日向夏(著)イラスト (しのとうこ ) ヒーロー文庫
無事に西都に到着した猫猫。環境は変化しても仕事は相変わらずで、薬屋として、また医官手伝いとして働いていた。どこに行っても呑気なやぶ医者に、何を考えているかわからない新人医官・天祐。猫猫は、壬氏の火傷が二人にばれないようにとひやひやしながら西都での日々を過ごしていた。 壬氏もまた皇弟として政務をこなす毎日だが、西都側は壬氏を名前だけの権力者として扱っていた。そんな中、猫猫は農村部を視察するために連れて来られた羅半兄とともに農村へ行くことに。視察するにあたって、かつての羅漢の部下・陸孫が動いていることに気付く。彼は、中央とは異なる農村部のやり方に疑問を持っていた。一方、かつて起こった大蝗害の生き残りの老人と出会うのだが-----。
序話
都では玉葉が帝の離宮で西都から来た姪で同じ赤毛・碧眼を持つ雅琴 を温かく迎え入れます。
一話 二度目の西都
西都に着いた猫猫は、植生や生薬への好奇心を抑え、まずは自分の仕事に集中しようと思います。偶然陸孫に遭遇した猫猫は、彼が農村からの帰りと推測し気になります。
二話 上司と元上司
その陸孫は、帰るなり上司の玉鶯に呼ばれ、元上司の羅漢と再会します。相変わらずの羅漢の無茶ぶりに対応する彼の記憶力って、顔の認知能力だけじゃないのね😲
三話 別邸と忘れられた男
猫猫、やぶ医者、天祐、李白は玉袁の別邸に到着し、礼拝堂のような離れに設けられた医務室に案内されます。間違って配達された甘藷を探しにきた羅半兄と遭遇した猫猫は、彼が羅半に騙され連れて来られたと推測します。相変わらずの羅半兄の突っ込みが楽しい。そして本名は遂に名乗らせてもらえなかった彼に同情を覚えます。😁
壬氏の手当ての際、猫猫は羅半兄の農村視察に同行する許可を得ます。
四・五話 馬閃青春記 前後編
月の君に命じられ、紅梅館(不老長寿を研究する道士の館)で家鴨の飼育の任務に就いた馬閃は、後宮から追放され、紅梅館で家鴨の世話をしている里樹元妃と再会し家鴨の孵化方法を教わることになります。現在の状況に満足し居場所を見つけた様子の里樹に戸惑いつつも、家鴨の飼育を通じて二人の間に新たな絆が生まれていきます。
姉の麻美の言葉に背中を押された馬閃は、西都への出発を前に共に西都へ行こうと里樹に口走ってしまいます。彼女は、今のままでは足手まといになると断り、待って欲しいと言います。馬閃は、任務から戻る時には、里樹が頼りにできるような男になると誓って再会を約束します。
六・七話 農村視察 前後編
猫猫たちから三日遅れて到着した馬閃の肩には家鴨の舒鳧がいます。孵化の際、最初に見たのが彼だったわけで刷り込みで親と認識しちゃったらしい😁
この鳥、なかなかに賢い様子を見せ、次第にアイドルになっていくの😍
二班に分かれて向かった猫猫・雀・馬閃ですが、途中で盗賊に襲われます。もちろん馬閃があっという間に倒しちゃうのですが、猫猫は盗賊を誘い出すために猫猫を囮に雀が仕組んだと推理します。これは月の君の考えではないこともね。
羅半兄が畑で土の状態を調べ、麦踏みがされていない状況に、村人たちが手を抜いていることを指摘します。唯一手入れされている畑の持ち主の念真の家を訪ねた一行は、彼の容姿と刀傷の多さに驚かされます。念真に自分が何者かを問われた猫猫は「生贄」と答えます。
八話 老人の昔話
念真の部族は遊牧民の中でも武闘派で略奪や人身売買をしていました。
五十年前、彼らの部族が草原の祭祀を任され手を出してはならない風読みの民を襲い蝗害が起きます。飢えに苦しんだ部族は崩壊し、戌の一族により農奴にされた念真たちは、風読みの民の祭事の真似事をさせられますが、それは不完全なものでした。やがて戌の一族が滅ぼされ農奴たちは解放されましたが、念真は村に残り祭事を行ってきたのでした。
九話 祀と祭
昔の祭事が実は農業の知恵(秋耕:土を掘り返して耕し、地中に埋まった害虫の卵の駆除)だったことが明らかになると、猫猫たちは、念真の助けを借りて祭事を村で再現し、村人たちにその重要性を再認識させます。
十話 結果報告
農村から帰った猫猫はやぶ医者によって少女趣味の装飾に変えられた自室に戸惑います。善かれと疑わないやぶを前に趣味じゃないとは言えないあたりが猫猫の優しさよね😊
壬氏の部屋に出向いて農村視察の報告と感想を共有した猫猫は、その帰りに謎の白い面「飛頭蛮」を目撃します。
十一・十二話 飛頭蛮 前後編
