日々是好舌

青柳新太郎のブログです。
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駒とめて袖打ち払ふ陰もなし

2018年02月28日 11時07分17秒 | 日記
  佐野のわたりの雪の夕暮れ、と、続く。新古今集・巻6・冬歌・671 藤原定家卿の歌である。

 「わたり」は渡し場・渡船場 またはあたり・近所 という意味で「渡」について真っ先に思い出すのがこの和歌である。次に思い出すのは、連れて逃げてよ.ついておいでよ。・・・の「矢切の渡し」です。

 静岡市葵区の旧・大河内村に「渡(ど)」という集落があります。先日、フェイスブックの「静岡ふるさと研究会」へ現在架け替え工事中の大河内橋について投稿いたしましたところ「渡(ど)」という地名は川の合流点であるという趣旨のコメントをいただきました。


 そこで先ずは「渡」という漢字の意味についてチェックしてみました。
 
[常用漢字] [音]ト(漢) [訓]わたる わたす
1 わたる。移動する。「渡欧・渡河・渡御(とぎょ)・渡航・渡世・渡来/過渡」
2 川の渡し場。「渡頭/津渡」
3 手から手へ物を移す。「譲渡」
[名のり]ただ・わたり
[難読]鳥渡(ちょっと)・・・・などと検索できました。

 川の合流点という例としては以下の説明が解りやすいと思います。
 
 中部地方の山岳地帯には「○○渡(ど)」という地名が集中している。
 
 岐阜県から木曽川を遡った長野県木曽郡木曽町には、「黒川渡」がある。木曽川に西から流れ込む黒川が合流する地点の地名だ。

 さらに上流の木祖(きそ)村で国道19号線から分かれた県道26号線を上高地方面に向かって美濃と信濃の国境であった境峠を越える。峠を下った長野県松本市奈川に「寄合渡」がある。集落の中心で野麦街道との三叉路を成しているが、街道が寄合うのではなく、奈川と境川の合流点を表している。

 もう少し下ると、旧奈川村の中心地の「黒川渡」に着く。黒川と奈川の合流点だ。そこからしばらく下るとやがてダムの堰堤に至る。奈川が梓川に合流する地点に、東京電力は「奈川渡ダム」を建設した。

 ここから国道158号線を上高地に向けていくつかトンネルをくぐると、旧安曇村の「前川渡」の鉄橋が見えてくる。乗鞍高原から流れ出る前川が、梓川に合流している。さらに上流に行くと「沢渡(さわんど)」があり、根木ノ沢が梓川に入る場所だ。沢渡は上高地への入山基地で、今はマイカー規制によりここでバスやタクシーに乗り換えることになる。さらに上高地方面に登って行くと中ノ湯温泉があるが、そこに「湯川渡」がある。大正池から流れ出た梓川が湯川と合流する場所だ。             

 所変わって、長野県白馬村にも「沢渡(さわど)」がある。姫川に流れ込む小さな沢の合流点だ。静岡県島田市川根町には、笹間川が大井川に合わさる地点に「笹間渡」という集落がある。大井川鐡道の笹間渡駅があるところだ。

 また、岐阜県恵那市串原には「川ヶ渡(かわかど)」があり、旧串原村の役場があった。そこはまさに「川の渡」で、明智川と矢作川が合流している。 

閑話休題。

 さて、このコメントに対する小生の応答です。

 旧・大河内村渡の少し上流には渡本という集落があってワサビ栽培の発祥地の有東木に属するが、ここは安倍川本川と支流の有東木沢川が合流する地点です。

但し、小生は、旧・大河内村渡(ど)は、川の渡し場であろうと応えました。

 静岡市葵区には旧・大河内村渡の他にも津渡野・昼居渡・尾沢渡などの地名があります。

 津渡野(つどの)は、県道梅ヶ島温泉昭和線の津渡野と対岸の郷島を結ぶ竜西橋が架かっているところで津渡野城跡もある交通の要衝です。「津渡」は、上記の用例にもある通り、舟着き場、渡し場を表す言葉です。

 昼居渡(ひるいど)は旧・川根街道の起点です。藁科川と黒俣川が合流するあたりに昼居渡の集落があります。その意味からいえば川の合流点説にも矛盾しないのだが、藁科川左岸から右岸へ渡るのに現在も清沢橋が架かっているこの場所が渡河の適地であったに違いない。昼居渡から尾根筋を登り、八伏→蛇塚→洗沢→富士城→馬込→智者山→天狗石山→長島→梅津と、大井川の峡谷にある村々と駿府とを繋ぐ道を昔から「川根街道」と呼んでいた。この道筋は、梅地や犬間という接阻峡の村々で盛んに採金が行われていた戦国期から江戸時代初期には、物資の輸送路として重要な役割を果たしていた。

 尾沢渡(おさわど)は国道362号線の上相俣と久能尾の間にある集落で尾沢渡城跡がある。尾沢渡城は、黒俣川とその支流の尾沢の間に突き出した、標高220mの山稜先端に築かれた山城であり交通の要衝を押さえている。
       
 渡にも津渡野にも昼居渡にも現在は橋があります。橋は近代に架けられたものですが橋の前後の道は元々からあったのだと思います。と、いうわけで静岡の渡は渡河地点だったいうのが小生の見解であります。

                           
                             

 
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三月はいきなり桃の節句です

2018年02月16日 14時48分29秒 | 日記
① 峡谷の夜風匂はせ炭を焼く
(よみ)きょうこくのよかぜにほはせすみをやく
(句意)
谷間に築いた窯で炭を焼くと木酢酸の匂いが谷間に充満する。季語は「炭焼き」で冬。


② 古地図の赤きシベリア雁帰る
(よみ)ふるちずのあかきシベリアかりかえる
(句意)
春になって雁は北国へ旅立つ。昔、数寄屋橋公園でみた大日本愛国党・赤尾敏総裁の街宣車の地図はサハリンやシベリアが赤くなっていた。季語は「雁帰る」で春。


③ 商談を潰し三月棒に振る
(よみ)しょうだんをつぶしさんがつぼうにふる
(句意)年度末に期待していた商談がまとまらず三月の営業活動は空回りに終わってしまった。
季語は「三月」で春。


④ 焼け跡に汚れ女雛の雨ざらし
(よみ)やけあとによごれめびなのあまざらし
(句意)
消防車の放水に濡れ、雨に濡れ、悲惨な目に遭った女雛が火事場の塵芥に雑じっていて哀れである。季語は「雛」で春。


⑤ 古雛の直衣の襟を正しけり
(よみ)ふるびなののうしのえりをただしけり
(句意)
雛段へ飾る前に古い有職雛の男雛の装束を整えてやった。
季語は「古雛」で春。
コメント (2)
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