杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ジェネラル・ルージュの凱旋

2009年01月12日 | 
海堂 尊 :著 宝島社:発行

桜宮市にある東城大学医学部付属病院に、伝説の歌姫が大量吐血で緊急入院した頃、不定愁訴外来の万年講師・田口公平の元には、一枚の怪文書が届いていた。それは救命救急センター部長の速水晃一が特定業者と癒着しているという、匿名の内部告発文書だった。病院長・高階から依頼を受けた田口は事実の調査に乗り出すが、倫理問題審査会(エシックス・コミティ)委員長・沼田による嫌味な介入や、ドジな新人看護師・姫宮と厚生労働省の“火喰い鳥”白鳥の登場で、さらに複雑な事態に突入していく。
 将軍(ジェネラル・ルージュ)の異名をとる速水の悲願、桜宮市へのドクター・ヘリ導入を目前にして速水は病院を追われてしまうのか……。そして、さらなる大惨事が桜宮市と病院を直撃する。

『チーム・バチスタの栄光』、『ナイチンゲールの沈黙』に続く、田口&白鳥シリーズ第3弾。

『ナイチンゲール~』のヒロイン浜田小夜の同僚の如月翔子が今回のヒロイン。
前作と時を同じくして起きた内部告発文書に振り回されるグッチーと、これまた前作の登場人物をリンクさせながら物語は進んでいく。まるで二重螺旋のように絡まりあいつつ、合わせ鏡のように決して重ならないその筆致と構成は見事としか言いようがない。

前二作で気になっていた姫宮もやっと登場。第4弾では彼女が表舞台に出てくるのかなという伏線もしっかりある。

白鳥の登場は相変わらず後半部の山場に悠々と、という感じだが、インパクトはこれまでの二作よりやや弱い。というのも今作の主たる登場人物であるジェネラル・速水の切れ味鋭い存在感が強烈だから。白鳥ファンとしては次作に期待したいところ。

AIやドクターヘリの重要性もしっかりアピールしているが、救命の最前線にある現場の苛立ちや事務方との絶望的にも見える温度差の違いをエシックスという組織との対比で鮮やかに映し出してもいる。机上の空論と人の揚げ足とりばかりしている沼田を長としたこの委員会の議論を読んでいると短気な島津じゃなくてもキレちゃいそうです。でも現実にもこんな性格のヤツがた~くさんいるんだろうなぁ。

物語には関係ないことだけれど、文中にプロパーという記述を見つけて、ちょっと懐かしくなる。今はMRっていうんだっけ。名前が変わっても医師の彼らを見る目は一段低いのだということが図らずもここで露呈していて寂しいな。

表題にあるルージュは重要な意味を持つわけではないけれど、新旧のエピソードを繋ぐバトンのような役割を担っていました。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 豹頭王の苦悩 | トップ | K-20 怪人二十面相・伝 »
最新の画像もっと見る

」カテゴリの最新記事