杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

海を飛ぶ夢

2009年01月18日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2005年4月16日公開 スペイン=フランス

26年前の海の事故で、首から下が不随となったラモン・サンペドロ(ハビエル・バルデム)は、自ら命を絶つ決断をする。人権支援団体で働くジェネ(クララ・セグラ)は、ラモンの死を合法にするため、弁護士のフリア(ベレン・ルエダ)の協力を仰ぐ。法廷へ出る準備を進め、ラモンの話を聞くうちに、フリアは強く彼に惹かれていき、実は不治の病に冒されている彼女は自らも死を望み、ラモンの死を手伝う約束をするのだが・・。

一生の半分をベッドの上で過ごし、自ら死を望んだ実在の人物ラモン・サンペドロの手記をもとに描いた作品で、今もなお、スペインでは法律で認められていない「尊厳死」をめぐって生と死の意味を問いかけています。

彼の立場にならなければ、死を望む彼の気持ちは本当に理解することは出来ないと思っても、やはり尊厳死を強く望むラモンには抵抗感があります。

それは彼自身のためではなく、彼を看病し続けてきた家族への大いなる裏切りに思えてしまうからです。兄嫁のマヌエラやラモンの父を悲嘆に落としても死への渇望を叶えたかった彼へのかすかな怒りもあるかな。

弁護士のフリアは死への憧れという共通の願いでラモンと強く結びついていくけれど、結局「死」を現実として受け入れることを拒んでしまう。それこそが大多数の人の感性に近いのではと思うエピソードです。
逆にラモンを助けるローザが彼を一番理解し愛していたとも私には思えないけれど。

ラモンの願いに対して真っ向から批判した神父との対話に感じた彼の虚しさだけは共感できるかな。この時のマヌエラの言葉も胸を打ちました。

けれど、誰が正しいとか間違っているとかではなく、誰もが自分の「正しい」と信じることをしたのです。

生きることは権利ではなく自分にとっては義務だった、というのがラモンの主張。もし自分が寝たきりで生きる目的を失って長い間「生かされて」きたのなら・・・ラモンを責めることは出来ない。生きるということの意味を突きつけられる映画です。

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