市、岐阜県中津川市の4駅が予定されている。

 私の地元、静岡県静岡市は大井川上流のユネスコエコパーク(生物圏保存地域)申請地域内でトンネル掘削に伴う斜坑の掘削や残土処分が行われる予定である。

 JR東海は、ユネスコエコパークの核心地域は深さ1000メートル以上のトンネルで通過するため、地上部の影響は少ないと説明しているが、私はこの説明には少しも納得していない。

 トンネルは地下深くを通るだけかも知れないが、トンネルから出る大量の残土は地上で処分されるのである。大井川上流部の狭い峡谷の中に大量の残土を処分するということになれば、それだけでも自然環境に負荷がかかるのは確実である。トンネルから地下水が抜けると山が乾くという問題もある。

 残土を運搬する仮設道路や、斜坑掘削に伴う工事用道路の延長も相当な距離になるだろう。急峻な山岳地帯での運搬路開設は山肌の崩壊などを招くことが確実視される。
工事に関わる人間や機械、車両などが環境に及ぼす影響は計り知れないのではないか。

 ライチョウ、クマタカ、オシドリ、ヤマセミなどの鳥類、カモシカ、ツキノワグマ、ホンドオコジョなどの哺乳類、渓流魚、高山蝶、固有種キタダケソウを含む高山植物など貴重な動植物は、それでなくても絶滅の危機に瀕しているのである。

 リニア新幹線の予定ルートをいまさら変えることは出来ないだろう。だとすれば、大井川上流域の貴重な自然環境を極力損なうことのないように細心の注意を払うことしか出来ない。

 静岡市には地下を通るトンネルの固定資産税が入るのかもしれないが、地元住民としては、駅のないリニア新幹線などは百害あって一利なしの心境である。
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東京で 足掛け五年 働いた

2013年09月05日 14時48分01秒 | 日記
 私は、東京オリンピックが開催された翌年の昭和40年3月から足掛け5年ほど東京で働いていた。
 東京で覚えてきたのは山手線の駅名くらいなものである。4代目柳亭痴楽師匠の名調子に乗せて唱えれば簡単に覚えられる。なお、西日暮里が抜けているのは、後からできた駅だからである。


「恋の山手線(こい の やまのてせん)」

上野を後に池袋、走る電車は内回り、私は近頃外回り、
彼女は奇麗なうぐいす芸者(鶯谷)、にっぽり(日暮里)笑ったあのえくぼ、
田畑(田端)を売っても命懸け、思うはあの娘(コ)の事ばかり。
我が胸の内、こまごめ(駒込)と、愛のすがも(巣鴨)へ伝えたい。
おおつか(大塚)なビックリ、度胸を定め、彼女に会いに行けぶくろ(池袋)、
行けば男がめじろ(目白)押し。
そんな女は駄目だよと、たかたの婆(高田馬場)や新大久保のおじさん達の意見でも、
しんじゅく(新宿)聞いてはいられません。
夜よぎ(代々木)なったら家を出て、腹じゅく(原宿)減ったと、渋や(渋谷)顔。
彼女に会えればエビス(恵比寿)顔。
親父が生きてて目黒い内(目黒)は私もいくらか豪胆だ(五反田)、
おお先(大崎)真っ暗恋の鳥。
彼女に贈るプレゼント、どんなしながわ(品川)良いのやら、
魂ちぃも(田町)宙に踊るよな、色よい返事をはま待つちょう(浜松町)、
そんな事ばかりが心ばし(新橋)で、誰に悩みを言うらくちょう(有楽町)、
思った私が素っ頓狂(東京)。
何だかんだ(神田)の行き違い、彼女はとうに飽きはばら(秋葉原)、
ホントにおかち(御徒町)な事ばかり。
やまて(山手線)は消えゆく恋でした。

柳亭痴楽「痴楽綴方狂室」 より

 
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現場では 煤け薬缶が 大事です

2013年09月02日 14時58分42秒 | 日記

我われ土方の鶴嘴・スコップが武門の槍・刀に相当するものであるとすれば、現場における薬缶は差しずんめ戦陣における水筒にあたるだろう。

 この薬缶という湯沸し道具が、実はラグビーの試合における薬缶の役割と同様で、土方の野外生活には必要欠くべからざる重器なのである。

 薬缶は銅鑵ともいい、昔は銅で造るのを専らとした。銅は熱の伝導率がよく、物が早く煮えることを昔の人達も熟知していた。そして、銅の成分が健康を害することも知っていたから、銅器の内側には、錫と鉛の合金である白目(しろめ)を塗って銅気を防ぐ工夫をした。

 今日、一般的に使われている薬缶は、ほとんどがアルマイト製である。このアルマイト製の薬缶を焚き火へ直に吊るして湯を沸かすため、煤けて真っ黒けになっているのが相場である。

 ところで、どこの現場にも必ず一人はいるのが、焚き火、湯沸しの名人である。この名人は、有り難いことに、他の土方仲間が知らない間に、ちゃんと火を焚いて、湯を沸かしておいてくれるのである。

 現場においては、お茶っ葉を薬缶の白湯へ直に放り込むのが日常的である。お茶っ葉を切らした時などは、茶畑の生葉をしごき採って煮ることもある。

 しかして、食事時これを喫するに各自の食器をもってするのだが、食事時以外は、薬缶の蓋をもって喫するのを常とする。

 薬缶の蓋には湯気を抜く穴が開いている。この穴を中指の先で塞いでから茶を注ぐ。薬缶が古くて蓋の抓みが取れていることがある。この場合は人指し指と中指を使って、二つの穴を同時に塞がなければならず、漏らさずに飲むためには多少の骨を必要とするのである。
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