飛頭蛮は雅琴が都に立った約二か月前から現れており、報告は面(顔)と首の二種に大別されます。昨夜飛頭蛮が出た場所に出向いた猫猫は、鳥の糞に気付いてその正体が梟だと推測します。馬閃と雀の協力で捕獲に成功したその梟はメンフクロウでその外見が怪異の原因だとされます。人の手から鶏肉を食べるこの梟は飼育されていたと思われました。猫猫は都への献上品として用意されていた梟が逃げ出し、それを捕まえようとした不審者がいると考えます。
十三話 風読みの民
逃げた面梟を捕まえようと変装していた不審者は、庫魯木(クルム)という十歳位の女の子で、華央州人の特徴がありました。鳥を野生に返すつもりで育てていたけれど父親に売られてしまったと説明した庫魯木に、猫猫は風読みの民について尋ねます。庫魯木は曽祖父が風読みの民であったことや、滅ぼされた後も鳥を育て鳥を使った連絡手段を持っていて、鷹狩りもしていたことを話します。風読みの民が完全には滅びていないこと、その伝統や技術が今も継承されていると考えた猫猫は、さらに庫魯木の口から彼女の父親と玉鶯の母との関係についても情報を得、風読みの民に関する調査を大きく前進させることができました。
十四話 おさらいと可能性
壬氏の部屋での報告は紅茶とクッキー付き。(猫猫は辛党なので塩煎餅😁 )
花嫁狩りや奴隷狩りに遭って滅んだとされる風読みの民の一部が生き残っていて、戌の一族に保護され、鳥を使った伝達手段を諜報活動に利用されていた可能性が高いとの考えを述べた猫猫は、その技術が砂欧に伝わった可能性についても指摘します。戌の一族が女帝に滅ぼされた理由も、風読みの民の裏切りによるものだと推測するのね。
十五話 貧乏籤
農業実習から帰還したばかりでへとへとの羅半兄でしたが、壬氏の依頼で二か月以内に全ての戌西州の農村地区で秋耕や芋の栽培の指導をすることになります。もちろん蝗害対策の一環ですが、壬氏の頼みを断れるわけないよね~~。😓 使える者は最大限に利用する為政者としての壬氏の顔が覗えます。
猫猫は羅半兄のために栄養剤を用意し湿布も持たせようとサポートします。
なんだかんだいっても心配してあげてる猫猫です。
十六話 つかの間の平穏
農業実習に旅立った羅半兄からの伝書鳩を使った手紙で農地の状況が報告され羅半兄の苦労と、鳩を使った情報尾伝達の便利さを実感する壬氏です。
麦の収穫時期に麦角と蝗害の有無を確認するため、農村へやってきた猫猫と陸孫の前に、急報が届けられます。線と乱雑に塗りつぶされた羅半の手紙は以前巫女に渡された絵を思い起こさせ、それが蝗害を意味することに猫猫は気付きます。
十七・十八話 災禍 前後編
警告を真剣に受け止めない村人たちも、念真の真剣さと陸孫の麦を相場の倍で買い取るという提案で目の色が変わり、急いで収穫に取り掛かります。炊き出しの準備と殺虫剤を作る猫猫。収穫が進む中、飛蝗の大群がやってきます。収穫物を安全な場所に避難させ、隙間を塞いで侵入を防ぎ、火を使わず家の中にいるよう触れて回る陸孫。馬閃は飛蝗を網で捕まえて殺しますが、パニックに陥った村人も出、恐怖から家の中で火を焚いて火事になる家も。
恐慌状態の中、除草剤を作り続けるうちに猫猫さえも平静ではいられなくなります。飛蝗の襲撃が激しさを増す中、雹が降り始め、雹乞いをする猫猫の頭に雹が当たって気を失います。
いや~~この襲来の描写が凄くリアルで恐くなるほどです。😱
十九話 爪痕
気絶から一日経って目覚めた猫猫。村は収穫の7割を確保することができ、猫猫の強力な殺虫剤は村人たちに毒薬、毒のねえちゃんと呼ばれます。😉
西都に李白と帰還した猫猫。
陸孫の悲しい過去(賊に襲われ母と姉が殺された)も明かされます。
二十話 確認
西都に戻った猫猫は飛蝗の襲撃による混乱の跡を目の当たりにします。農民は生きるために駆除に躊躇いはないけれど、都会人はただただ恐怖なわけね。
壬氏は客の立場から直接手や口を出すことができませんが、持参した甘藷を玉鶯に贈り、彼はそれを炊き出しに供出することで民の人気を独占していました。淡々と自らの役目をこなす壬氏を複雑な思いで支える側近たちです。
終話
重鎮の妻たちを招いて茶会を開き、まだ後宮に入内していない雅琴を自分の姪として紹介した玉葉妃の目的は、穏やかで野心のない妻たちとの親交を深めることにあり、政治的な話題は敢えて避けられていました。
雅琴から戌西州の現状について聞かれると情報を提供することを約束した玉葉妃。茶会後、白羽から戌西州で蝗害が起きたことを知らされると、鳩を使って手紙を送ります。父親の期待に応えるため自らの役割を再確認する玉葉妃なのでした。
相変わらずじれったい壬氏と猫猫の関係。甘い場面は登場しません。これだけじらされてもじっと我慢の壬氏が何だか可哀相になってきたぞ😞