杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

アラトリステ

2009年01月07日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2008年12月12日公開 スペイン 145分

17世紀のスペイン。13歳から己の腕だけを頼りに傭兵として生きてきた剣士アラトリステ(ヴィゴ・モーテンセン)は、フランドルの戦場で戦死した友との約束で彼の息子イニゴ(ウナクス・ウガルデ)を引き取りマドリードに戻って来た。そこに、「イギリスから来た異端者を殺せ」という奇妙な依頼が舞い込む。それは、イギリス皇太子チャールズを抹殺しようとする異端審問官、ボカネグラと国王秘書官アルケサスの謀略だった。

アルトゥーロ・ペレス=レベルテ原作の同名小説5作分を一つの物語としてまとめて映画化している。

とにかくヴィゴの演技が光る作品。
剣士としての腕前はLOTRのアラゴルンを彷彿とさせるが、王としての気品の剣はここにはなく、生身の傭兵の生きるか死ぬかの血なまぐさい非情の剣だ。敵の喉を掻っ切って顔色一つ変えない落ち着きと非情さに息を呑んで画面を見つめることになった。

戦友の大貴族グアダルメディーナ伯爵の忠告を無視してわざとおんぼろ靴で時の権力者であるオリバーレス伯爵に面会するアラトリステ。そのいでたちはお前の誇りゆえか?それとも傲慢さか?と問われて両方と答えるプライドに心の中で喝采を叫び、ただ一人の愛する女性への贈り物を手に彼女に告白する場面に胸を締め付けられもする。

戦場では皆が平等との信念を持ち、権力者に阿らず、剣に生きる誇りを持つ孤高の剣士アラトリステの不器用なまでに真っ直ぐな生き方は中世の騎士道や日本の武士道に通じるものがあり、骨太な男の物語ともなっている。

そして何よりヴィゴの佇まいが良い。背筋を伸ばしたスラリとした立ち姿、マリアとのベッドシーンの美しさ、入浴シーンでの鍛え上げられた上半身も目の保養。

女は男の添え物でしかなかったこの時代において、登場する二人のヒロインの内に秘めた情熱と、苦悩にも共感できる部分がある。

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